【獣医師監修】猫は豚肉を食べても大丈夫?栄養成分や注意点、安全な与え方まで解説

【獣医師監修】猫は豚肉を食べても大丈夫?栄養成分や注意点、安全な与え方まで解説

猫は豚肉を食べても大丈夫?結論は「加熱すればOK」ですが、生肉はトキソプラズマ等の危険があり絶対NGです。この記事では、安全な与え方や正しい調理法、1日の適量、アレルギーの注意点を解説。愛猫に豚肉を与える前に必ずチェックしてください。

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記事の監修

麻布大学獣医学部獣医学科卒業後、神奈川県内の動物病院にて勤務。獣医師の電話相談窓口やペットショップの巡回を経て、横浜市に自身の動物病院を開院。開院後、ASC永田の皮膚科塾を修了。皮膚科や小児科、産科分野に興味があり、日々の診療で力を入れさせていただいています。

猫は豚肉を食べても大丈夫?

テーブルに置かれた豚肉を見つめる猫

豚肉は猫に与えても問題ない食材です。

豚肉には猫の体を作るために必要なタンパク質やビタミンが豊富に含まれており、適切に調理すれば健康維持に役立つ優れたエネルギー源となります。

ただし、生の豚肉は与えてはいけません。生肉には寄生虫や細菌が含まれているリスクが高く、猫の命に関わる重篤な症状を引き起こす可能性があります。

必ず加熱調理を行うことが絶対条件です。また、おやつやトッピングとして少量与える程度に留めておきましょう。

豚肉の栄養素と猫への健康効果

お皿に盛られた豚肉

豚肉は栄養価が高く、特に猫の健康維持に役立つ成分が多く含まれています。ここでは主な栄養素と、それらが猫の体にどのような良い影響を与えるのかを解説します。

タンパク質

豚肉には良質な動物性タンパク質が豊富に含まれています。猫は本来肉食動物であり、筋肉や被毛、皮膚、内臓などを健康に保つために多くのタンパク質を必要とします。

特に運動量の多いアメリカンショートヘアや、筋肉質なベンガルなどの猫種にとって、良質なタンパク源はたくましい体づくりをサポートする重要な栄養素となります。

特にヒレやモモなどの部位は脂身が少なく、高タンパクなためおすすめです。

ビタミンB1(チアミン)

豚肉は他の肉類と比較して、ビタミンB1が非常に豊富です。ビタミンB1は糖質をエネルギーに変える代謝を助ける働きがあり、疲労回復効果が期待できます。

また、神経機能を正常に保つためにも欠かせない栄養素です。活発に動き回る猫や、夏バテ気味で食欲が落ちている猫のエネルギー補給に適しています。

ビタミンB群(B6・B12・ナイアシン)

