「家庭内野良猫」とはどんな猫?
「家庭内」で「野良猫」、相対する言葉の組み合わせですが、そもそも家庭内野良猫とはどんな猫のことを指すのでしょうか?
これから保護猫を迎え入れようとしている人は、もしかしたらその猫が「家庭内野良猫」になる可能性もあるので、ぜひお読みください。
人に慣れる社会化ができていない猫
猫にとって、生後2〜8週の時期は「社会化期」と呼ばれます。
この月齢は人間を含む猫以外の動物、音やにおいなどのさまざまな種類の刺激に慣れやすいと言われており、この社会化期が猫の性格形成に深く影響すると言っても過言ではありません。
この社会化期に親猫や兄弟猫と触れ合う中で「強く噛むと相手は痛がる」「触られることは怖いことではない」など、さまざまなことを学んでいきます。
しかし、この社会化期に何らかの理由で親元から離れてしまうと、成猫になってからも人に慣れずに噛み癖などの攻撃行動が現れてしまうのです。
元野良で保護猫だった経歴を持つ猫に多い
「家庭内野良猫」は、もともと野良猫として外で暮らしていた保護猫に多いと言われています。
一般的に人慣れしている猫は、あごを撫でてあげるとゴロゴロと喉を鳴らしてリラックスした姿を見せてくれますが、元野良で保護された猫は、社会化期に親猫や兄弟猫からはぐれてしまったり、人間から不信感を与えられたりするなどの経験から「人間は怖い」と思っているケースがほとんどです。
手を近づけると噛みついてきたり、人が一定の距離まで近づくと逃げていったり、触ることさえも難しい場合が多いのです。
動物病院への通院や体のケアを行うことが難しい
家庭内保護猫とは「人に飼われてはいるものの人に慣れておらず、触ることさえも困難な猫」のことを言います。
人を怖がって触られることを極度に嫌がるため、爪切りができなかったり、病院に通院する際に暴れてしまったりと困ってしまうことも多いのです。
猫の爪の中には神経や血管が通っているため、暴れたまま爪切りを行ってしまうと、誤って神経や血管を傷つけてケガをさせてしまったり、病院で治療することも難しくなってしまったりする場合があります。
家庭内野良猫の慣らし方
猫は警戒心が強く、一度心を閉ざしてしまうとなかなか懐いてはくれませんが、「絶対に人に慣れない」というわけではありません。ここでは、家庭内野良猫の慣らし方についてご紹介します。
迎え入れてすぐはケージの中で生活させる
「せっかく引き取ったのにケージに閉じ込めておくなんてかわいそう」と感じる人も多いかと思います。
しかし、急に部屋の中を自由にさせてしまっては、初めての環境や慣れない場所に対してパニックを起こしてしまうことも考えられます。
猫はもともと狭い場所を好むので、ケージの中で落ち着かせてから部屋の中に出してあげるのがベストです。まずは、リビングなど人の出入りが多い場所にケージを設置し、「人がいて当然の環境で暮らすこと」に慣れてもらいましょう。
環境に慣れてきたらケージのあった部屋だけを自由に歩かせる
ケージの中で人のいる環境に慣れてきたら、いよいよ部屋の中を自由に歩かせてみます。とは言っても、ここでも焦りは禁物!まずはケージが置いてあった部屋だけで様子をみましょう。
この頃になると猫にとってケージは「安全で安心できる自分の縄張り」となっているはずです。縄張りを拠点に行動することで猫は安心して部屋に慣れていくことができるのです。
まだ人に慣れていなくても焦らなくて大丈夫です。いきなり順化するのを期待せずに、まずは環境に少しずつ慣らしていきましょう。
「おやつをあげて撫でる」を繰り返す
部屋の中に慣れてきたら今度は人に慣れてもらう段階です。ただし、まだ警戒心が解けきっていない子は、いきなり触ると引っ掻かれたり噛みつかれたりする場合もあります。
まずは「おやつをあげたら撫でる」を繰り返して、「猫にとって良いこと」と「人が触る」ということをセットで覚えてもらいましょう。
急に頭を撫でようとすると、防衛本能が働いた猫に噛まれてしまうかもしれないので、あごにゆっくり手を近づけて撫でるようにしましょう。
オヤツやおもちゃを使って人に慣れさせる
人のいる環境や触られることに慣れてきたら、おもちゃを使って一緒に遊んでみましょう。一緒に遊ぶことによって警戒心も解けていくので、人との距離も近づいていくはずです。
「猫じゃらし」は価格が手頃な上に、猫のハンターとしての本能も掻き立ててくれて、一緒に遊んでくれやすくなるのでオススメです。
活発におもちゃで遊ぶタイプではない子は、おやつや抱っこで距離を縮めるのが効果的。ご飯とは別におやつを用意して、人の手から与えてみましょう。
食べ始めたら優しく撫でるようにすると、「人が触る」=「良いこと」と結びつけてくれるようになります。
