猫は一緒に眠る相手を選ぶ!?
寒い冬場は、人も猫も温もりを求めます。猫と一緒に眠ることは、お互いに温もりを感じられる幸せな瞬間です。しかし猫は気まぐれなので、必ずしも人が求めるタイミングで一緒に寝てくれるとは限りません。それどころか、選ばれた人だけが猫と一緒に眠れるのではないかと疑問に思ったことはないでしょうか?
実はその通りです。猫は一緒に眠る相手を選んでいます。人が求めるかどうかではなく、"お猫様"の厳しい審査によって選ばれた選抜メンバーのみが一緒に眠ることを許されるのです。
では、どのような基準でメンバーを選出しているのでしょうか?猫に選ばれやすい人には次のような特徴があります。
母猫のような人
本来、猫が誰かと一緒に眠るというシチュエーションは、子猫時代だけです。子猫の頃は、他のきょうだいとともに母猫の温もりに包まれながら眠ります。そして、生後6ヶ月を過ぎた頃には独立し、完全に単独の生活へと移行します。
単独で生活を送りはじめると、自ずと眠るときはひとりになります。つまり、そもそも猫は大人になると「一緒に眠る」という概念がありません。それでも人と暮らす中で、一緒に眠る習慣を持っている猫は意外と多いでしょう。それは、一緒に眠る相手が母猫のような要素を持っている場合があるのです。
ここでいう「母」は、猫が感じる母猫像に一致する存在です。母性本能の強さや性別は関係ありません。基本的には常に身の回りのお世話をしてくれる飼い主さんが多いでしょう。しかし、それも断言することはできません。事の真相は猫のみぞ知る世界なのです。
気の合う相手
同じ空間で過ごし、無防備な姿を晒すことができるのは心を許した相手、つまり気の合う相手ではないでしょうか?それは猫も同じです。気の合う相手と一緒に眠ることを選びます。
身を委ねて眠る相手は、必ずしも人間とは限りません。同居している他の動物と寄り添い合って眠ることもあります。それは猫の場合もあれば、自分よりもはるかに体が大きい犬の場合もあります。
種を超えた愛情を感じる光景はとても微笑ましい光景です。人間と眠る場合も「寝るときはこの人がいい」と感じる何かがあるのでしょう。
安心できる人
一説によると、猫はよく寝る子という意味で「寝子(ねこ)」が語源と言われています。成猫では1日14時間程度、子猫では20時間も眠ります。しかし、これは我々がイメージする睡眠とは少々異なります。
猫の眠りはとても浅く、一度の眠りで熟眠している時間は僅か6~7分程度です。1日のトータルでも3時間ほどしかぐっすり眠れません。これは天敵から身を守るという、野生の本能によるものです。
つまり、猫は人間よりも多くの時間を睡眠に費やしていながらも、うたた寝を繰り返しているだけなのです。猫が求める睡眠は、より安心できる環境で休息を取るということなのです。
一緒に眠る相手も、思わず野生を忘れられてしまうほど安心できる人が良いパートナーなのです。安心できる人と眠ると、不思議と眠る姿勢までシンクロしたり無防備な姿勢で寝てくれることがあります。
寝相が良い人
たとえ母猫のように安心できる相手でも、極端に寝相が悪ければ選抜メンバーには選ばれません。寝相が良く、比較的穏やかに眠る人のほうが眠りを妨害されるリスクが少ないのです。
寝相に関しては睡眠中の姿勢であるが故に、善し悪しを自覚することは難しいかもしれません。そして無理に正すものでもないのでしょう。しかし、稀に猫によって寝相が良くなる場合もあります。それは、とても甘えん坊で寝相がどうであれ一緒に寝たいと思ってくれる猫がそばにいるケースです。
猫に選ばれやすい人の中には、忍耐力がある人も含まれているでしょう。あまり無理をすると腰を痛めることがありますが、寝相が改善することで、翌朝の寝癖直しに費やす時間が大幅に減少するメリットがあります。
守ってあげたい相手
猫が誰かと一緒に眠りたいと感じる理由は、自身が子猫気分を味わう立場とは限りません。逆に母猫のような気分で、相手を守りたいと思っているケースもあります。たとえば、ご家庭に赤ちゃんや幼いお子様がいらっしゃる場合はその子どもを守りたいと思うことがあります。猫は母性本能が強い動物なので、飼い主さんのお子様は「守るべき対象」なのです。
気をつけなければならないことはあるものの、見守ることが可能であれば、愛猫の優しい気持ちを尊重してあげましょう。ただし、新生児期は直接接触することを控えましょう。
猫が母猫気分になるのは、相手が幼子だけに留まりません。大人でも、我が子のように守りたいと思うことがあります。一緒に眠るときに、顔や手などを舐めてくれる場合はそのような感覚である可能性があります。
これは決して相手を見下しているのではありません。猫はその日の気分によって、自分自身の位置づけを変化させる傾向があります。母猫モードでお世話をしてくれているのであれば、感謝の気持ちを伝えましょう。
そのときの気分に合う相手
先ほど説明したように、猫はその時々によってモードが切り替わります。飼い主さんが一人暮らしの場合は、気分によって対応を変えてくるでしょう。
一方、一人暮らしではない場合、選抜メンバーの中からその日の気分似合った相手をパートナーとします。猫の中で子猫モードはこの人、母猫モードのときはまた違う人というようにルールがあります。
また、モード切り替えではなく、単に気にかかる相手を選ぶことがあります。落ち込んでいる日は、不思議と一緒に寝てくれるというケースです。これは、通常とは明らかに異なる様子の変化に反応し、猫自身も不安に思う場合が多いでしょう。猫は人に関心を持っており、日頃から動向を見守っているのです。
ちなみにここでいう選抜メンバーとは、あくまでも一緒に寝たい相手のことです。選ばれなくても落ち込む必要はありません。眠りのメンバーではない人には、全く異なる分野で頼りにしてくれています。
愛猫が誰とも一緒に寝ない!!人間不信なの?
