猫の腎臓はなぜ弱いか
猫は二つの宿命を背負ってきた
猫の腎臓が弱るのは、二つの理由があります。
一つ目は、家猫はリビア山猫から分岐した、砂漠の生き物だからです。砂漠にはめったに雨が降らないので、砂漠の生き物はすくない水分をうまく使う仕組みが備わっています。しかし、それは一方で、腎臓がとっても頑張っている、ということなのです。
二つ目の理由は、猫では腎臓のお掃除機能が遺伝的にとても弱いからです。
人間などでは、風邪や膀胱炎などの炎症で一時的に腎臓が弱っても、お掃除機能が腎臓をきれいに保つことで腎臓が長持ちするということがわかってきました。
東京大学宮崎教授の研究
腎臓のお掃除人、それがAIMたんぱく質
そのお掃除機能をもつたんぱく質、それが正常なAIMです。最初は人間の免疫の研究をしていた東京大学の宮崎教授が発見したものでした。
AIM(マクロファージ自死阻害因子)は全身でマクロファージという免疫細胞が作り、血管の中を回っています。血液中のAIMは、大きな掃除ステーションに小さな掃除機(本当は抗体ですが、デブリと呼ばれる細かいゴミを掃除する機能もあります)がたくさんくっ付いているような構造をしています。
これは、AIMが血液のなかで安定しているために必要なのです。
宮崎教授『(中略)マクロファージか ら分泌されたあと、AIMは血液の中で IgMと結合しています。IgMは五量体 を形成していますが、それにAIMが結 合することによって、血中で非常に安 定化します』引用:ドクターサロン58巻7月号(2014年6月)
そして、腎臓に入ると小さな掃除機が切り離されて、腎臓の細かい「濾過器」の詰まりを解消してくれます。
ところが、家ネコを含む猫科動物では遺伝的にこの「小さな掃除機」がステーションに通常より1000倍も強いボンドでくっついて、離れにくい構造だということがわかってきました。
分離型AIMを猫に使うことに
そこで宮崎先生が考えたのは、正常なAIMを入れてあげれば、猫の腎臓も掃除してくれるのではないか、ということです。
これは現在、他の治療ではなかなか難しい猫ちゃんでも、短い期間の結果ではありますが、とても効果的そうだ、ということがわかってきています。
そして、この研究は2020-24年春に実現するかもしれないと言われています。
猫の寿命は腎臓がかなりのネック
猫では、次の理由から腎臓にとても負担がかかっています。
- 高い濃縮機能が負担になる
- 猫のAIM分離機能の遺伝的欠損
遺伝は生まれつきのものなので、腎臓は猫の最大の弱点とも言われているのです。
しかし、猫の長寿ギネス記録では、スフィンクスのグランパ君の34才という記録もあります。
また、猫は腎臓だけでなく、肝臓の代謝酵素にも欠損が見つかっているのにもかかわらず、20年も長生きができます。
ということは、これらの弱点をカバーすることができれば、もしかしたら30歳があたりまえ、の時代が来るのかもしれません!
参考文献
https://www.u-tokyo.ac.jp/focus/ja/features/z1304_00002.html
(淡青37号)
http://congress.jamt.or.jp/chubu56/pdf/special/9002.pdf
(2017年第58回医学検査学会特別企画公演 抄録)
https://www.natureasia.com/ja-jp/srep/abstracts/81624
(ネイチャージャパン アブストラクト2016年10月)
30代 女性 匿名
もちろんうちの猫様が30年生きてくれたら私は嬉しいに決まってるけど
猫様は30年以上長生きしたい、って思ってくれるかな。
言葉が聞けない以上は何をやっても結局は人間のエゴかな、とも思う。