自由に外に出れる猫は幸せだと思いますか?

自由に外に出れる猫は幸せだと思いますか?

気ままな猫は外に散歩やパトロールに出掛けお腹が空いたら帰ってくる。昔それが普通の光景でした。でも今は私達の生活環境も変わり、猫にとって外は、お散歩や日向ぼっこをする穏やかな場所ではなくなりつつあります。

自由を謳歌する猫は幸せな猫?

桜と猫

「猫は自由を愛し、人の思う通りの生活を強いてはいけない。だから外に出て行くのは仕方がない事。」確かに気ままで、思う通りにならないのが犬と違って猫の面白いところだと思います。

ただ昔と違って私達の生活環境も変化し、猫にとって外は生きやすい場所では無くなりつつあります。

外には多くの危険が潜んでいる

タイヤと子猫

交通事故

外に出る猫ちゃんにとって一番の心配は交通事故です。私が勤めていた夜間の救急でも、よくあるのが猫の交通事故による外傷でした。

特に夜は猫が飛び出しても気づきにくく軽い外傷だけなら良いのですが、猫の交通事故は命を奪います。交通事故によって悲しい最後を迎えた猫を何匹も見てきました。

特に警戒心の薄い若い猫の場合、車の往来が激しい道路で飛び出しドライバーを驚かせる事がよくあります。

その事が原因で大きな事故に繋がる場合もあり、猫だけでなく他の人にも危害を及ぼす可能性もあります。

猫同士による外傷や感染症

猫は縄張り意識の高い生き物です。自分の縄張りに入ってくる猫は徹底的に追いかけ、これからも入らせないよう喧嘩をし自分の力を見せつけます。

元々ノラ猫での生活をしていた子と、家でゆっくり過ごしていた子では力に差があります。猫の牙や爪はバイ菌が多く、小さな傷でも中で膿んでしまい酷い傷だと皮膚が壊死してしまったり、最悪な場合敗血症になり亡くなることもあります。

そして最も怖いのは、猫同士の喧嘩による猫エイズや白血病などの感染症です。

抵抗力や免疫力が弱り、軽傷の風邪や小さな怪我でも重症化し命を落としてしまいます。特に猫エイズは一度感染してしまうと完治する事はありません。

全ての人が猫好きとは限らない

膝の上で万歳する猫

人によっては猫のアレルギーがあったり、綺麗にした庭に入って庭を荒らしてしまう猫を嫌う人もいます。またここ数年猫を虐待する事件が多く胸が痛みます。

とても悲しい事ですが、私が勤めている動物病院でも農薬や睡眠薬を入れたご飯を食べた猫が運ばれてきたり、足を刃物で傷つけられた猫もやってきました。

どんな理由があるにせよ虐待は犯罪です。許されるべき行為ではありません。家で飼われている猫ちゃんは警戒心が薄く、そんな悲しい犯罪に巻き込まれる可能性があります。

犯人が捕まったとしても今の法律では罪は軽く、どんなに悲しんでも失った命は帰ってきません。

望まれない繁殖

不妊手術を行っていない猫の場合、外に出る事によって望まない妊娠をします。猫は交尾排卵と言って、犬とは違い妊娠しやすい生き物です。

1度に数匹も生み、その子がまた大きくなり子供を産む。それを繰り返す事で可哀想な猫は減ることがありません。以前病院で「うちの子はオスだから去勢すると外でケンカに負けるから去勢しない。」と言う飼い主さんがいました。

確かにそれも個人の考え方なのかもしれません。ただ、その子が外でメスの猫を見つけると本能から交尾を行いメスは子供を産みます。その子猫達は今後この厳しい環境を生きていかなければなりません。

猫は死ぬ姿をみせない

以前病院であった事なんですが、末期の腎不全で数日入院し状態が改善し退院しましたが、元々ノラ猫で生きてきた子だったので外に行くのは当たり前になっていました。

ただ今の状態で外に出る事は「死」を意味します。飼い主さんは出さないように気をつけていましたが、ちょっと油断した隙に出てしまい、寒い冬の朝、外に出たまま帰ってきませんでした。

入院していた間、投薬や食事の世話などの看護をしていたのでとても可愛くていい子なのを知っているだけに、寒い所で1人でひっそりと亡くなった事を想像すると胸が痛くなりました。

飼い主さんもとても後悔し「看取ってあげたかった」と泣いていました。「猫は人に死ぬところをみせない」と言いますが、それが猫のプライドだとしても悲しすぎる最後でした。

最後に

外でくつろぐ猫

外での自由を謳歌し、のびのびとしてる猫の姿はとても愛くるしい生き物だと見ていて思います。その自由を奪う事は、猫にとって幸せを奪う事なのかも知れません。

確かに元々外で生活していた子をいきなり家に閉じ込める事は難しかもしれませんが、不可能ではありません。

外に出さないという強い気持ちをもち、家は安全で快適な場所とわかれば外に出る事をしなくなります。外に出る事は悪い事だとは私は言えません。

ただ今私達の生活環境も一変し、車も住宅も増え人も密集して生活しています。昔と違い外は危険が増えました。その為動物病院に勤めていて、何度も悲しい事故を見てきました。

我が家の猫も元々ノラ猫で交通事故にあい保護しました。かなり危険な状態でしたが1ヶ月入院し今は我が家でのんびり暮らしています。

もう外に出たがる事はありません。猫と飼い主だけでなく周りの人も幸せに共存して暮らす社会になるよう、猫を飼うということについて少し考えてもらえればと思っています。

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