ビタミンB1以外にも、皮膚や粘膜の健康を維持するビタミンB6や、血液を作るビタミンB12、ナイアシンなどがバランスよく含まれています。

これらは皮膚トラブルの予防や、美しい毛並みの維持に役立ちます。換毛期の猫や、皮膚がデリケートな猫にとっても嬉しい栄養素です。

ただし、「総合栄養食」と記載のあるキャットフードを食べていれば、こういったビタミンB群が不足することはなく、十分に補給できます。

猫に豚肉を与える際の注意点

空の食器の前に座っている猫

栄養豊富な豚肉ですが、与え方を間違えると健康を害する恐れがあります。安全に与えるために、飼い主が必ず守るべき注意点を確認しましょう。

豚肉アレルギーに注意

猫によっては豚肉に対してアレルギー反応を示す場合があります。初めて与える際はごく少量から始め、食後の様子をよく観察してください。

もし食後に下痢や嘔吐、皮膚の痒みなどの症状が見られた場合は直ちに与えるのを中止し、動物病院で獣医師の診察を受けてください。

トキソプラズマ症に注意

豚肉にはトキソプラズマという寄生虫が存在している可能性があります。トキソプラズマに感染すると、発熱や呼吸困難、嘔吐、下痢などの症状を引き起こすことがあります。

特に免疫力が低い子猫やシニア猫は重症化しやすいため注意が必要です。このリスクは十分な加熱によって排除できるため、生食は絶対に避けてください。

必ず火を通して与える

トキソプラズマだけでなく、サルモネラ菌や大腸菌などの食中毒菌を防ぐためにも、中心部まで完全に火を通す必要があります。

表面の色が変わっただけでは不十分です。人間が食べる時以上に念入りに加熱し、赤みが完全になくなったことを確認してから与えてください。

骨は取り除く

豚肉の骨、特にスペアリブなどの硬い骨や、加熱して砕けやすくなった骨は大変危険です。

猫の口の中の怪我につながるだけでなく、丸呑みしてしまうと喉や食道、胃腸を傷つけたり、閉塞を起こしたりする可能性があります。

必ず骨を完全に取り除き、肉の部分だけを与えるようにしてください。軟骨なども消化不良の原因になることがあるため、避けたほうが無難です。

人間用に味付けした肉は与えない

生姜焼きや豚キムチ、角煮など、人間用に味付けされた豚肉は猫にとって塩分や糖分が過剰です。また、ネギ類や香辛料が含まれている場合、中毒症状を引き起こす危険があります。

調味料を使わず、単にお湯で茹でたものや蒸したものを与えてください。しゃぶしゃぶをする際も、人間用のタレにはつけず、お湯にくぐらせただけのものを冷まして与えましょう。

豚肉の加工品は与えない

ハム、ベーコン、ソーセージなどの加工品は、保存料や発色剤などの添加物が多く含まれています。中でも「亜硝酸ナトリウム(亜硝酸塩)」という成分を猫が多量に摂取すると、中毒症状を引き起こすリスクがあるとされています。

また、塩分濃度が非常に高く、猫の腎臓に大きな負担をかけます。

これらは猫の健康を損なうリスクが高いため、たとえ加熱したとしても与えてはいけません。必ず生の精肉を購入し、自宅で調理したものだけを与えてください。

猫に豚肉を食べさせる際の与え方・調理法

豚肉を茹でようとしている様子

猫に豚肉を安全においしく食べてもらうための、具体的な調理方法を解説します。脂身の少ないヒレやモモなどの部位を選ぶのがおすすめです。

茹でる・蒸す(中心温度に注意)

油を使わずに調理できる「茹でる」または「蒸す」方法が最適です。お湯で茹でることで余分な脂を落とすことができるため、カロリーを抑えたい場合にも適しています。

重要なのは加熱温度です。寄生虫や細菌を死滅させるため、肉の中心温度が70度以上で3分間以上、または75度以上で1分間以上の加熱を目安にしてください。しっかりと中まで火を通すことが重要です。

小さくカットして与える

猫は食べ物をあまり噛まずに飲み込む習性があります。大きな塊のまま与えると、喉に詰まらせたり、消化不良を起こして吐き戻したりする原因になります。

加熱調理をした後、5mm〜1cm角程度の小ささにカットするか、手で細かく割いてから与えてください。特にマンチカンなどの小型の猫種やシニア猫には、より細かく刻んであげましょう。

猫に豚肉を食べさせる際の適量

食器からフードを食べている猫

豚肉はあくまでもおやつやトッピングとして与え、主食であるキャットフードの妨げにならないように調整する必要があります。

豚ヒレ肉で計算すると、一般的な成猫(体重4kg程度)の場合、1日に与えて良い量は15g〜20g程度が目安です。これは薄切りの豚肉なら約半枚分、一口大にカットしたもので2〜3個分に相当します。

カロリーの観点からは、1日に必要な総カロリーの10%以内、理想的には5%程度に抑えるのが望ましいです。豚肉を与えた分だけ、主食のフードを減らしてカロリーオーバーを防いでください。

まとめ

食事をし終わって口周りを舌で舐めている猫

豚肉は、正しい知識を持って与えれば、猫にとって良質なタンパク源となる食材です。ビタミンB1などの栄養素も豊富で、疲労回復や健康維持に役立ちます。

しかし、生食によるトキソプラズマ症のリスクや、アレルギー、脂質の摂りすぎなど、注意すべき点も多くあります。必ず中心部まで十分に加熱し、味付けなしで与えることを徹底してください。

愛猫の健康を守れるのは飼い主だけです。適切な量と調理法を守り、いつもの食事に彩りを添える程度に、安全に豚肉を楽しませてあげましょう。