猫の性格はどのように形成されるの?
「甘えん坊」というのは性格のひとつです。そもそも、猫の性格はどのように形成されるのでしょうか。猫の性格をつくる要素は大きくわけて「先天的要因」と「後天的要因」の二つです。それぞれの要因について詳しく説明いたします。
先天的要因
先天的とは「生まれながらにして持っていること」です。つまり、生まれつきその猫に備わった、性格を形成する基礎となる部分です。この基礎には父親が大きく関わっています。
猫の大元の性格というのは父親の性格が遺伝したものなのです。とくに「社交性」に関わる要素が受け継がれます。父親が社交的であれば、その子猫の基礎となる性格は社交的になります。その逆も然りです。では社交的でない父親を持つ子猫は、将来社交的になれないのでしょうか。
それがそうとは限りません。それには、猫が成長する過程で形成されていくもうひとつの要因が関わってくるからです。
後天的要因
人間も人格形成には核となる遺伝的な要因と、人生経験を積み重ねていく過程で築かれていく環境的な要因が個人を形成しています。それは猫も同様で、父親の遺伝を礎に成長する過程で起こる様々な経験が、子猫の性格を形成します。
猫の場合は、生後2週~3ヶ月までの間におおよその性格が決まります。この期間は「社会化期」と呼ばれ、猫にとっては性格形成のみならず、生きる術をみにつける大切な時期になります。この時期に形成される後天的要因には次のようなものの関与が大きな鍵となります。
- 母猫とのふれあい
- きょうだい猫との過ごし方
- 経験値
母猫は子猫が立派に独り立ちできるように、深い愛を持って生きる知恵やスキルを教えます。猫は基本的に父親は関与せず、母が子育てをするため、当然母親との関わりが後天的要因として大きな影響を与えます。
母猫と過ごす時間が長かった子猫は安心感が得られ、物怖じしない猫へと成長する傾向があります。逆に早くに母猫から引き離されてしまうと情緒が安定せず、警戒心や攻撃性が高まってしまう傾向にあるのです。そして、ともに過ごすきょうだい猫の存在も重要です。子猫はきょうだいとじゃれ合う中で、力加減を学びます。
きょうだいと過ごす時間があまり持てなかった猫は、甘噛みの加減が分からぬまま人間と接触することになります。また、様々な経験から学ぶ経験値も成長過程では大切なものになります。母猫やきょうだいと過しながら、幼少期のうちに他の動物や人間との関わる機会があることで、他の存在を自然に受け入れることができるようになります。
ちなみに子猫の頃から人間の飼い主さんと過ごすと、飼い主さんを母猫のような存在と認識するようになります。
猫が甘えん坊に育つには?
猫が積極的に飼い主さんに甘えるようになるためには、飼い主さんの関わり方がポイントとなります。先天的要因は変えることができませんが、後天的要因である経験は飼い主さんと過ごす中で築かれていく部分です。甘えん坊な猫に育てるための接し方を紹介いたします。
1.基本的なお世話をしっかりとこなす
安心して暮らせる環境を整え、食事の世話をし、トイレ掃除をする。猫にとって重要なこれらのお世話を一生懸命することで、飼い主さんのことを安心感が得られる母猫のような存在と、認識するようになります。この日々の積み重ねがやがて、猫のほうから積極的に甘えたいと思ってくれるようになるのです。
2.猫の構ってサインを見逃さない
猫はクールな印象がありますが、案外甘えん坊な一面も持ち合わせています。そして、人間に対してそのサインを密かに送っているのです。このサインに気づくことも大切な要素です。愛猫から次のような行動が見られたらGOサインです。
- すり寄ってくる
- お腹を見せてゴロンと転がる
- しっぽをピーンと立てる
- おもちゃを咥えて持ってくるなど
これらの行動は、人間との触れ合いを求めているときに見られるものです。そして、これらに対して人間も反応を返してあげることが重要です。しっぽをピーンと立てながらすり寄ってきたら撫でる、急所であるはずの腹部を見せて転がってくれたら喜ぶ、おもちゃを持ってきたら遊んであげる。このような反応を見せることで、猫はまたこの行動を継続するようになります。
3.猫の気持ちを尊重する
甘えん坊な猫に育てるためには、人間目線ではなく猫目線で考えて接していくことも必要です。つまり猫の気持ちを尊重することです。猫がひとりで黙々と遊んでいるときは、時々「上手だね」「偉いね」などと声かけをし、少し離れたところから見守りましょう。
逆に猫が一緒に遊びたいと要求してきたら応えるようにしましょう。猫が飼主さんに甘えたいと思ってもらうためには、ただ構えば良いというわけではないのです。上手に猫の気持ちを理解しながら、付かず離れずの距離感を保つことも意外と大事なことなのです。
4.猫に話しかける
