猫が風邪でくしゃみや鼻水を出している時の対処法

猫が風邪でくしゃみや鼻水を出している時の対処法

鼻水やクシャミなど猫風邪はとてもかかりやすい感染症であります。しかし鼻水やクシャミは人と同じで日常生活で生理的にみられる症状でもあるため見落としてしまうケースがあり状態が悪化してしまいます。もし猫風邪にかかった場合、鼻水やクシャミの他にみられる症状や治療法などをお話しします。

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記事の監修

山口大学農学部獣医学科卒業。山口県内の複数の動物病院勤務を経て、ふくふく動物病院開業。得意分野は皮膚病です。飼い主さまとペットの笑顔につながる診療を心がけています。

猫が風邪でくしゃみや鼻水を出す

くしゃみをしている猫

猫風邪をひきおこす原因とは?

猫風邪はクシャミや鼻水、結膜炎など呼吸器系や目におこる感染症です。猫風邪をひきおこす代表的な3つの病原体をあげてみました。

猫ウイルス性鼻気管炎

猫ヘルペスウイルスが原因で発症します。感染している猫との舐め合いによる接触や食器の共有、鼻水・クシャミにウイルスが含んでいるため飛び散ったことで感染するので同じ空間にいるだけでも猫風邪にかかります。母猫がウイルスを持っている場合、胎盤感染はしませんが出産後に母猫が猫風邪を発症した場合には母猫から新生児にウイルス感染が起こり子猫が猫風邪をひくことはあります。母猫の健康管理は重要といえるでしょう。

猫カリシウイルス感染症

猫風邪の病原体である猫カリシウイルスが原因で特に母猫から母乳を飲む時期が終わり生後約6週間〜約10週間頃の子猫に発症しやすいといわれています。猫の初乳に含まれる抗体で子猫は守られています。しかし、この抗体は永久にあるものではなく徐々になくなっていきます。子猫の体を守るだけの抗体がない状態でカリシウイルスが感染すると発病してしまいます。

クラミジア

クラミジアはウイルスや細菌でもない病原体です。このクラミジアの感染によっておこる病気です。感染ルートはウイルスや細菌感染と非常に似ており鼻水やクシャミなどによる飛沫感染や感染した猫との接触感染があります。また母猫が感染している場合は子猫もクラミジアに感染している可能性が高いです。

猫風邪の具体的な症状

猫風邪といっても原因である病原体が一つではないため、実際にどの病原体に感染しているのか検査や診断が非常に難しいです。そのため感染している病原体によって症状に違いが出てくることがありますが一般的に猫風邪にかかった際にみられる症状をいくつかあげてみました。

鼻水、クシャミ、鼻づまり

猫風邪にかかると、最初は透明な鼻水が猫の鼻からだらだらと出るようになり何回もクシャミをします。しかし細菌感染をおこしてしまうと鼻水の色が黄色〜黄緑色に変わりドロッとします。特に猫の鼻水の症状は慢性化しやすいため鼻づまりになりやすく鼻呼吸ができなくなってしまいます。猫は口で呼吸をせず鼻で呼吸をしています。鼻水や鼻詰まりで呼吸が苦しくなってしまったり、鼻づまりの影響で匂いが感じることができず食欲不振になりやすいです。

発熱

猫の平熱は人よりも少し高くて約38度ほどですが猫風邪にかかると39度後半や40度以上も熱があがることがあります。発熱になると元気がなくなったり食欲も落ちます。

口内炎

猫風邪の原因である猫カリシウイルスに感染した場合に口内炎を発症するケースが非常に多いです。口の中全体が炎症をおこし歯肉や粘膜が赤くただれてしまい、場合によっては潰瘍化することがあり激しい痛みを伴います。そのため口からヨダレが大量に出るようになったり口腔内の痛みでご飯が食べられなくなります。

結膜炎

細菌やウイルスが目に感染すると目の裏側を覆っている結膜が炎症をおこし赤く腫れ目ヤニが多くでます。また感染している病原体を排出させたり、目を守るために涙の量も多くなります。特に猫がクラミジアに感染した場合に結膜炎がよくみられ、1歳以下の子猫に多いといわれています。最初は片目だけ症状が出ることが多いがしだいに反対側の目も炎症をおこすことがあります。

