猫と人の命に関わる感染症『SFTS』とは?感染する原因や危険な症状、予防法まで解説

猫と人の命に関わる感染症『SFTS』とは?感染する原因や危険な症状、予防法まで解説

猫だけでなく人間にとっても命に関わる病気「SFTS」をご存じでしょうか。SFTSは、重症熱性血小板減少症候群というマダニが媒介する感染症です。最悪の場合、猫も人も命を落とす危険があるため、猫を飼う人はもちろん、猫を保護する人、街の猫が好きな人など、全員が正しい知識を持つことが求められています。この記事では、SFTSの感染経路や主な症状、そして感染しないための予防策をくわしく解説していきます。

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記事の監修

日本では獣医師。世界では旅人。”旅する獣医師”として世界各国を巡り、海外で見てきた”動物と人との共生の様子”を、執筆や写真展を通して皆さんと共有する活動をしています。

SFTSに感染する主な原因

ダニに刺されている猫

SFTSの主な感染源はマダニです。吸血前は1cmにも満たない小さな虫ですが、猫や人に致死率の高いSFTSウイルスを媒介するコワイ存在です。

また、SFTSウイルスは、マダニ以外にも感染ルートを持っています。それでは、どのようにSFTSウイルスに感染するのか順番に見ていきましょう。

1.マダニに刺される

SFTSの直接的な感染原因は、SFTSウイルスを持っているマダニに刺されることです。

マダニは、草むらにある葉の先の方へ移動し、バンザイをして動物が通るのを待ち構えます。たまたまその草に動物の体が触れた瞬間に、バンザイしていた足の爪を引っ掛け、被毛にしっかりとしがみついて乗り移ります。

動物の身体に移ったマダニは、顔周りや股など吸血しやすい場所を探して、数日〜1週間かけて吸血しますが、その間、自分の身体が抜けないように自分の唾液を注入してセメントのように固定しておきます。この液体に、ウイルスが含まれているとSFTSに感染してしまうのです。

2.感染した猫の体液に触れる

SFTSに感染している猫の体液には、SFTSウイルスが含まれ、直接触ることで人間も感染する可能性があります。

SFTSウイルスは、触れた手指など皮膚表面にあるキズだけでなく、目や鼻・口などの粘膜に体液が付着することで体内にウイルスが侵入します。体液には血液、ヨダレ、便や尿なども含まれます。

たとえば、猫が脱走して帰ってきてから具合が悪くなった場合や、倒れている野良猫を保護した際にお世話をしたりしただけでも体液に触れることがあり、自分まで感染するおそれがあるのです。

3.人から人への感染もありうる

SFTSウイルスは、感染した人の体液に触れることで人から人へ感染することもあります。実際の事例としては、SFTS患者の対応にあたった医療従事者の感染が報告されていますが、海外(特に中国や韓国)では、感染した家族の介護をした人が、SFTSを発症した例が報告されています。

SFTSウイルスは、空気中に広がることはないとされていますが、感染者との接触にはリスクを伴います。病院でSFTSと診断されると原則として入院した上で治療・管理されますが、発熱や下痢などの症状が出てきた初期の頃には、家族が体液に触れてしまう危険は十分に考えられます。

SFTSの危険な症状と予防法

スポット駆除薬を滴下される猫

SFTSでは、猫と人の双方に共通した症状が見られます。しかし、猫の方は格段に死亡率が高く、感染は決して軽視できるものではありません。

ここではSFTSの症状とその予防法を見ていきましょう。

SFTSの症状

初期の段階では、まず発熱が見られます。猫の平熱はもともと38〜39℃程度であるため、SFTSに感染すると40℃以上の危険な高熱になり、急激に元気を失ってぐったりします。人間も、インフルエンザのような高熱(38℃以上)と激しい頭痛、強い倦怠感が現れます。症状が進むと、消化器症状が出てきて、人も猫も激しい下痢や嘔吐で食べものは完全に受け付けなくなることがあります。

「血小板減少症候群」の名の通り、血小板や白血球が急激に減少し、血が固まらなくなることから皮膚下で出血し、人間の場合は、特にぶつけていないのに紫色のアザや出血斑が見られ、歯ぐきや鼻の中などの粘膜から出血するようになります。

猫の場合は、急激な肝機能障害から黄疸が出てきます。耳の内側や口の粘膜などが黄色くなるので飼い主が異変に気づくサインとなります。また、猫は致死率が約50〜60%と非常に高いのが特徴です。

SFTSウイルスに感染しないために

SFTSを予防するワクチンはまだないことから、まずは猫へのマダニ対策が重要です。動物病院では、ノミとマダニに駆除効果があるスポットタイプのお薬があります。獣医師に相談して、定期的に投与しておくと安心です。

駆除薬を使うことでマダニの寄生を防ぐことはできますが、マダニに噛まれる事自体を完全に防ぐことはできません。

「ひとりで外には行かせないけど、お庭を探索することがある」というような場合でも、マダニは庭先の草木にも出現します。マダニとの接触を根本的に抑えるためにも、お部屋の中だけで過ごす生活を進めていきましょう。

また、猫が急に高熱を出しぐったりした時点で、何かしらのウイルスを排出している可能性はあります。多頭飼いであれば、ほかの子に感染させてしまう可能性もあります。

SFTSの疑いは獣医師に診てもらうまでわからないため、まずは病状の悪い猫を完全に隔離し、トイレ掃除やよだれなどのふき取りにも、使い捨て手袋とマスクを装着するなど、万が一を想定して感染を抑える行動を取りましょう。

まとめ

猫を膝に乗せて電話する女性

SFTSは、主にマダニに刺されることで感染する人獣共通感染症です。人間が感染した場合は、病状に個人差が大きく、無症状や発熱程度の軽症で済む人から重症化する人までさまざまで、中には亡くなるケースもあります。猫の場合は重症化率が非常に高く、約6割が死に至る非常に危険な病気です。

猫の体にマダニを見つけても、自身で取り除くことはせず、病院で取り除いてもらうようにしてください。マダニの体内のウイルスが注入されたり、皮膚に固定された頭部が残ったりすることもあるためです。

また、万が一、SFTSが疑われる猫を動物病院へ連れて行く際には、獣医師や病院スタッフへの二次感染を防ぐためにも、受診する前に必ず「外に出る猫である」「マダニに噛まれていた」「SFTSの疑いがある」などといった心当たりのある情報を伝え、指示に従って受診するようにしてください。また、自身の身を守るためにも、使い捨て手袋やマスクを着用しましょう。

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