犬と猫の分岐点
犬と猫の共通祖先「ミアキス」
犬と猫は違う種類の動物ですが、もともとは「ミアキス」という同じ祖先を持ちます。ミアキスの骨盤は犬に似ており、猫のような収納可能な爪を持っていました。
森で生きるか平原で生きるか
ミアキスはもともと森に住み、木の上で生活していました。やがて繁栄して個体数が増えると、平原へ移動して食料を獲得しようとするものが出てきました。こうして、今までのように森で生きるミアキスと平原で生きるミアキスに分かれ、やがて森で生きるものが猫へ、平原で生きるものが犬へと繋がっていきました。
森で生きるための進化
森で生き続けるミアキスは、木陰に隠れ獲物を待ち伏せてハンティングしやすいように小型に進化していきました。そして、獲物に気付かれずに一瞬で仕留めるための瞬発力を獲得し、単独行動で生活をしました。これは現在の猫の生態と繋がるものですね。
平原で生きるための進化
一方、平原で生きるようになったミアキスは群れを成して、集団で狩りをするようになりました。平原には森のように身を隠すものが少ないため、集団で獲物を追いかける方が好都合だったのです。また、隠れる場所の少ない平原では集団でいた方が自分の身の危険も回避しやすくなります。そして、平原で生きるミアキスは遠くまで獲物を追いかけるための脚力と持久力を獲得していきました。群れを成したり走るのが好きな生態は現在の犬に繋がるものですね。
そもそも猫に「従う概念」はない
猫が単独行動をする理由
犬と猫がどのように分岐してきたかを知ると、その生態の違いがよく分かります。森の中で単独行動をしてきたミアキスを祖に持つ猫には、そもそも集団行動をしたり群れの中の主従関係などの概念がありません。これは、集団で生きるよりもひとりでヒッソリと生きていた方が「待ち伏せ型のハンティング」に好都合だったためです。
犬が集団行動をする理由
一方、平原で集団行動をしていたミアキスを祖に持つ犬は、生きていく上で群れの中での和を尊ぶことが重要でした。群れを外されてしまったら平原では生きていくのは大変ですからね。そのため、現在野生で生きる犬には群れのリーダーに従う習性が、ペットとして人間と生きる家庭犬には飼い主と良好な関係を築いて場の空気を読んだりする能力が色濃く残っているのです。この違いにより、犬と猫では適しているしつけの方法が違うのです。
「トイレのしつけ」だけは犬よりも簡単
飼い主の指示に従うという概念がない猫に「待て」や「伏せ」などのしつけは難しいものですが、唯一「トイレ」のしつけだけは犬よりも猫の方が簡単です。
砂=トイレの習性
森の中で生きてきたミアキスを祖に持つ猫は、単独行動でできるだけ身を隠して生きていました。獲物に自分の存在がバレてしまうと狩りに失敗しますし、外敵に見つかってしまうとひとりぼっちで戦うのはとても危険です。しかし、生きていく上で排泄が一番ニオイがバレてしまいやすいです。このような生態に由来して、猫は自分のうんちやおしっこに砂をかけてニオイを隠そうとする習性があるのです。
そのため、基本的に猫は砂があるところでしかトイレをしません。家の中で砂があるところは猫のトイレしかないので、必然的に猫は粗相をしにくいです。我が家には子猫の時に拾ってきた子がいますが、家に連れて来てすぐに猫のトイレに直行したくらいです。
犬のトイレトレーニングが難しいワケ
平原で生きてきたミアキスを祖に持つ犬は広範囲を集団で移動しながら生きていたため、平原のどこがトイレでもかまわなかったのです。そもそも犬には特定の場所で排泄をする習性はないのです。
そのため、なかなかトイレに成功できなかったり、覚えた後も嬉ションをしてしまったり、不満があって粗相をしてしまったりといった悩ましい問題が発生しやすいのです。中にはおしっこは成功するのに、うんちだけ外してしまうという子も多くいます。
「猫に対してのしつけ」とは?