猫が風邪でくしゃみや鼻水を出す時の治療法

風邪をひいている猫

猫に鼻水やクシャミなど炎症がある場合

  • 抗ウイルス剤を投与
  • 抗生物質も一緒に服用
  • インターフェロンも投与する場合がある
  • 注射
  • 点滴

猫の体の中に侵入したウイルスの増殖を抑える抗ウイルス剤を投与します。ウイルスを抑制することはできるがその際に猫の免疫力が低下するため細菌などにより二次感染をおこす可能性があることから細菌の増殖を抑える抗生物質も一緒に服用します。またクラミジアなどウイルス・細菌でもない病原体に感染している可能性もあるためインターフェロンも投与する場合があります。

鼻水やクシャミ、発熱などの症状で元気・食欲がない場合は注射で治療をおこなったり状態が悪く脱水症状がある場合は点滴もすることがあります。しかし1日で効果がなくなってしまうため通院する必要があります。もし食欲があったりご飯が食べてくれるようでしたら抗生物質や抗菌薬の薬を処方します。

猫に結膜炎など目の症状がある場合

  • 目薬
  • 点鼻薬

結膜炎で赤く腫れていたり目ヤニや涙の量が多いなど、目に症状がある場合は抗生剤やステロイドが含まれている目薬を使います。また鼻水やクシャミがひどく、鼻づまりの症状がある場合は点鼻薬も使う必要があります。
症状があまり良くならない場合はインターフェロンを含んだ目薬を使用して治療することがあります。

猫が慢性鼻炎・クシャミの場合

鼻水やクシャミが慢性化し症状が続くことがあります。常に鼻に炎症がおこっているためネブライザーの治療もすることがあります。ネブライザーとは人でいう喘息の治療でおこなわれている薬を吸入する治療を指し、薬剤を霧状に噴射することで鼻や口から吸引します。そのため半日病院で預かり密閉したゲージ内で数分間の吸引と休憩を繰り返しておこないます。治療の方法は病院によって異なりますので、数分で終了する病院もあります。かかりつけの病院に確認してください。

猫風邪にかからないためには?

風邪のワクチンと猫

そもそも猫風邪は治るの?

猫風邪の原因である猫ヘルペスウイルスと猫カリシウイルスに感染した場合は治療をしても体内に残ってしまうので完治は非常に難しいです。一旦鼻水やクシャミなどの症状が落ち着いても免疫力が低下したときやストレスなどにより再び症状がぶり返すことがあります。結膜炎など目に症状があった場合は目薬による点眼も継続します。

猫風邪にはどんな予防が必要?

ワクチン

猫風邪を発症している多くは免疫力がない子猫が多いです。そのため子猫のうちからワクチン接種を受け免疫力を得ることが大事です。しかしワクチンは約1年で免疫力が落ちてしまいますので成猫になっても毎年ワクチン接種による予防をおこなうことが必要です。ワクチンによって絶対に猫風邪にかからないとはいいきれませんが、万が一猫風邪にかかっても症状が軽くなります。

完全室内飼い

ワクチンで免疫力をあげたとしても外に出入りする生活スタイルだと猫風邪をはじめ様々なウイルスや細菌などの病原体に感染をおこすリスクがあります。そのため完全室内飼いにすることで猫風邪の原因である病原体に感染することがなくなるため外に出さないことです。

多頭飼いの場合は隔離する時間をつくる

多頭飼いで一匹が猫風邪にかかっていた場合、クシャミなどによる飛沫感染や食器の共有・グルーミングなどの接触により感染するので同居猫も猫風邪にかかる可能性があります。全ての猫にワクチン接種をおこなうことが必要ですが、猫風邪と診断された場合は同居猫との接触を控える必要もあるため隔離してあげることです。

まとめ

眠っている猫

猫風邪の原因である病原体によっては完治が困難なため鼻水やクシャミ、結膜炎などの症状は慢性化しやすいので必ず病院にて適切な治療をおこなうことが大切です。また一旦良くなっても再び症状が現れる可能性があるためストレスがない生活環境の見直しや年に1回のワクチン接種は必ずすることである程度は抑えることができます。

最近では保護団体が力を入れるようになり多くの保護猫の命が助かっていますが、保護猫の中には何かしらのウイルスなどの病原体の感染を受けている確率が高くなります。もし既に猫を飼っており今後新しく保護猫を迎え入れる際に先住猫が猫風邪になるケースがあります。そうならないために保護猫の状態を把握し、健康でワクチンにより免疫が得るまでお互い隔離することが大事です。

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