猫が「シャー」と鳴くのは威嚇するため
かわいい猫に「シャー」と鳴かれると驚いてしまいますが、これは相手を敵だと判断して威嚇していると考えられています。そして、この「シャー」という鳴き方は、実は、蛇を真似していると言われています。
猫の祖先は「リビアヤマネコ」という砂漠に住む野生の猫です。リビアヤマネコが暮らしていた環境は、天敵の蛇も生育していました。
蛇は敵に遭遇すると「シャー」という鳴き声を出して威嚇します。毒を持っている蛇は、体の大きな生き物からも恐れられていました。
猫の祖先はその様子を身近で見ていたので、敵に遭遇した際に、蛇を真似た動きをするようになったのではないかと考えられています。
猫は追い詰められた時、「シャー」という鳴き声と一緒に唾を吹きかけることもありますが、これも蛇が脅かされた時の行動を真似たものです。
さらに、猫が追い詰められた時にしっぽをクネクネさせますが、これも蛇の体の動きを真似していると言われています。
ペットとして安全な家の中で飼われている現代の猫たちも、蛇と共存していた野生時代の名残として、本能的に行動に現れるのです。
猫が威嚇をする原因
猫が威嚇する場合は、必ず何らかの理由や意味があります。猫が威嚇行動をするのは、人や物に対して恐怖や敵意を感じた時や、自分の縄張りに入られた時などがほとんどです。また、猫が威嚇する原因を飼い主さんが作っている場合もあります。
例えば、猫が嫌がっているのに無理に触ったり、食事を十分に与えていなかったりすると、威嚇されてしまうことがあります。猫に嫌われないためにも威嚇する原因を知って、猫にストレスを与えないように気をつけましょう。
身を守ろうとしている
ケガや病気などで痛みやストレスを抱えていると、自分の身を守るために「シャー」と鳴くことがあります。また、母猫の場合は、子どもを守るために神経質になっているので、威嚇行動を取ることもがります。
縄張りを守ろうとしている
猫は、獲物を捕ったり寝泊りしたりするテリトリー(縄張り)を大事にするので、そこに知らない猫や動物、人間が侵入してくると威嚇行動を起こします。多頭飼いで先住猫が、後からやって来た猫に対して威嚇する場合は、縄張り意識が強いからです。
相手を攻撃しようとしている
相手に対して攻撃しようとしている時も猫は威嚇します。猫のケンカは、にらみ合いながら威嚇をして、それでも勝負が付かないと取っ組み合いになります。
そのため、威嚇している猫にちょっかいをかけてしまうと、「攻撃された!」と思って猫も襲い掛かってくる可能性があります。
怖がっている
猫は、恐怖を感じている時も威嚇します。急に大きな音や人の大きな声でびっくりして恐怖を感じ威嚇している場合、猫はパニック状態に陥っている可能性があります。予想できない行動に出ることもあるので、猫に刺激を与えないように、落ち着くまで離れて待ちましょう。
病気などで体調が悪くいらだっている
体の調子が悪くても、言葉を話せない猫は飼い主さんに伝えることができません。飼い主さんから触ってほしくない部分を触られそうになった時に、「ここは触らないで!」という意味で威嚇することもあります。
体の同じ部分を頻繁に舐めて、そこを触ろうとすると怒る場合は、不調やケガを抱えているかもしれません。しばらく様子を見て体調が戻らないようなら、動物病院に連れて行きましょう。
怒っている
自分の縄張りを荒らされたり、相性の悪い猫と会ったりすると怒って威嚇します。
飼い主さんに対しても「シャー」と鳴くことがあり、「可愛がっているのに何で?」とショックを受けてしまうでしょう。しかし、飼い主さんの行動に「うざい!」と怒っているから威嚇しているのです。
例えば、食事や遊びを邪魔された時や、嫌がっているのに無理やりシャンプーをされた時などです。
猫が威嚇している時のポーズや特徴
猫が威嚇している時は、「シャー」と鳴くだけでなく、さまざまなポーズを見せることがあります。ポーズ1つ1つに違った意味があるので、ポーズの特徴とその時の猫の気持ちを紹介します。