ケージや部屋の隅にじっと丸くなって動かない猫は、タオルなどで優しく包んで抱っこしてみるのも良いかもしれません。無理に長時間抱っこせず、猫が嫌がったらすぐに放してあげましょう。
家庭内野良猫の室内での捕まえ方
家庭内野良猫を慣らすときには、ゆっくりと時間をかけていくことが大切ですが、家の中で脱走したり、急な病気などで「今すぐに猫を捕まえなくてはならない」という場面もあるかもしれません。
その際に使える「家庭内野良猫の捕まえ方」をご紹介します。
基本は環境や人に慣れてから行う
慣らしている途中で無理に捕まえてしまうと、また一から関係性を築き上げなくてはいけなくなるリスクがあります。
また、猫も飼い主もケガをしてしまう恐れもあるため、できるならば十分に人や環境に慣れてから捕まえるのが理想的です。あくまでも「病気などの緊急時のみ」に行うようにしましょう。
フードを仕掛ける
食欲旺盛な猫には、誘き寄せたい場所にフードを仕掛ける方法が有効です。
家庭内野良猫は警戒心がとても強いので、フードを仕掛けたからと言ってすぐにキャリーバッグの中に入るのは難しいですが、猫の精神的ストレスを最低限に抑えるのには良い方法です。
ベッドの下に潜り込んで出てこなかったり、キャリーバッグの中に猫を入れたい時などには、まずこの方法を試して下さい。ただし、猫が「安全だ」と認識して入るまで、長時間かかることが多く、急ぎの時には向かないかもしれません。
洗濯ネットやタモなどを使って捕まえる
少し手荒に思えてしまうかもしれませんが、家庭内野良猫にはこの方法が一般的です。
洗濯ネットは、捕獲したあとに猫を入れたまま動物病院などに連れていくことが可能で、入れたまま爪切りなどの処置もしやすくなるので、暴れる猫に対して獣医師もおすすめしている方法です。
ファスナーではなく、紐で口を閉じるタイプのほうが、猫が入ってすぐに閉じることができ、猫の毛や皮膚を引っ掛ける危険性もないのでおすすめです。
また、実際に家庭内野良猫を飼っている人の話では、ある程度長さのある「タモ」を使うと引っ掻かれたり噛まれたりする心配もないので、比較的捕まえやすいそうです。
家庭内野良猫と暮らす時の注意点
保護された猫は一般的な人慣れした猫よりも繊細なため、注意点も多くあります。
人慣れしにくくても猫の個性だと理解する
猫は本来、単独行動を好む動物です。それが人間に不信感を抱いた保護猫であれば、人に懐きにくいのは「ごく自然なこと」です。
「保護猫を家庭内野良猫にしない」という気持ちを持ちつつ、なかなか人慣れしなくても焦らずに「それが猫の個性なのだ」と理解しておくことが大切です。
猫とのスキンシップを過剰に求めない
猫は「人間のタイミング」で触られることをあまり好みません。人慣れしている猫であっても、このタイミングを誤ると飼い主に噛み付くこともあるので、家庭内野良猫であれば尚更です。
愛猫とたくさんスキンシップをとって仲良くなりたい、という気持ちはわかりますが、過剰なスキンシップは逆効果となってしまうので注意が必要です。
先住猫との同居がうまくいくかよく観察する
先住猫がいる場合は、猫同士の相性をよく観察しておくことが大切です。先住猫の性格にもよりますが、人との関係がうまくいかない家庭内野良猫であっても、猫同士ではうまくいくという場合も多いです。
まずは、先住猫と家庭内野良猫、それぞれに「安心してくつろげる場所」を用意してあげましょう。
つい新しく迎えた猫のことを優先しがちですが、ごはんをあげる際などは先住猫を優先させることで、嫉妬して新しく迎えた猫に攻撃することを防ぐことができます。
先住猫と新しく迎えた猫が良い関係性を築けるように、双方をしっかり観察しましょう。
「猫らしさ」を忘れない
一般的に、保護された猫が人に慣れるまでは何年もかかると言われています。中には生涯に渡ることもあり、人に懐かないまま亡くなってしまうこともあるのです。
「人間に慣れさせよう」と猫に無理をさせることも、飼い主側が無理をしてしまうことも良いことではありません。猫本来のらしさを忘れずに、個性を広い心を持って楽しみながら接することを心がけましょう。
まとめ
家庭内野良猫を迎え入れることは決して「簡単」なことではありません。しかし、猫が少しずつ心を開いていく姿を見守ることは飼い主にとって得るものも多いはずです。
- 焦らずにゆっくり「環境」に慣らす
- ある程度環境に慣れてきたら「人」に慣らしていく
- 捕まえる行為はなるべく人慣れした後で行う
- 広い心で「猫らしさ」を楽しむ
猫にも自分にも無理のないように家庭内保護猫と暮らしていくことを心がけましょう。