猫の声帯はないという衝撃事実
声帯は声を出すためには欠かせない器官であり、弾力性のある左右一対の喉頭粘膜のヒダからなっています。声帯は声を出すときに閉じ、吐く空気によって振動させて発声しています。
私たち人間は言葉を発することができますが、動物は人間のように話すことができないのは、声帯のつくりに違いがあります。では猫の声帯はどうなのでしょうか。
久留米大学医学部耳鼻咽喉科学教室の豊住頼一氏の「哺乳動物喉頭の前額断解剖」の研究レポートによると、猫の場合は人間や犬のような声帯は存在しないという事実が判明しました。
そのことから猫には声帯と呼ばれる器官が持っていないということになります。
猫には声帯がない代わりに「特殊化粘膜」がある
豊住頼一氏の研究レポートから猫は私たち人間のような声帯をもっていないが、その代わりに「特殊化粘膜」が喉頭蓋喉頭側直下にあると書かれています。
この粘膜組織は同じように喉頭室がない牛や、喉頭室を持つ馬さえもみられない特殊なものであり、この特殊化粘膜により猫は「ニャー」と鳴くことができるのです。ちなみに喉頭室とは気管側の上の喉頭にある器官にあたります。
また猫の声帯は犬の声帯に近いことが分かっており、粘膜固有層浅部は過密で薄く、深部が疎らで厚い構造となっています。この構造の違いが喉頭のよる発声に影響を受けていると考えられています。
猫のゴロゴロ音は「仮声帯」から出ているらしい
猫の鳴き声で大きな特徴といえば、やはり喉から鳴るゴロゴロ音です。このゴロゴロ音は猫をはじめネコ科特有であり、チーターなど中型のネコ科動物もゴロゴロ音を鳴らすことができます。
ちなみに同じネコ科動物でもライオンやトラ、ヒョウ、ジャガーは吠えることしかできないといわれています。
猫が喉をゴロゴロと鳴らすメカニズムは解明されていません。しかしある仮説には猫には「仮声帯」と呼ばれる「喉頭室皺壁」という器官があり、それを収縮することで音が出ていると考えられています。
その仮説から猫が普段鳴く「ニャー」は声帯で、「ゴロゴロ音」は仮声帯を使い分けているということになります。
一般的に猫のゴロゴロ音はわずか生後2日から鳴らすといわれており、コミュニケーションをとる手段と考えられています。
そのため猫がゴロゴロと喉を鳴らすのは嬉しいときのイメージがありますが、実際のところは猫がどんなキッカケで喉を鳴らすのか、まだハッキリ解明されていないのか現状です。
猫の脳の奥にある神経振動子がゴロゴロ音と深く関係しているようで、そのため猫が喉をゴロゴロと鳴らすのは単に幸せのときだけではないのです。
猫の声がおかしいときに考えられる病気
猫の鳴き声がかすれたり、出なかったりと声がおかしい場合、環境の変化などによるストレスや不安感から過度にニャーニャーと鳴くことで声がガラガラになることがあります。
特に生活環境が変わりないのにも関わらず、声がおかしいときは何らかの病気の可能性があります。
猫ウイルス性鼻気管炎
猫風邪の原因である猫ヘルペスウイルスによる感染症です。感染すると鼻水やクシャミ、発熱などがみられたり、涙や目ヤニが多く結膜炎が起きたり、枯れたような声をすることもあります。
また食欲不振のより脱水症状や衰弱になることもあり、特に体力や免疫力が弱い子猫や高齢猫では肺炎など重症することがあります。
喉頭炎
喉頭粘膜に炎症が起きることで、痛みや腫れにより発声障害や呼吸困難を生じます。猫風邪の原因でもある猫ヘルペスウイルスや猫カリシウイルスにより発症するといわれています。
声がかすれて出なかったり、発熱や元気喪失、食欲不振などの症状がみられ、脱水により衰弱し横臥状態になることもあります。また息苦しくなり開口呼吸したり、ゲーゲーと吐きたそうにすることもあります。
気管虚脱
通常であれば気管は筒状で周りの軟骨で支えられておりますが、軟骨が弱くなり潰れてしまうことで呼吸障害を起こすことを気管虚脱といいます。
気管虚脱になると咳や呼吸するたびにガーガーとガチョウの様な声を発するのが特徴です。気管虚脱は進行性で重症すると、完全に潰れてしまい呼吸ができず窒息する恐れがあります。
まとめ
今回調べてみて猫は私たち人間のような声帯をもっておらず、その代わりに特殊化粘膜があることで「ニャー」と鳴くことが分かりました。
また猫の大きな特徴でもある喉をゴロゴロと鳴らすメカニズムはハッキリ解明されておりませんが、仮声帯から発していると考えられています。
猫の鳴き声がかすれたり、でない場合は過度に鳴きすぎて枯れることもあれば何らかの病気が原因の可能性もあります。そのため不安にさせないようにストレスに気をつけ、早めに動物病院へ受診するようにしてください。