猫と暮らした経験がないと、猫が人と一緒に眠ること自体が驚愕の事実でしょう。逆に、猫と暮らす飼い主さんは一緒に寝ることが普通のことのように感じるかもしれません。そのような認識を持つ中で、愛猫が常にひとりで眠り、ヘソ天と呼ばれる仰向けの寝相も披露してくれないとなると不安になるでしょう。
「もしかして、家族に不信感を抱いているのだろうか」はたまた「安心できる環境ではないのだろうか」とあれこれ思いを巡らせるでしょう。保護猫の場合、まだ迎えて間もない頃はそうかもしれません。特に虐待された経験を持つ猫は、一緒に眠れるようになるまでに時間がかかることもあります。
では、全く異なるケースではどうなのでしょうか?ここからは、猫が誰とも寝たがらない理由と、猫の寝相についてご紹介いたします。
精神的に自立した猫はひとりで眠る
幼い頃に母猫やきょうだい猫と多くの時間をともに過した猫は、精神的に自立した成猫に成長します。よって、猫本来の生活スタイルである単独行動に近い生活を好みます。自立心の強い猫は、ひとりで寝ることを好むだけではなく、前足ふみふみも見られない傾向にあります。
一緒に寝たいと思う飼い主さんにとっては、残念に思うかもしれません。でもプラスに捉えるとすれば、愛猫は心ゆくまで母猫やきょうだい猫と一緒に過ごすことができたということなのです。これは猫にとっては大きな幸せです。
過去に飼い主さんと寝て嫌な思いをした
一緒に眠っていると何かしらのトラブルが発生することがあります。中でも、就寝中に飼い主さんの手や足が当たってしまった経験が苦い思い出になることがあります。
たとえ、それが故意ではなかったとしても、愛猫は飼い主さんと一緒に眠ることがデメリットとして学習されてしまうことがあるのです。
このケースは、時間が解決してくれる場合があります。嫌な思いをした直後は、ひとりで眠ることを選択するでしょう。しかし、再び一緒に寝たいと思う日がくるかもしれません。無理強いをせずに待つことが大切です。
寒い日はヘソ天をしない
ヘソ天は最も無防備な寝相になります。よって、信頼度を表すものとして有名な寝姿になります。愛猫がヘソ天を披露してくれることは、飼い主さんにとって大きな喜びでしょう。
しかし、猫がヘソ天をする理由は他にもあります。それは、室内が暖かいことです。有名な童謡の結末に「猫はこたつで丸くなる」というフレーズが登場します。これは、猫が寒さを苦手とする特徴を表現しています。ただし、寝相については少々誤解があるようです。
実際には、ぽかぽかと暖かい環境では伸びた姿勢若しくはヘソ天になります。つまり、飼い主さんのことを強く信頼していても、室温が低いときはヘソ天をしないのです。
完全室内飼育によって安全に暮らす猫の場合は、室温と寝相の因果関係が強くなります。そして、室温は一緒に寝たいと思うかどうかにも影響を与えます。
季節によるもの
室温と同様に、季節にも関連性があります。猫は寒い冬場は「猫団子」を結成し、身を寄せ合って暖を取る習性を持っています。厳しい野生の猫も、生きる手段としてこれを実行することがあります。
人と暮らす猫も同様に、冬場は人に寄り添って眠ることで暖を取ります。逆に、暑い夏場は全く一緒に寝ないという猫もいます。この場合は、冬場が待ち遠しくなるでしょう。
猫が寝る位置で信頼関係が分かる!?
