猫が飼い主のあとをついてくる理由6つ
実は、猫には後追い行動の本能はそなわっていません。なのに、飼い主さんについてくる子がいるのはなぜなのでしょうか。「まだ子猫である」、などの年齢的な理由のほかに、「好奇心をそそるものがある」、「飼い主さんに何かしらの要求を伝えたい」サインであると考えられています。
また、特定の場所に行こうとする時だけ飼い主さんについてきたり、ドアの前や数m離れた場所から飼い主さんの行動を監視してくる猫もいます。
今回は猫があとをついてくる理由と猫の気持ち、過剰な後追いである「分離不安」の特徴・症状・対策についてお伝えしていきます。
甘えたい、近くにいたいと思っている
何も変わったことがないのに猫がついてくる場合は、「一緒にいて安心できる人」「ひと時も離れたくない」という気持ちでいっぱいです。
特に、静かに飼い主さんを見つめている場合は、飼い主さんに甘えたいよという気持ちが強いと言われています。中には寝る時も一緒にいたいとベッドの上までついてくる甘えん坊さんもいます。
飼い主にしてほしいことがある
「かまってほしい」「遊んで欲しい」と思った時、「やってくれないかな?」「気がついて欲しいな。」と飼い主さんの後をつけ回してくることがあります。加えて、先回りをして目の前でコロンとお腹を見せてきたり、飼い主さんの足元にスリスリしてきたりもします。
また、「あっちのドア(窓)を開けてほしい」などの、して欲しいことがある時も、呼びにくる意味でも飼い主さんに後をつけてきて、訴えかけてくるような態度を見せます。特に泣き声を出しながらついてくる時は、「ご飯が欲しい」、「トイレをきれいにして欲しい」などの要求がある場合が多いようです。
親離れしていない
年齢的な理由からの後追いもあります。子猫であれば生後6ヶ月までの時期は、飼い主さんのことを本当の親のように感じています。猫はその時期を過ぎれば、親猫が子猫を無理やり引き離すような、「親離れしなさい!」といった冷たい態度を取ることでも知られています。
親猫との接点が少ない保護猫などの場合は、そのような親離れの過程を踏んでいないため、成猫になっても飼い主さんのことを親のような存在だと思っている子もいます。「まだ親離れできていないかな?」と思っていてもいきなり冷たくせず、徐々に甘えさせる回数を減らすなどして様子を見てあげましょう。
飼い主さんを監視するため
猫には縄張りがあるので、基本的に家の中のことは全て把握しておきたいものなのです。それに、飼い主さんのことが大好きなので、家の中でいつも何をしているのかが常に気になっています。
常に視界に飼い主さんがいないと気になってしまい、後追いしてしまう猫も少なくありません。後追いしてきたと思ったら、少し離れた場所から監視してくる猫ちゃんもいます。
また、「敵意はないよ。」、「飼い主さんを守らなきゃ!」、「不安な気持ちだよ...」などの気持ちから監視してくることがあります。監視してくるパターンもそれぞれです。高いところから、ドアの隙間から、物陰から、飼い主さんが準備している時、と猫によって色々です。
いいことがあるかも?
飼い主さんが台所に行くと「ご飯がもらえるかも!」と勘違いして、毎日決まってストーカーしてくる猫もいます。時には甘えたような鳴き声で、「ご飯ちょうだい!」と訴えかけてくる事もあります。
飼い主さんが何をしているのかが気になる
猫は日常的に好奇心の強い生き物です。特に飼い主さんがいつもと違うことをしていたり、見たことがない様子でいると、気になって後をつけてくる猫もいます。「ねえねえ、何しているの?」と言いたげなかわいい態度を見せてきます。
猫は敏感な生き物なので、飼い主さんの変化もすぐに感じ取るのが上手です。良くも悪くも「いつもと様子が違う?」「いったいどうしたの?」と気になってついてきてしまいます。飼い主さんの体調や気持ちの変化も敏感に感じ取り、元気がなかったりすると普段と違う様子に戸惑って追いかけてくることもあります。
ついてくる場所で分かる猫の気持ち
常に飼い主さんのことが大好きでついてくる猫もいれば、特定の状況や場所にだけついてくる猫もいます。ついてくる場所によって、猫の考えていることがわかる判断材料になります。ついてきた時に、猫の動きや表情を観察してみると、なんとなく気持ちが分かることもあるのではないでしょうか。
キッチンについてくるのは「ご飯くれるかも?」
キッチンについてくる猫は、「餌をくれるかも?」と思っています。食いしん坊や甘えん坊の猫でなくても、監視や興味などの理由で、台所までついてくる猫は多いのです。
目をランランと輝かせて、「にゃーん(ご飯ちょうだい)!」と走って追いかけてくる子もいます。中には、飼い主さんがキッチンに向かおうとしただけで、スイッチが入ったように起き上がる猫もいます。
餌を欲しがる猫はかわいいものです。その場でやらないのはかわいそうだと思って、ついつい餌を与えたくなってしまいますが、今後も当たり前のようについてきたり、食べさせすぎによる肥満を招くため、ほどほどに猫の言う事を聞く程度にしておきましょう。
お風呂についてくるのは「興味がある」から
飼い主さんがお風呂に行くと、興味津々でついてきたり、脱衣場で洗濯機や収納の上でグルーミングを始めたり、飼い主さんの背中に乗ろうとする猫もいます。猫がドアの前で、お風呂から上がってくる飼い主さんを待っていたりする光景もよくあります。
