猫にまつわる『都市伝説・言い伝え』6選 本当に起こるの?囁かれるようになった理由も

猫にまつわる『都市伝説・言い伝え』6選 本当に起こるの?囁かれるようになった理由も

むかしから日本人の身近で暮らしてきた猫は、人の目を引き、さまざまな都市伝説や言い伝えの対象となってきました。その内容には、猫の習性や人間との関係性、当時の社会情勢などが影響していますが、中には単なる伝説ではなく、科学的な理由が証明できるものも存在しています。猫の伝説にはさまざまな説がありますが、今回はその中から6つを選んで紹介します。

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記事の監修

日本獣医生命科学大学卒業。北海道の大学病院で獣医師として勤務。一般診療をメインに行いながら、大学にて麻酔の研究も並行して行う。「動物と飼い主さんに寄り添った治療」を目標に掲げ、日々診療に励んでいます。

猫にまつわる都市伝説や言い伝え6選

やんのかポーズの黒猫

昔から猫にまつわる伝承は、日本の八百万の神思想や、猫という動物の神秘性などが背景になっているものが多くあります。それらが人や物の移動によって広まり、その地域によって話に色が付き、定着していきました。

同じような話が全国にあるのもよくあることです。ここからは、よく聞く猫に関連する伝承に、科学的な目線も含めて紹介していきます。

1.猫が顔を洗うと雨が降る

江戸時代、1709年の文献には「猫が顔を洗い、手が耳を越えるときは雨が降る」と書かれています。

猫のヒゲや被毛は、繊細な感覚器として働いています。もちろん、気圧や湿度などの天候の変化にも敏感です。特に雨が降る前は湿度が高くなることから、被毛にまとわりつく湿気を取り去ろうとして、顔の毛づくろいをする姿が見られるようになるといわれています。

農業や漁業を中心とする社会では、雨天は収穫や出漁の可否、ひいては人々の命や生活に直結する重要事項です。現代の私たちには毎日見慣れた猫の姿も、当時の人々にとっては「猫の姿からでも、なんとか雨を予測できないものか」と考えたのかもしれません。

2.猫は死ぬときに姿を隠す

「猫は死ぬときに姿を隠す」というのは、猫を外に出すことが一般的だったころの言い伝えです。

猫は自分の死期がわかるのかという点については科学的な根拠はありませんが、猫の本能としては、体調不良時には、暗くて狭い場所へ隠れようとする習性があります。弱った状態を外敵にバレないよう外部刺激を遮断できる場所に隠れて、体力を温存する目的です。

しかし、いまとは違って獣医療が未熟な昔は、弱った猫を医者にかけることがありませんでしたから、現実的には、隠れた先でそのまま息絶えてしまうことも多かったのでしょう。猫をかわいがっていた人たちの「あの猫は死に際を見せないよう姿を隠したのだ」という情緒的な考えが定着したのだと考えられます。

3.黒猫が前を横切ると縁起が悪い

現代に広く知られる「黒猫が横切ると縁起が悪い」という言い伝えは、日本固有の古い伝承というより、西洋の黒猫に対する迷信の影響が大きいと考えられています。

中世ヨーロッパでは、魔女の使い魔や悪魔と猫が結びつけられ、黒猫もその影響を強く受けました。街灯がまだない時代、闇夜に黒猫が目の前を横切ることは、魔女や悪魔が現れた兆候として不吉に捉える考えが広がったとされています。

一方、日本では、「邪気を払う黒」と「ネズミから穀物や蚕を守ってくれる動物」である黒猫は、むしろ厄除けや幸福の象徴として親しまれていたのです。

4.猫が生のイカを食べると腰を抜かす

昔から漁港には猫が多く住み、漁師さんからのおすそ分けをもらったり、ときには盗んだりして生き延びていました。「猫がイカを食べると腰が抜ける」という言い伝えには、そんな猫たちを見ていた人々の経験則が関係していると考えられています。

実際に生のイカにはチアミナーゼという酵素が含まれており、猫が大量に食べるとビタミンB1が不足するおそれがあります。ビタミンB1は神経の働きに重要なため、不足するとふらつきや運動障害などが起こることがあります。これが「腰が抜ける」という表現につながったと考えられます。

5.長生きした猫は猫又になる

年老いた猫のしっぽが2つに割れて「猫又」になるという伝承は有名ですね。

当時はしっかりと管理された食べものはなく、猫は家の中より外で過ごす時間の方が長かったと考えられます。加齢で白っぽくあせた毛色や、脱水や汚れで毛割れして複数に見えるしっぽなど、猫の変化が人の目には異様に映ったのでしょう。

古い猫又伝承の多くは、富山・山形・新潟など日本海側の人里離れた山や峠を舞台とする点で共通しています。猫を愛玩動物として飼う文化があった江戸などの都市部と異なり、飼育環境や人との関わり方が猫又を生んだのかもしれません。

6.三毛猫のオスは縁起がいい

三毛猫のオスは、昔から「福を呼ぶ」「商売繁盛につながる」という言い伝えがあります。もともと三毛猫そのものが福を招く猫と考えられてきた上に、さらに三毛猫のオスには、科学的にも希少性があることで、より特別な存在とされてきたのです。

三毛猫の3つの毛色(黒・茶・白)を決める遺伝子はX染色体にあり、オス(XY)で三毛になるには「XXY」という特殊な染色体異常が起きなくてはなりません。その確率は、約3万匹に1匹と言われるほど希少です。

そのことから、三毛猫のオスは見ただけでも縁起がいいとまで言われるようになったのです。

なぜ猫にはこんなに多くの言い伝えがあるの?

爪を立てて遊ぶ子猫

むかしから、猫が人間の生活空間に近い場所で暮らしているにもかかわらず、野生味を残して自立して生活する特異な存在だったことが、猫にまつわる俗信が多く残った背景と考えられます。

猫は、暗い場所でも平気で動き回ったり、目の形が時間帯によって変わったり、無垢な赤ちゃんのように寝ているかと思えば鋭い爪やキバを見せるなど、その姿は、昔の人々にとっては、どうにも奇妙で不可解に感じていたのでしょう。

また、猫はネズミを捕ることから、農家や商家にとって関わりの深い動物でした。雨天や家の運勢、病気は死活問題です。そのため、よく目にする猫の行動で占うように語られるようになったのです。

実際、江戸時代の書物にも「猫が顔を洗う」「死ぬときに隠れる」など、猫特有の行動が記されています。猫は人々にとって身近な動物でありながら、その習性や能力の不可思議さからさまざまな言い伝えが生まれ、地域ごとに形を変えながら受け継がれてきたのでしょう。

まとめ

逆光スクリーム猫

猫に関する都市伝説や言い伝えの中には、単なる不思議な話に留まらず、ある程度は科学で検証できるものがあります。昔の人々が経験から物語化したものでも、実際に「そのように見える」「感じられる」ことも否定できません。

暗闇で光る猫の目や予想を超える身体能力、あるいは環境による見た目の変化などが人の空想力を掻き立て、物語や信仰を生み出してきたのです。

長い時を経ても猫は人間のそばにいて、お互いの距離は時代とともに近づいています。今回、取り上げた例のほかにも、地域ごとの言い伝えが残されています。なんでもかんでも科学的に解明することが正解ではありませんが、昔の言い伝えも、ちょっと深掘りしてみるのも面白いかもしれませんね。

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