猫にマグネシウムは不要?
猫にとってはマグネシウムはあまり良くないイメージを持たれますが、非常に大事な栄養素の一つでもあります。
- 筋肉や神経の機能を調節する
- 骨の代謝を促す
- 体温・血圧の調節
- 神経伝達
- 興奮の抑制
- インスリンの調整
マグネシウムはカルシウムやリンなど必須ミネラル成分に含まれています。そもそもミネラルとは体をつくる必要な成分でもあり、筋肉や神経の機能を調節したり、栄養素を分解・代謝する際に関わるなど、体の臓器や組織をスムーズに機能させてくれるため生きる上で必要な栄養です。
マグネシウムの約60%程が骨に存在しており、カルシウムの沈着を防ぎ骨の代謝をバランスよく維持させてくれます。また補酵素として約300種類以上ある酵素の働きをサポートしたり、体温・血圧の調節、神経伝達や興奮の抑制、血糖値を下げるインスリンの分泌をコントロールするなど様々な働きを持っています。
猫がマグネシウム不足で陥る病気
- 心不全や不整脈など
- 高血圧
- 筋肉のケイレン
- 子猫の発育不全
マグネシウムが不足してしまうと不整脈が起こりやすくなり、それに伴い心不全などの心疾患のリスクが高くなります。マグネシウムには血管の収縮を抑制し血圧をコントロールする働きをもっていますが、マグネシウム量が不足すると高血圧を引き起こし更に心疾患のリスクを高めてしまいます。高血圧になると心臓の他に腎臓や脳、眼などに障害をおこします。網膜剥離を引き起こし失明したり、脳の障害により斜頸や意識障害、てんかんなどを生じることがあります。
マグネシウムはカルシウムとリンと一緒に骨をつくる上で必要なミネラル成分なため、マグネシウムが不足してしまうと、カルシウムが骨にうまく取り込めなくなってしまうため骨が脆くなります。
他にもマグネシウムには筋肉を弛緩する時に欠かせない栄養素ですが、不足すると筋肉の収縮に傾いてしまい、筋肉のケイレンを起こします。そのためマグネシウム不足は猫の健康に悪影響を及ぼしてしまい、特に子猫の成長時期は体をつくる上でマグネシウムは必要なため、発育不良を起こしてしまう恐れがあります。
猫に必要なマグネシウムの量
マグネシウム不足は猫の健康や成長を妨げてしまいますが、逆にマグネシウムを過剰摂取してしまうと尿に排出したマグネシウムが、リンとくっ付き、ストラバイト結石などの尿石症を引き起こしやすくなります。
キャットフードに入っているマグネシウム量が0.15%以上になるとストラバイト結石の発症率が高くなることが分かっています。
AAFCOが定めるマグネシウムの規定値
AAFCO(米国飼料検査官協会)で規定されているマグネシウムは子猫最小値は0.08%、成猫最小値は0.04%となっています。しかしAAFCOで定められている基準値は「最小(最低)の基準値」なため、この数値よりも下回ってしまうと栄養不足となってしまうため注意です。
そのため少なすぎても多過ぎても、猫の健康に様々な影響を及ぼしてしまうため、マグネシウムの含有量をおよそ0.08%〜0.09%が理想といわれています。
猫の結石を予防するには?
水分を多めにあたえる
飲水量の低下が尿を濃縮させてしまい、尿石症を引き起こしやすくなるといわれています。特に猫は元々水を好んで飲まない動物なので水を飲む量が少なくなりやすいため、ウェットフードに切り替えたり、ドライフードをお湯でふやかして水分を多めにあたえることです。
また水飲み場を複数箇所置いておき、いつでも水を飲めるようにしましょう。特に冬の時期は飲水量が下がる傾向があるため、水ではなく温かいお湯にしたりなど一工夫するとよいです。
体重管理
肥満体型の猫は尿石症の発症リスクが高くなります。特に年齢が若い猫がなりやすい病気であり、去勢・避妊手術後のほとんどが体重が増え、尿石症などの下部尿路疾患を引き起こしています。
そのため太らせないようにその猫の理想体重を設定し、それに合わせて1日の給与量を決めてあたえましょう。またオヤツの与えすぎもカロリーオーバーとなってしまうため、与えすぎないように注意が必要です。
マグネシウムなどミネラルバランスが良い食事にする
餌の中に含まれているマグネシウムの量が多いと、ストラバイト結石になりやすいといわれていますが、逆に極端に制限したりすると、今度は酸性のシュウ酸カルシウム結石になることがあります。
また同じミネラル成分であるカルシウムやリンのバランスが悪いと結石が出来やすくなってしまうため、カルシウム・リン・マグネシウムのバランス良い食生活が非常に大事です。一般的にカルシウム:リン:マグネシウム比率は「1:0.8:0.08」といわれています。
腎臓ケアのフードを選ぶ
猫は肉食動物なため豊富なタンパク質が必要ですが、肉類から得る動物性タンパク質を取るとシュウ酸や尿酸などの物質が増加します。過剰摂取してしまうと、このシュウ酸はカルシウムとくっ付きやすいため、シュウ酸カルシウム結石となり、尿phが酸性へと傾いてしまいます。タンパク質の過剰摂取しないように、気をつけることが大事になります。
またタンパク質1gあたりにリンが約15mg入っているといわれており、タンパク質が多くなる分、リンも多く摂取することになります。そのため低リン・低タンパク質である腎臓ケア用のフードが有効ですが、年齢が若かったり、まだ成長期段階の場合には体に影響を及ぼす恐れがあるため、獣医師との相談の上で給与しましょう。
腎臓サポート スペシャル
腎臓に負担かけないようにタンパク質の量を調節し、リンやカルシウム、マグネシウムの含有量も調整しバランスよく入っています。
まとめ
マグネシウムはカルシウムやリンなどのミネラル成分の一つであり、カルシウムの沈着を防ぎ骨の代謝をバランスよくさせてくれます。また約300種類以上ある酵素の働きを助けたり、体温・血圧の調節、神経伝達や興奮の抑制など、猫にとってもマグネシウムは必要な栄養素です。
猫に多い尿石症はマグネシウムの過剰摂取が原因と考えられているため、どうしても猫にとってはマグネシウムはマイナスのイメージしがちです。しかし逆にマグネシウムの量を制限し過ぎてしまうと心疾患の発症リスクを高めてしまったり、筋肉のケイレンなどを引き起こします。特に成長期である子猫は成長不良を起こしてしまうため大変危険です。
マグネシウムのみならず同じミネラル成分であるカルシウムやリンの量・バランスが悪いと尿石症になりやすいといわれています。そのため量やバランスに注意して猫に与えることが大事です。
同じフードを食べたとしても、尿phが傾きやすく安定しないなど効果にそれぞれ個体差があります。自己判断でフードを変えたり、止めてしまうと再発してしまいますので、定期的な尿検査をしつつ、その猫に合ったフードを選択することが大切です。またフード以外にも飲水量を多めにあたえたり、太らせないように体重管理することも大事です。