"お猫様"に選ばれたメンバーはそれだけでも光栄ですが、猫が「どの位置で寝るか」によって意味合いが変わってきます。心から甘えたいと思ってくれる猫はどのような位置で眠るのでしょうか?ここからは、猫が寝る位置と信頼関係についてご紹介いたします。
顔のそばで眠る:信頼度99%以上
顔というポジションは、猫にとって重要な意味を持ちます。猫同士が挨拶をするときは、まず鼻と鼻を付けます。これは相手に敵意があると、攻撃される恐れがあるため勇気がいる行為なのです。
そしてお互いに強い信頼関係が築かれると、毛繕いをし合う中になります。このときもやはり、顔周辺の自分では毛繕いができない部分を重点的に行います。
顔のそばで眠る好意も、信頼関係が築けていなければできない行動です。また、甘えん坊な性格の猫も顔周辺を選びます。
お腹の上:信頼度50%
布団の中であれば、お腹の上でも信頼度が増します。ここでいうパターンは布団の上です。顔から付かず離れずの距離に当たる腹部は、その場をいつでも離れられる環境です。とはいえ飼い主さんと密着した位置関係を保っていることから、50%程度の位置づけになります。
ちなみにこのポジションは、信頼関係以外にも意味があります。それは、猫の自立度です。ある程度自立した猫は、自分のペースで飼い主さんのそばにいることを選択します。よって、いつでも移動できる位置で眠ることで自身の生活パターンに合わせているのです。
ある意味猫らしい性格の猫は、このポジションを好む傾向があります。信頼度は半々としながらも、その理由は愛猫にしか分かりません。中には飼い主さんのことは信頼していても、利便性を優先している場合があります。
足元:信頼度10~30%
足元で眠る猫は、足に密着しているかどうかで異なります。だからパーセンテージにも差が生じるのです。
ある程度密着している場合は、人に触れていたいという気持ちを持ちながらも、まだお腹の上に乗る勇気がない段階です。
逆にほとんど触れない位置にいる場合は、縄張りのみを共有している形になります。若しくは、睡眠スペースとして機能してはいるものの朝方にはすぐに狩り(室内飼育であれば運動会)を行いたいと考えています。要は多忙なのです。
布団の中と外の差
猫が眠るポジションにおいて、もうひとつ気になるのは布団の中と外の差でしょう。これも、やはり信頼関係によるものなのでしょうか?
両者における差は、室温や一緒に寝る人の体温などになります。思わず布団に潜り込みたくなるというシチュエーションは寒さを感じているときです。暑い日に布団に潜り込めば、寝苦しさを感じることは猫も理解しています。
そして体温が低い人と眠る場合は、布団の内部の温度が上がり過ぎないため、快適に眠ることができます。その逆では、暑さを感じるため効率の良い睡眠が取れなくなります。
このように布団の中と外、どちらで眠るかは、信頼関係よりも布団内部の温度がどのように変化するかがポイントになります。
猫と一緒に眠る注意点
猫と一緒に眠る場合は、次のようなことに気をつけてください。
- 基本的には猫のニーズに合わせる
- 長毛種の場合は被毛の手入れをしておく
- 子どもと一緒に寝るときは、極力見守る
- 無理をせずに適度に寝返りを打つ
- 無理やり布団の中に入れない
一緒に寝るかどうかは猫次第です。寝る場所も含めて基本的には猫の希望に合わせましょう。そして、無理やり布団の中に入れることは控えてください。抵抗する際に引っかかれる恐れがあります。また、無理強いをすることで信頼関係にヒビが入る可能性も否めません。
長毛種の猫の場合
長毛種の猫が顔付近で眠る場合、被毛が抜けて顔に刺さり痒くなることがあります。一緒に眠る習慣があるのであれば、日頃から被毛の手入れをしておきましょう。毎日のブラッシングは、長毛種の猫の健康維持にも役立ちます。
子供と一緒の場合
猫種を問わずお子様と一緒に寝る場合は、念の為飼い主さんが見守るようにしましょう。夜間は心配であればケージに入れたり、寝室に入れないなどの工夫をしましょう。
猫のニーズに合わせながらも、無理は禁物です。適度に姿勢を変え、体を痛めないように気をつけてください。毎日一緒に眠るうちに、お互い良いポジションをキープできるようになるので、意識するのは最初のうちだけかもしれません。
まとめ
今日のねこちゃんより:ルイとチャー / ♂ / 4歳 / ノルウェージャンフォレストキャット / 7.5kg
猫はマイペースというだけあって、一緒に眠る人の選定基準もユニークなものでした。子猫気分を味わいたいと感じる猫は、母猫と早くに引き離されてしまったケースもあります。この場合は、たとえ成猫になっていても母のように接し、たくさんの愛で包み込んであげましょう。
日々、一生懸命お世話をしていても一緒に寝てくれない飼い主さんは虚しさを感じるかもしれません。猫が人と一緒に眠らない理由から考えると、性格的な要因が強いかもしれません。
一緒に寝ないことが、不信感に直結することは稀でしょう。そのほとんどが虐待により傷ついた経験を持つ猫です。逆にいえば、一緒に眠らなくても飼い主さんへの愛情が薄いわけではありません。
飼い主さんの愛情は伝わっているでしょう。そして、愛猫も睡眠以外の場面で愛を伝えているのでしょう。どのような眠り方でも、愛猫の個性を理解してください。