「シャー」「カッカ」「フー」などと鳴く
猫は威嚇している時や怒っている時は、分かりやすい鳴き方をします。次のような鳴き声を出している時は、落ち着くまでそっとしておいてあげましょう。
「シャー」「フー」
口を大きく開けて「シャー」と唸るのは、威嚇や拒絶をしている時です。臨戦態勢に入っている時もこのように鳴きます。
「カッカ」
「カッカ」と鳴くのは、威嚇というよりも獲物を見つけて興奮している時です。動く生き物を見つけると、猫の狩猟本能によってこのように鳴くと言われています。また、獲物の声の真似をして惹きつけているという説もあります。
「マァーオ」
低い声で「マァーオ」と鳴くのは、一触即発の状態や相手を警戒している場合が多いです。甘えている時も「マァーオ」と鳴きますが、その場合は高めの声で鳴きます。
「パッ」「プッ」
鳴き声というより口から出る破裂音で、唾も一緒に飛びます。
背中を丸めて毛を逆立てる
背中を丸めて頭を低くし逆毛を立てている時は、自分の体を大きく見せることで、防衛の姿勢を取っています。また、相手にいつでも飛びかかれる状態でもあります。
大きく口を開けている
口を大きく開けてキバをむいている時は、見るからに怖い顔をしていますが、これも威嚇している状態です。
耳が反っている
耳が後ろに反っている時も威嚇している状態です。同居している猫や野良猫に対しては、「これ以上こっちに来るな!攻撃するぞ!」と怒りを表しています。また、近づいて来る人に対して拒否する時も、耳を反らします。
しっぽが下がっている
しっぽが下がり、先端をお腹に巻き込んでいる状態は、恐がっていたり怯えたりしている可能性があります。特に、内気な性格の猫が恐怖を感じた時は、尻尾をかくし耳を寝かせてうずくまり、できるだけ体を小さく見せようとします。
しっぽを丸め込むのは、身を守り攻撃を受けにくくするためでもあります。猫同士でケンカしている時は、「襲わないで!」と相手へ伝えるサインとも言われています。
横歩き・横飛びのようなステップをする
背中を丸めて毛を逆立てる威嚇のポーズをしながら、ピョンピョンと横に飛び跳ねることもあります。猫好きさんからは、この威嚇ポーズを「やんのかステップ」と呼んでいるようです。
独特の臭いを出す
猫が威嚇した時、独特の臭いを出すことがあります。これは、足の裏や肛門から分泌される警戒フェロモンによるものです。このフェロモンは、危険を感じた時や警戒している時に分泌されるものです。
目を見開く
猫は、穏やかな気持ちの時は、目を細めてトロンとしています。しかし、身の危険を感じたり気が張ったりしている時は、瞳孔が一瞬で大きくなります。
猫が威嚇した時の対処法
猫の威嚇は、野良猫に対して、飼い猫に対して原因や威嚇行動が違いますし、人間に対する威嚇行動も猫同士とは違ってきます。猫が威嚇する原因となっている対象を特定して、その原因を生活環境から取り除くことが大切です。
ここでは、猫が威嚇行動を起こしやすいシーンを取り上げて、その対処法を紹介します。
2匹目に先住猫が威嚇したら別な部屋で過ごさせる
先住猫がいる場合、2匹目の猫が家にやって来ると威嚇することが多いです。そのため、新入りの猫は、3~4日間は別の部屋で過ごさせましょう。先住猫は、姿が見えなくても気配やニオイで気づいています。
その期間に、お互いの存在を認知させるために、それぞれのニオイが付いたタオルや毛布、おもちゃなどを与えて嗅がせておくと良いです。
多頭飼いで病院帰りの猫が威嚇されたら別の部屋に移す
多頭飼いで今まで仲の良かった猫同士でも、1匹が病院後に帰ってくると「シャー」と威嚇することがあります。
これは、猫の体に病院のニオイが付いていることが原因です。仲良しの猫とは違うニオイで、しかも嫌いなニオイ…と警戒しているからです。
飼い主さんは戸惑ってしまいますが、病院のニオイが完全になくなればいつも通りに戻ります。病院から帰ったらニオイが消えるまで、最低でも24時間は別の部屋に隔離しましょう。
遊び中に威嚇されるときは少し離れる