猫が得意なこと
猫の脳の神経細胞の数は犬の倍ほどあるそうで、猫の学習能力は低くはありません。猫は音や匂いなどから環境を分析するスピードはとても速いです。
猫が得意なことは
- どうやって獲物を捕るかを考えること
- 空間を3Dで把握すること
- 迅速な判断
- 警戒心を持つこと
- 記憶力
などです。
猫にとっては「生存するための能力」が何よりも重要なのです。犬の場合は「チームワーク」が重要なことなので、コマンドに従ったり人間の表情や場の空気を察することに長けています。犬と猫の大きな違いはこのような長所の違いかと思います。
猫は論理的思考は苦手
しかし、猫は認知能力は低く物事のルールや仕組みなどを深く考えて理解することが不得意です。
たとえば、ある実験で「ロープを引っ張るとおいしいものが食べられる」という仕掛けを用意しました。猫はこの仕掛けを理解してロープを引っ張っておやつを食べることはできました。
その仕組みを理解した後、今度はロープの数を増やしてフェイクを作ります。最初のロープにだけおやつは繋がっています。ロープ1本だけの時は理解できましたが、フェイクを作ると仕組みが理解できずに、結局すべてのロープを引っ張ってしまったそうです。
このように、猫は物事の仕組みやルールを論理的に考えることが苦手です。一方、犬の場合はロープを増やしても仕組みを理解することができたそうです。
猫の問題行動
猫と暮らす上で飼い主さんを悩ませる問題として
- テーブルに上がる
- ソファーや壁で爪研ぎをする
- ドアを開けてしまう
などが多くあります。犬ならば「ダメ!」とお叱りを入れることでルールを覚えてもらえるのですが、他人に従うという概念のない猫にいくら「ダメ!」と言ってもポカンとするだけです。少なくとも「怒ってるのかな」とは察してくれるでしょうが、それが「もうしないようにしよう」には繋がりません。
猫には「天罰方式」のしつけを
猫は「ひとりぼっちで生き抜くための能力」に長けている動物なので、危険を察知する能力が高いです。少しでも「嫌な思い」「怖い思い」をすることを覚え避けようとします。このため、猫にしてほしくないことには「天罰方式」を利用しましょう。「天罰方式」とは「それをすると嫌なことが起こる」と猫に覚えてもらうことで行動をやめてもらう方法です。
霧吹きが効果的
我が家もいろいろな「天罰」を試しましたが、1番手軽で安全で効果があったのは「水を入れた霧吹きをシュッとする」という天罰です。猫は身体が濡れることを不快に感じるという理由と、霧吹きの「シュッ」という音がどうやら怖いようです。猫の「シャー!」という威嚇の声に似ているという説もあります。
飼い主さんがやったとバレないように!
天罰は「自業自得」で成り立つものなので、決して飼い主さんがイヤなことをしたとバレない様にしてください。飼い主さんがやったとバレてしまうと猫が不信感を持ち、信頼関係が崩れてしまう恐れがあります。
霧吹きは猫の顔にかけない
いくら中身が水であっても、猫の顔に直接吹きかけてはいけません。そもそも顔にかけようとすると飼い主さんがやったとバレてしまいますからね!霧吹きの天罰を試す時には足元やテーブルの上を狙ってシュッとしてみてください。
しつけは苦手でも芸をする猫がいるのはなぜ?
猫ちゃんの中にも「お手」ができたり「お願いポーズ」をバッチリ決めたりできる子もいます。これは「そうするとおやつがもらえる」「こうすると飼い主がかまってくれる」などと分かっているのだと思います。
犬に比べると芸を覚えてもらうのは大変ですが、たまたま「お手」をしたりなにかのポーズを取った時にだけおやつを与えてみると、芸=おやつのルールが理解しやすいかもしれません。
我が家の猫は教えてないにもかかわらず、自分に注目してほしいときには人間のように「ねぇねぇ」と肩を叩きます。子猫の時からよく手を使う子だったのですが、肩を2回叩けば振り向いてくれると覚えたのでしょう。猫に何か芸を覚えてもらいたい場合は、それをすると得なことがあると理解してもらう必要があるでしょう。
まとめ
今日のねこちゃんより:バロン / ♂ / 1歳 / メインクーン / 7kg
犬と猫はもともと「ミアキス」という同じ動物でしたが、住む環境が変わったことで犬と猫に分岐していきました。森に住み続けて単独行動をしてきたミアキスは猫へ、平原に移り住んで集団行動を始めたミアキスは犬へと繋がりました。
単独行動の猫には犬のように集団で協力して生きる概念が無いため、飼い主の指示に従うことが犬よりも難しい理由となっています。しかし、単独行動で生きてきた猫は警戒心が強いため「嫌な思い」「怖い思い」をすることをできるだけ避けようとします。
これにより、猫に対して「天罰方式」のしつけをしていくと、猫の問題行動を制限することはできます。猫には猫の習性に、犬には犬の習性に合ったしつけの方法を選んでいくことが重要です。