子猫を初めて保護しました
三年前の夏。台風一過の猛暑日。私は買い物のため、アパートの二階から階下に駐車してある自転車に向かいました。焼けるように暑いコンクリートの駐車場。私の自転車の前に、その『かたまり』はありました。
私は、その『かたまり』を見たとき一瞬、ぞうきんかと思ったのですが、すぐに子猫だとわかりました。近寄りますとすぐに目を覚まし、『ピー、ピー』と、震えた声で鳴き始めました。
体中に無数の小さなアリがたかり、背中には2cmくらいの生々しい傷と、両目は目ヤニで塞がれ、ほとんど目が見えていなのではないかと思いました。私はあまりの痛ましい姿に顔をしかめ、同時に頭を抱えてしまいました。
『どうしたらいいんだろう…』。
手のひらにも乗るような、こんなに小さな命ひとつ前にして、これほどまでに動揺する自分が、ひどく情けなく感じたのを覚えています。
私は『この炎天下だから相当のどが乾いているのではないか?』と思い、大急ぎでアパートの二階の部屋に駆け上がり、小皿に水を用意し、子猫の前に置きました。
子猫は弱々しく立ち上がると、まるでお母さんを呼んでるかのように、小さい体で『ピーピーピーピー!』と精一杯鳴きながら、駐車場のあちらこちらをフラフラ歩き始めました。『水ではなく牛乳じゃないとダメなのか!?』
私は子猫をそのままにし、自転車にとび乗り、急いで近くのコンビニで牛乳を買って戻ってきました。正直に告白しますと、『あの子猫…私が牛乳を買ってる間にどこかにいなくなってくれればいいのに…』と思っていました。
私が急いで戻ってきたら、子猫は丸められたぞうきんのように、また寝ていました。小皿の水を捨て、牛乳を注いで目の前に差し出しましたが、やはり全く口にしようとはせず、ただ鳴くばかり。
私の場合、保護猫をどうしたか?
私はネットで、捨て猫を保護した場合、どうしたらよいのかを調べ、地域の交番に連絡して拾得物として預かってもらうという方法があるのを知り、すぐに交番に連絡したのですが、お巡りさんによると、
『一時的に預かりますが、落とし主がいない場合はセンターに引き渡すようになってます。』
という説明を受けました。私は捨て猫を拾うということが初めてだったこともあり、『センターに引き渡す』ということは、無条件に殺処分されてしまうことだと勘違いして、『それだけは絶対にできない』と思い、電話を切ってしまいました。
お巡りさんから譲渡会の説明も受けたと思うのですが、その時は完璧に冷静さを失っており、あのときの会話はほとんど覚えておりません。
賛否を承知の上で書かせていただきますと、今思えば、冷静さを失っていてよかったんだと思います。譲渡会で里親が見つかるとも限らないことは、その後の情報で知りました。
あの時、衝動的に、『それだけは絶対にできない』と感じたのは、私の冷静な判断などではなく、私の心の底からの叫びだったのだと思うのです。言うなれば、同じ生き物としての魂への共感です。痛み、苦しみへの共感です。
私はひとまず、預かってもらうところを探すよりも、子猫の体力を回復させることを最優先にしようと頭を切り替えました。そして、子猫をダンボール箱に入れて、近くの動物病院に連れて行きました。
動物病院にて
獣医さんによると、子猫はメス。生まれてまだ三週間くらいとのこと。
親猫は野生の本能のとして、弱い子供を置き去りにするときがあると教えてくれました。背中の傷と目は、カラスにやられた可能性があるとのことでした。水も牛乳も飲まないわけは、鼻が鼻水で塞がっていて、においを確認することができないからということでした。
またもし、病院に連れてくるのがあと少し遅れていたら、おそらく死んでいただろうとも言われました。
病院に預けてから3時間後…私は子猫を引き取りに行きました。全身にたかっていたアリは綺麗に落とされ、両目のふちは痛々しく腫れいましたが、少しだけ開いていました。診察台の上では、ずっーとピーピーピーピー鳴いてました…
私はこれでよかったんだと、ひとまず胸をなでおろしました。すると、親切に受け入れてくれた獣医さんを前に涙が溢れてきました。
その時になって、やっと冷静に考えられるようになり、綺麗になった小さな命を目の前にして、『この子はたった三週間で親と離ればなれになってしまったのか…』と思ったら、涙がポロポロ止まらなくなりました。
部屋に帰ってからというもの、子猫は深く深く眠り続けました…
現在
あれから3年経ちました。保護してから半年くらいに不妊手術をしました。かわいそうだなと思いましたが、これだけは仕方ありませんでした。
猫と暮らすのは初めてだったので、相当な戸惑いもありましたが、あのボロぞうきんのようだった捨て猫が、今では立派な猫に生まれ変わり、毎日部屋中を飛ぶように遊び回っています。
子猫にはピーコと名付けました。ずっとピーピー!ピーピー!鳴いていたからピーコです。今はピーピー鳴きません。ミャーミャーとか、アッアッアッとか、いろんな鳴き声で私を呼びます。
私は今でもピーコと呼ぶたびに、あの台風一過の猛烈な炎天下をたった一人で耐えぬいた、小さな命のたくましい叫び声を思いだします。ピーピー!ピーピー!…私を呼んでくれてありがとうね。
まとめ
初めて猫を保護することになった方々の不安が少しでも軽くなり、また、保護された猫ちゃん達が幸せであることを祈りつつ、当時の私のリアルな戸惑いを書かせていただきました。最後までお読みいただき、ありがとうございました。
30代 女性 匿名
末永くピーコちゃんとお幸せに。
40代 男性 koo
30代 女性 匿名
ほぼ同じ状況に、読んでいて驚きを隠せませんでした!
我が家も迷った挙句、そのまま見捨てる事が出来ず…病院へ連れて行き、その時に獣医さんに「この子は今後どうされますか?…飼いますか?」
と聞かれ、今までの迷いが一瞬にして吹き飛び「うちで育てます!」と宣言しました。
今では大切な家族です。
お互いの猫ちゃんに幸あれ!
50代以上 女性 匿名
人間だろうが猫、犬だろうが、命は命です
ピーコちゃんを大事にいつまでも一緒に
暮らしてほしいです。よく助けてくれましたね。嬉しい思いでいっぱいです。
40代 女性 匿名
40代 女性 匿名
いつまでも幸せな時間が過ごせますように
男性 匿名
警察や愛護とか保護とか勘違いをするような名前の保健所に連れて行かないで、ご自身で保護に踏み切ってくれてありがとうございます。
しあわせに!
40代 男性 ヲロチョン
40代 女性 ゆき
子猫を助けてくれて本当にありがとうございます!
40代 女性 ノラタマ
40代 男性 さとひ
僕も保護した猫を『ミャーコ』と名付けようとしたら、相方に全力で反対されて『マロン』になりました。
50代以上 女性 チコ
わたしも現在保護猫5匹と暮らしています。もぉ30年以上猫たちといて感じることは、猫は神さまがくれたプレゼントの中で最高だと思っています。地球上でいちばん強い人間が、自分より弱い存在を助けたり大切にしたりすることが、心の豊かさの原点のように思います。
末永くおしあわせに(^^)