おもちゃで遊んでいたりブラッシングしていたりする時に、「シャー」と威嚇された場合は、その行動をすぐにやめましょう。そして、猫と目を合わせないようにして、その場から少し離れてください。
猫を喜ばせようとやっていた行動も、猫にとっては不快に感じ怒らせてしまうこともあるので、猫が落ち着くまでそうっとしておくことが大切です。
猫の機嫌を取ったり怒ったりしない
猫が威嚇してどうすればいいか分からない時に、猫に対して機嫌を取る、ひるむ、怒るなどの行動を取ると、「威嚇が効いている!」と思い、威嚇や攻撃を繰り返してしまいます。
威嚇行動をやめさせるには、次の2つの方法でしつけをしましょう。
- 大きな音を立てて驚かす
猫が威嚇ポーズを見せたら、両手をパンと叩いたり、風船を割ったり、枕を叩いたりして大きな音を立てましょう。猫は驚いてひるみ、威嚇をやめます。
「威嚇したら驚かす」を繰り返してしつけることで、威嚇が通じないと学習させることができます。
- 目をそらして無視する
飼い主さんに対して威嚇する場合は、構ってほしくて行っている場合もあります。目をそらして無視し反応しないことで、威嚇行動をやめてくれることが多いです。
餌やり中に威嚇されるなら飼い主の行動を見直す
餌やりをしている時に、「かわいいな」と思ってずっと見つめていると、威嚇されることがあります。
猫は食事中やトイレ中は無防備になるので、外敵に襲われないように警戒心が強く神経質になります。無防備な状態で見つめられると「餌が取られてしまう!」と思い威嚇行動を起こすのです。
また、リラックスして食事をしている時に、しつこく撫でたり触られたりすると、不快に感じてしまいます。これを繰り返していると餌やり中の警戒心が強くなり、飼い主さんに「もうやらないで!」と威嚇することもあります。
小さな子どもや赤ちゃんを威嚇したら遠ざける
人間の幼い子どもや赤ちゃんは、急に大きな声を出したり予想外の行動をしたりするので、猫が恐怖を感じ威嚇してしまうことがあります。
子どもを威嚇しようとしたら、すぐに猫のいる場所から遠ざけましょう。また、威嚇していない時も、猫と子どもの様子を確認できる位置に飼い主さん(大人)がいるようにしましょう。
来客に威嚇しないためにできること
来客の際に威嚇するのは、「自分の縄張りが荒らされる!」と警戒し怒っているからです。
来客に威嚇しないためには、子猫の頃から多くの人に抱っこしてもらうことが大切です。子猫の時期から人間に対する恐怖心を取り除いておくことで、人見知りのない猫に成長します。
猫と犬を同居させる場合は最初が肝心
猫と犬を一緒に飼う場合は、初対面からいきなり一緒の部屋に入れると威嚇してしまうでしょう。犬・猫どちらが先に住んでいたとしても、突然自分の縄張りに侵入されたらストレスになります。
また、後から来た方も、新しい環境に慣れさせるために、別の部屋のケージに入れて過ごさせましょう。
別の部屋にいても、家の中に新しい存在がいることは分かっているので、少しずつその存在に慣れてきます。
数日経ったらケージ越しに対面させて、先住の犬・猫が自ら近づいて来るまで待ちます。最初は警戒しますが、そのうちに同じ空間にいても問題なくなるので、無理に仲良くさせようとせずに、先住の犬・猫のペースに合わせましょう。
まとめ
猫は安易に威嚇や攻撃することはありません。猫自身もできればケンカは避けたいと思っているはずです。それでも「シャー」と威嚇するということは、それなりの理由があるからです。
飼い主さんが猫を可愛がってやっている行動が、実は猫にとっては不快に感じていることもあります。猫に威嚇されたら何が原因なのかよく考えて、不快感を取り除くために対処してあげましょう。
また、威嚇をやめさせるためのしつけとして、驚かす方法を紹介しましたが、猫が何もしていない時に驚かすのは絶対にやめましょう。
恐怖心や警戒心から飼い主を嫌いになったり攻撃的になったりしてしまう可能性があります。猫の性格を把握して、その猫にあったやり方でしつけることも大切です。