猫が「ニャー」と鳴くのは人間とのコミュニケーションをとるためといわれています。猫同士のコミュニケーションは、喧嘩による鳴き合いなどを除いて基本的にはボディランゲージで行われます。猫は人間が話す全ての言葉を理解しているわけではないものの、声によるコミュニケーション方法を用いる生き物だと理解しています。だから要求があれば鳴くということを実行しているのです。
そして飼い主さんが積極的に話しかけることで、日常的に用いられる言語は理解できるようになります。特に褒め言葉は猫にとっても嬉しいものになります。褒めてくれる、声をかけてくれるということが飼い猫にとっては安心感を与えるのです。そして、安心して飼主さんに甘えることができるようになります。
5.避妊・去勢手術をする
繁殖を望まない場合、避妊・去勢手術を受けることにより、性格も甘えっ子な子猫らしさが残るとされています。もちろん、甘えん坊にしたいからという理由のみで、手術することを決めてしまうのは軽率です。手術というからには当然、メリットとデメリットが存在します。この両方をよく理解したうえで検討しましょう。また持病がある猫の場合も、獣医さんとよく話し合うようにしてください。
飼い主さんの身勝手が及ぼす危険性
甘えん坊な猫に育てたいからといって、闇雲に甘やかす行為は猫にとって危険が及ぶ可能性があります。それは次のようなケースです。
甘噛みを許す
甘噛みも一種の甘え行動です。飼い主さに対しても噛みつくものの、それほど痛みを感じない甘噛みをしてくることがあります。まだ永久歯に生え変わる前の子猫の場合は、それほど痛くありません。だからつい許してしまうことがあるかと思います。
でも永久歯になると、たとえ本気で噛みつかなくても痛みを伴います。場合によっては怪我をすることも十分にありえることです。子猫のうちから噛みついたら「痛い」とはっきり言葉で言い、きょうだい猫とのじゃれ合いのように、力加減を教えるようにしましょう。
おやつで気を引く
幼いうちからあまりおやつで気を引くことはおすすめできません。とくに猫が鳴きながら要求してきたときにおやつを与えることは、「鳴けばおやつが貰える」と学習してしまいます。それが後に偏食や肥満などの生活リズムの乱れにつながり、結果的には猫を病へと導いてしまうことになりかねません。おやつを取り入ることの全てが悪いわけではないので、タイミングに気をつけるようにしてください。
全ての要求を受け入れてしまう
これは先ほどのおやつとも共通している部分です。要求されるがままに食事を与えたり、遊んでほしいという訴えに全て応えるのはよくありません。ある程度は我慢をさせることも大切です。
メリハリをつけ、一日の中で猫と遊ぶ時間を必ず設ける代わりに、ひとりで過ごさせる時間も必ずつくるようにしましょう。これが「猫の分離不安」という症状を予防することに繋がります。猫と飼い主さんの間に、信頼関係がしっかりと形成されていれば、全ての要求に応えなくても大丈夫です。
メス猫は甘えてくれないの?
よく、オス猫は甘えん坊でメス猫はあまり甘えないという説があります。メス猫は飼い主さんに対して甘えてくれないのでしょうか。そもそもなぜこの説は存在するのでしょうか。猫の性別による違いについて少し紹介します。
メス猫はたくましく育つ
メス猫はやがて母となり、子どもを育てあげなければなりません。そのためにたくましく育つのです。家庭の中で子育てをする場合は、余程のことがなければ命に危険が及ぶことはありません。
しかし、外で子供を育てる母猫には様々な試練がついて回ります。だから、甘えている余裕などないのです。一方オス猫は基本的には子育てに参加しないので、本能のままに生きています。だから自然と飼い主さんにも甘えてくるのです。
メス猫も甘えん坊になる可能性はある
子猫の頃から飼い主さんと生活し、飼い主さんを頼って生きている猫の場合は、メス猫であっても甘えん坊に育つ可能性は十分にありえます。最近の猫事情では、飼い主さんへの依存度が増してきています。
これは単身で猫を飼う人が増え、飼い主さんが猫を心の拠り所にしているからです。そして、猫も安全な環境の中で飼い主さんとの密な関わりを深めることで、自然と飼い主さんを信頼できる相手として甘えてくれるようになることがあります。よって、必ずしもオス猫にこだわらなくても良いのです。
まとめ
今日のねこちゃんより:王子郎 / ♂ / ミヌエット / 4kg
猫は成長過程において、様々な要因によって性格が形成されていきます。そして、その中には飼い主さんとの関わりも欠かすことのできない大切な要素になります。猫の気持ちを尊重し、甘えん坊でありながらも健やかに育つように見守るようにしましょう。
性別・猫種・育った環境などに関係なく、全ての猫が必ず甘えん坊に育つとは限りません。もしも愛猫が思うように甘えてくれるようならなくても、それもこの子の個性と受け入れてあげてください。甘えん坊な猫も、そうではない猫も、飼い主さんがかけがえのない大切な存在であることには変わりありません。