「酸味」「苦み」「塩味」について
動物の五感の一つである味覚。人間は甘味、酸味、塩味、苦味、うま味の5つの味を感じるとされていますが、猫は甘味を感じていないそうです。
猫が酸味を感じる理由
猫の味覚で感じやすいのは酸味です。食べ物が腐敗した際に生じる物質には酸味を感じさせるものが多くあります。そのような物を食べてしまわないように酸味に対する味覚が発達したと考えられます。
猫も腐った肉を食べないようにするために、酸味を感じる必要があったのでしょう。
猫が苦みを感じる理由
苦みも猫が感じやすい味です。体に有害な物質には苦みを持つものが多くあります。そのような物を食べてしまうのを防ぐために苦みに対する味覚が必要になったと考えられます。
猫には苦みを感じる受容体にかかわる遺伝子が12種類ある、という論文も発表されています。
猫は塩味には鈍感
猫は、味をある程度は感じるけれども、人に比べるととても鈍感なようです。
猫の味覚で甘味は感じない
猫の主食は肉だったから!
猫は甘いものを舐めたがったり、欲しがったりすることがよくあります。うちの猫は甘党だという話もよく聞きますが、実は猫の味覚では甘味を感じません。動物に必要な味覚は、その動物が食べてはいけない物を避けるためと食べるべきものを見つけるために発達してきたと考えられます。
甘味のもとの多くは炭水化物、自然界の食べ物で言うとつまり植物です。猫が食べない植物に対する味覚である甘味は猫では進化しなかったのでしょう。甘味を受容する遺伝子に変異があり、甘味を感じる受容体が存在していないということです。それなのになぜ甘いのを欲しがるのでしょう?
猫は完全肉食なので、肉に含まれるアミノ酸を感知しているようです。つまり、うま味です。人間が感じるうま味にも成分が複数あり、その一つにアミノ酸であるグルタミン酸があります。
猫がどのアミノ酸をうま味として感じているかは人間と違っていて、アラニンやイソロイシンなどをうま味として感知している可能性が考えられています。
猫が食べ物を判断する要素
猫も食に関して味覚だけでなく色々な要素で判断しています。主な判断基準は、香りと温度です。猫がプイと顔を背けるときは、食べ物の香りや温度、そして味(特に酸味と苦味)のどれかに要因があるのでしょう。
香りで美味しいものかどうか判断している!
猫は甘味を感じることができないのに、なぜ甘い物をおねだりしているようにみえるかというと、その甘い物の香りが猫の好きな香りなのかもしれません。
実際、犬の嗅覚の影にかくれてあまり語られませんが、猫の嗅覚もなかなかのものなのです。また、猫や犬、馬などの動物が持つヤコブソン器官(鋤鼻器)も関係しているかもしれません。
上記のように猫は甘味を感じないと考えられていますが、甘い物を好む猫も確かにいます。甘いものが好きな理由の一つとして、甘いものは脂肪を多く含む場合が多く猫はその脂肪をおいしいと感じている可能性も考えられます。
猫は体温程度の食べ物を好む
猫は本来、冷たい食べものや逆に動物の体温以上に熱いものは好みません。人間は冷やしたものや加熱したものを食べますが、そんなことをする動物は人間だけです。狩りでしとめた動物を食べていた猫は、動物の体温程度の食べ物を好みます。
猫の味覚は、通常の状態での舌の温度である約30℃で最も敏感になるそうです。実際にごはんをあげる時には、冷蔵庫から出したてではなく、人が指で触ってほんのり温かさを感じる程度に温めてあげると良いでしょう。その方が、香りもたちます。
猫の舌のザラザラは味を感じない
猫の舌のザラザラしているものは、糸状乳頭と呼ばれるものですが、糸状乳頭には味を感知する細胞を持つ味蕾は存在しないそうです。味蕾が存在するのは、茸状乳頭や有郭乳頭という別の種類の乳頭です。糸状乳頭は毛づくろいや骨から肉をそぐために役立っています。
猫の味覚に関するまとめ
- 苦み、酸味を強く感じる
- 塩味も感じるが鈍感
- 香りと温度が大事
- 甘みはわからない
猫の味覚についてご紹介しました。猫の味覚は美味しいものかどうかを判断するよりも、食べ物が腐っていないかどうか、食べてもいいものかどうかを判断するものなのですね。苦みを強く感じるのでお薬を飲ませる時大変な理由がよくわかりましたね!猫の「美味しい!」の判断は香りと温度にもよります。猫の食が細い時などは是非食事を温めて香りを強くしてあげると「猫まっしぐら」になるかもしれません!
猫の味覚はグルメだとも鈍感だとも言われますが、それは人間から見ての味覚に対する評価であって、猫のもともとの食生活に合わせて進化したものといえますね。
紹介されている論文は、
Lei W, Ravoninjohary A, Li X, et al. Functional Analyses of Bitter Taste Receptors in Domestic Cats (Felis catus). PLoS One. 2015;10(10):e0139670. Published 2015 Oct 21.
になります。
「完全肉食動物は植物を食べないから甘味を感知する必要がなくなったのなら、有毒な植物を見分けるための苦味の感知も発達していないかもしれない」という仮定のもとに行われた研究です。結果、完全肉食動物である猫で、機能していると考えられる苦味受容体に関する遺伝子が12も見つかり、その仮定を証明することは出来なかったということです。
他の完全肉食動物や雑食動物、草食動物でもそれらの遺伝子について調べた結果、同様の遺伝子をもっと多く持つ動物も数個しか持たない動物もいて、動物の食性と苦味受容体に関する遺伝子の数についての関係性は見られませんでした。