【獣医師監修】猫はゴマを食べても大丈夫?栄養素と効果、与える際の注意点まで徹底解説

【獣医師監修】猫はゴマを食べても大丈夫?栄養素と効果、与える際の注意点まで徹底解説

猫にゴマを与えても大丈夫?適量ならOKですが、与え方には注意が必要です。この記事では、ゴマの栄養と健康効果、アレルギーの危険性、高カロリーゆえの適量を解説。必ず「すりゴマ」で与える理由や、ゴマ油・ゴマ菓子の安全性も紹介します。

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記事の監修

麻布大学獣医学部獣医学科卒業後、神奈川県内の動物病院にて勤務。獣医師の電話相談窓口やペットショップの巡回を経て、横浜市に自身の動物病院を開院。開院後、ASC永田の皮膚科塾を修了。皮膚科や小児科、産科分野に興味があり、日々の診療で力を入れさせていただいています。

猫はゴマを食べても大丈夫?

舌で鼻先を舐めている猫

ゴマは猫に与えても問題ない食材です。中毒を引き起こすような成分は含まれておらず、適量であれば猫の健康維持に役立つ栄養素を摂取できます。

ただし、ゴマは脂質が非常に多く、カロリーが高い食材です。与え方や量には十分な配慮が必要であり、肥満気味の猫や消化器系の病気を抱える猫などは避けた方がよく、全ての猫に適しているわけではありません。

安全に与えるための知識をしっかり理解しておきましょう。

ゴマの栄養素と猫への健康効果

お皿とスプーンに盛られたゴマ

ゴマには、猫の健康をサポートする可能性のある栄養素が豊富に含まれています。ゴマの小さな粒には、体に良い脂質や抗酸化物質などが凝縮されています。

セサミン(ゴマリグナン)

セサミンは、ゴマに含まれる特有の抗酸化物質です。「抗酸化物質」とは、体内の細胞の酸化(サビつき)を防ぐ働きを持つ成分の総称です。

猫も人間と同様に年齢を重ねると酸化ストレスが増加するため、セサミンのような抗酸化物質が健康維持やアンチエイジングをサポートすると期待されています。

不飽和脂肪酸(脂質)

ゴマの成分の約半分は脂質で構成されています。この脂質の多くは「不飽和脂肪酸」であり、具体的にはリノール酸やオレイン酸が豊富です。

これらは体内で合成できない必須脂肪酸であり、適量であれば皮膚や被毛の健康を保つために役立ちます。特に、毛並みを美しく保ちたい長毛種の猫(例:ラグドールやメインクーン)には嬉しい効果と言えるでしょう。

ミネラル類(カルシウム・鉄分など)

ゴマには、骨や歯の健康に必要なカルシウム、血液の成分となる鉄分、その他マグネシウムや亜鉛といった「ミネラル」が含まれています。

これらは猫の体を正常に機能させるために不可欠な栄養素です。ただし、総合栄養食のキャットフードを主食にしていれば基本的に不足するものではないため、ゴマはあくまで栄養補助として捉えましょう。