なじみの匂いがするから入りたい、飼い主さんの匂いを嗅ぎたい、という気持ちが強く、縄張り意識も強い猫なので、家中どこでも確認しておきたい気持ちが強いと言えます。
それに、お風呂周りは水分が多く独特の湿気があり、ドアの形や床の素材感も他の部屋と違い、シャンプーなどの飼い主さんから嗅いだことがあるような匂いと、猫の好奇心をくすぐるような条件が詰まっています。
また、猫は視力が人間の10分の1ほどしかなく、人間の判別は匂いや大体のシルエットでしているため、単純に大好きな飼い主さんや場所的・雰囲気的な変化が、より興味をそそるのでしょう。
トイレについてくるのは「飼い主の匂いがする」から
猫がトイレについてくることが多いのは、飼い主さんの匂いがするからです。猫は嗅覚に優れているので、トイレに飼い主さんの匂いがついているため、存在確認として匂いを嗅ぎたい動物的本能があるはずです。
猫同士でもお尻の匂いを嗅ぐことで安心できる仲間だと認識するため、飼い主さんに対しても、「トイレ=安心する匂いがついている場所」だと言えます。
野良猫がついてくるのは「ごはんが欲しい」から
公園や自宅の周辺で人懐っこい野良猫がついてくることがあります。「知らない猫なのになぜ?」と思ってしまうものですが、普通であれば逃げていくはずの猫がついてきたら、「ご飯がもらえるかも?」と思っている証拠です。
野良猫であれば常に空腹を抱えているので、「餌をちょうだい」と言っているかのように足元をスリスリしたり、まとわりついてくる猫もいます。一方で、逃げたふりをしつつも一定の距離を置き、餌をくれる期待をしながら待っている猫もいます。
実は猫はひとりが苦手?
猫を一匹だけ飼っている飼い主さんは、後追いが多いと「もう一匹飼った方がいいのかも...」などと悩んだこともあると思います。猫は元々単独行動する生き物なので、基本的には一人が寂しいとは思っていません。返って、相性のよくない猫と一緒に暮らす方がストレスに感じてしまいます。
多頭飼いをしている家庭でも、猫同士によっては遊んだりせず知らん顔する関係もあります。ただ、子猫の頃から家猫のため、猫同士の生活を知らない子もいますし、飼い主さんと一緒が当たり前の暮らしをしている猫に限っては、ひとり遊びや留守番が苦手な子も多いのです。
猫にとってこのまま一人がいいのかどうかは、今まで育った環境とその猫の性質によって違ってきます。野良猫生活を覚えている猫であれば、飼い主さんが外出しても平気な子もいますが、普段から飼い主さんにべったりの猫ほど甘えん坊な傾向にあり、留守中は取り残されたような鳴き声で探し回る子もいるので、一緒に遊ぶ猫がいた方が気が紛れるケースもあります。
猫がずっとついてくるのは「分離不安」が原因かも
飼い主さんと離れるのが不安で後をついてくる猫もいます。寂しさによる過度な後追いや、トイレ以外での粗相、留守中に暴れたような跡が見られたら、「分離不安症」かもしれません。
分離不安症は犬に多く見られる症状ですが、猫にもこの疾患が増えてきました。完全室内飼いがスタンダードとなり、猫の精神依存がしやすい環境の影響だと考えられています。
症状は、対象者である飼い主さんの姿が見えなくなる前後や留守中に起こりやすいといわれています。飼い主さんと離れるのを嫌がったり、怯えたり、飼い主さんが視界にいないとにゃーにゃーと不安げに家中を探し回ります。原因は、場所に対する不安や飼い主さんと離れることによる過度な不安によるものがほとんどです。
特に「留守番に慣れていない」、「スキンシップが普段から多い」、「愛情豊かに育てられていた」甘えん坊で親離れできていない猫がなりやすいとされています。他には、病気や高齢で体調が悪いと脳の機能や五感が鈍ってきやすいため、分離不安につながる精神疾患を抱えやすいようです。
改善策は、「原因を突き止めて対処してあげること」と同時に、「一人に慣れさせること」です。具体的には「留守中でも安心できるスペースを確保してあげる」、「徐々に留守番時間を長くする」、「外出中でも監視できるキャットモニターで猫の様子を見守る」、「キャットログで行動記録をつける」などです。
つまり、猫にとって安心できる空間を作ってあげることです。設備的なことで言えば、キャットタワーのような、高くて全体を見下ろせたり、屋根のあるスペースを用意してあげることがおすすめです。留守番中でもできるだけ猫を安心させてあげられやすくなるはずです。あまりに分離不安がひどい場合は、獣医さんに症状を相談しましょう。サプリメントや投薬治療、行動療法で改善を目指します。
まとめ
猫が飼い主さんについてくる主な理由は、1. 愛情表現、2. 要求のサイン、3. 興味津々である、4. 親離れできていない、5. 監視、6. 不安感からの後追い(分離不安症)です。
猫がまとわりついてくる可愛らしい姿は、飼い主さんのことを信頼して甘えている証拠です。時に鬱陶しいくらい後追いされても、嫌がることなく、適度に甘やかしてあげましょう。
過剰に甘やかしすぎると、飼い主さんへの依存から「分離不安症」を招いてしまう事もあります。完全室内飼育で精神依存が起こりやすい環境から起こりやすいとされています。
なぜ後をつけてくるの?と思った時は、キャットカメラやキャットログを使ったりして、猫の様子や行動パターンをよく観察してみましょう。愛猫のいろんな気持ちがわかってきます。