猫にゴマを与える際の注意点

食器からフードを食べている猫

栄養価の高いゴマですが、与える際にはいくつかの重要な注意点があります。特にカロリーと消化の面には十分な配慮が必要です。

アレルギー

非常に稀ですが、ゴマに対してアレルギー反応を示す猫も存在します。食物アレルギーは、体を守る免疫システムが特定の食材を異物と誤認識して攻撃することで発生します。

初めてゴマを与える際は、ごく少量(耳かき1杯程度)から始め、食後に皮膚のかゆみ、下痢、嘔吐などの症状が出ないか、数日間は注意深く観察してください。

過剰摂取は避ける

ゴマは非常に高カロリー・高脂質な食材です。主成分が脂質であるため、ほんの少量でも多くのカロリーを摂取することになります。

日常的に与えすぎると、肥満の原因となります。肥満は関節炎や糖尿病など、さまざまな病気のリスクを高めます。

特に室内飼いが基本である日本の猫は運動不足になりがちなため、カロリー管理は徹底しましょう。

胃腸が弱っている猫には与えない

ゴマに含まれる豊富な脂質は、猫にとって消化の負担になりやすい成分です。

もともと胃腸がデリケートな猫や、シニア(高齢)の猫、あるいは下痢や嘔吐の症状が見られる体調不良の猫には、消化不良を引き起こす可能性があるため与えないでください。

猫にゴマを食べさせる際の与え方・調理法

すり鉢でゴマをすりつぶしている様子

猫にゴマを与える際は、安全に消化・吸収できるように必ず「下ごしらえ」が必要です。人間と同じ感覚で与えてはいけません。

必ずすりつぶす

ゴマの粒は硬い皮(外皮)で覆われています。この皮は猫の消化酵素では分解できません。

粒のまま与えてしまうと、栄養素が全く吸収されないまま便として排出されてしまいます。ゴマの栄養を摂取させるためには、必ず「すりゴマ」にするか、指先でしっかりひねりつぶしてから与えてください。

少量から与える

前述のアレルギー確認のためにも、最初はごく少量からスタートすることが鉄則です。

また、猫がゴマの風味を好むかどうかの確認も必要です。猫は警戒心が強い動物であるため、新しい食材の匂いを嗅いで、受け入れない場合もあります。

フードのトッピングとして使う

ゴマは主食ではなく、あくまで「おやつ」や「トッピング」として扱います。

いつものキャットフード(ドライフードまたはウェットフード)の上に、すりつぶしたゴマをふりかける方法が最も簡単です。フードの風味付けや、食欲が落ちている時の食欲増進にも役立つ場合があります。

猫にゴマを食べさせる際の適量

空の食器の前でフードを待っている猫

ゴマは高カロリーなため、与える量は厳密に管理する必要があります。

おやつやトッピングの量は、猫の1日の総摂取カロリーの10%以内に抑えるのが原則です。

体重4kgの成猫(去勢・避妊済み)の場合、1日の必要カロリーは約200〜240kcalです。その10%は20〜24kcalとなります。

いりゴマ小さじ1杯(約3g)で約18kcalですが、これはおやつとしては多すぎます。他の食材とのバランスも考慮し、1日に与えるゴマの量は「すりゴマ小さじ1/4杯(約0.7g、約4〜5kcal)」程度を上限の目安としてください。

ゴマの加工食品(ゴマ油、ゴマのお菓子)は猫に与えて大丈夫?

ゴマと小皿に入ったゴマ油

ゴマそのものではなく、人間用のゴマ加工食品を猫に与えることは基本的に推奨されません。同じゴマから作られていても、猫にとっては危険な成分が含まれている可能性が高いです。

ゴマ油

ゴマ油は、ゴマの脂質を濃縮したものです。猫にとって毒性はありませんが、脂質の塊であるため、少量でも過剰なカロリー摂取につながります。

また、大量の脂質は消化器系に大きな負担をかけ、下痢や急性膵炎(すいえん:消化酵素が膵臓自体を消化してしまう病気)を引き起こすリスクがあります。あえて猫に与える必要はありません。

ゴマのお菓子

人間用に作られたゴマのお菓子(ごまクッキー、ごま団子、ごませんべいなど)は、猫に与えてはいけません。

これらのお菓子には、猫にとって有害な「砂糖(高血糖のリスク)」「塩分(腎臓への負担)」「添加物」が大量に含まれています。ゴマ豆腐やゴマだれも同様に、塩分や糖分が含まれるため不適切です。

まとめ

食事を終えて食器の前から立ち去ろうとしている猫

ゴマは、猫にとって有毒な成分は含まないため、適量であれば与えても問題ありません。セサミンや不飽和脂肪酸などの栄養素が、健康維持をサポートする可能性もあります。

ただし、必ず「すりつぶして」消化しやすい状態にし、「小さじ1/4杯」程度のごく少量を守りましょう。脂質が非常に多いため、与えすぎは肥満や消化不良の原因となります。また、ゴマ油や人間用のお菓子は与えないでください。

正しい知識を持って、愛猫の食生活に安全に取り入れましょう。