猫がなりやすい『遺伝病』4つ 好発する猫種や飼い主が備えておきたいこと

猫がなりやすい『遺伝病』4つ 好発する猫種や飼い主が備えておきたいこと

猫にも『遺伝病』があるのをご存知でしょうか。今回は4つの疾患と後発品種、実際に育てるうえで備えておきたいことについて紹介いたします。

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記事の監修

2009年麻布大学獣医学部獣医学科を卒業。
2015年から横浜市内で妻と動物病院を営み、犬、猫、エキゾチックアニマルの診療を行なっています。
2024年現在、犬10頭、猫3頭、多数の爬虫類と暮らしています。
愛犬家、愛猫家として飼い主様に寄り添った診療を心がけています。
内科(循環器、内分泌など)、歯科、産科に力を入れています。

『遺伝病』とは?

遺伝子

遺伝病とは『親から子へと受け継がれる遺伝子の異常のこと』を指します。

後ほど詳しく紹介していきますが、猫の場合は特定の腎臓病や関節疾患など様々なものがあり、その好発品種も明らかになっています。

最近では遺伝病に対する意識の高まりから、『遺伝子検査』を実施しているペットショップやブリーダーも増えています。

"遺伝子検査済み"と書かれた猫は、まさにこの検査を終えた猫ということです。実際にお迎えする際にはその結果についてのお話もあると思います。検査報告書には次のような判定が書かれています。

クリア

疾患の原因となる遺伝子を持っていない状態です。将来的なリスクはもちろん、子に受け継がれる心配もありません。

キャリア

原因となる遺伝子を片親から1つ引き継いでいる状態です。この場合は該当した猫本人が発症するリスクは低いです。つまり、キャリアでも健康に生きられる可能性が高いということになります。

ただし、子孫を残したい場合は注意が必要です。同じ疾患を持つ猫や、キャリア判定を受けた猫との交配は避けるようにしてください。

アフェクテッド

該当する遺伝子を両親から1つずつ受け継いだ状態です。この場合は当該猫そのものの発症リスクが高まります。中には既に発症している場合もあるため、現状についてしっかり確認を行ってください。

猫がなりやすい『遺伝病』4つ

診察を受ける猫

ここからは、具体的な『遺伝病』を4つ紹介いたします。

1. 骨軟骨異形成症

四肢の関節に骨瘤と呼ばれるしこり(硬い骨の塊)ができる疾患です。中にははっきりと認識できるほどの骨瘤ができないケースもあります。

ただしいずれの場合においても、進行すると関節の動きが悪くなります。その結果、慢性的な関節炎となり痛みを伴うようになります。度合いによっては歩行に支障をきたします。

この疾患の好発品種はスコティッシュフォールド・マンチカン・ヒマラヤン・ペルシャなどです。

特に折れ耳・短足・短頭(いわゆる鼻ぺちゃ)の猫の遺伝子に潜んでいることが多いです。

2. 肥大型心筋症

左心室が通常のものよりも肥大化した状態(分厚く動きが悪くなっている状態)で、うっ血性心不全を引き起こす可能性のある疾患です。

肺に水が溜まって呼吸不全を引き起こしたり、血栓ができるケースもありますが、心雑音のみで無症状のまま天寿をまっとうする猫もいるのがこの疾患の特徴です。

ただし、血栓によって後ろ足に麻痺が出てしまうと予後が悪く、死亡率が高くなってしまいます。

好発品種としては大型種の猫(メインクーン・ラグドール・ノルウェージャンフォレストキャット)とマンチカン、アメリカンショートヘアなどが挙げられます。

基本的に遺伝病は純血種に起こりやすいのですが、この疾患に関しては日本猫、いわゆる雑種でも起こり得ます。

3. 多発性囊胞腎症

腎臓に多数の嚢胞(液体の入った袋状のもの)ができる疾患です。嚢胞によって圧迫を受けた腎組織が線維化し、腎不全を引き起こします。

この疾患の厄介なところは、すぐには発症しないことです。多くの猫が4歳以上で発症するため、予め遺伝子検査を受けていなければ気づくことすら困難なのです。

好発品種はペルシャ猫とペルシャ系統の猫(ラグドールやラガマフィン、ミヌエットなど)・マンチカン・アメリカンショートヘア・スコティッシュフォールドなどです。

4. ピルビン酸キナーゼ欠損症

酵素の一種であるピルビン酸キナーゼが不足していることが原因により、赤血球が破壊される疾患です。慢性的に赤血球が足りなくなることから貧血を引き起こします。

発症してしまった場合は予後が悪く、3か月齢で貧血症状が現れ、その後4歳くらいまでに死亡します。

好発品種は中東系の猫(アビシニアン・ソマリ・シンガプーラ)・ノルウェージャンフォレストキャット・ベンガル・メインクーンなどです。

飼い主さんが備えるべきこと

猫と調べもの

具体的な疾患や好発品種などを知ってしまうと、その猫種の猫を迎えるのが不安になるかもしれません。でも冷静になってみてください。元気に暮らしている猫のほうが多いですよね。

そう、遺伝病は正しく知って恐れることが重要なのです。ここからは、飼い主さんに備えてほしいことを紹介していきます。

『遺伝子検査』を実施している場所から迎える

純血種との暮らしを検討している場合は、遺伝子検査を実施しているショップやブリーダーからお迎えすると安心です。

かかりつけ医を探す

人間同様、かかりつけ医と呼べる動物病院があると安心です。まずはワクチン接種などをきっかけに受診をし、親身になってくれるかどうか・説明はわかりやすいか・院内は清潔かなどをよく観察してみましょう。

また既に先住猫がお世話になっている病院があれば、『キャリア』や『アフェクテッド』の猫を迎えた旨をさりげなく話しておくと良いでしょう。

具体的なアドバイスや、受診が必要になる基準などを教えてもらえると思います。

よく様子を見てあげる

何か該当する疾患がある場合、もしくはリスクが高い場合には、注意深く様子を見てあげてください。

気になる症状が出た場合はメモを残したり、動画の撮影をしておきましょう。これが診察において非常に役立ちます。

定期的に健診を受ける

様子を見守りつつ、定期的に健診を受けておくことも安心材料に繋がるでしょう。

なお余談ですが、ペット保険に加入する際は注意書きをよく読むようにしてください。恐らく『キャリア』の判定がある場合はその疾患に関しては保障の適用外になっているケースが多いです。

環境を整える

例えば関節の病気の場合、肥満にならないように注意する・猫が遊ぶ空間は絨毯を敷くなど、環境を整えることも重要です。

腎臓系の疾患であれば新鮮な水を置き、いつでも飲めるようにしてあげてください。猫は元々水分摂取が苦手なため、飲みたくなる環境作りが大切です。

予めリスクがわかっていれば"如何にして発症させないか"という視点を持つことができます。ほんの少しの配慮や工夫によって、楽しく健康でいられる時間を延ばしてあげましょう。

まとめ

幸せな日常

遺伝病は"猫ブームの裏に潜む闇"でもあります。人気が急上昇している時期や、特定の猫種が爆発的な人気を誇りはじめた時が最も危険なのです。なぜかと言うと雑な交配が起こりやすいからです。

よって純血種をお迎えする際は、"どこから迎えるか"が重要になります。例えばブリーダーからであれば、両親に合わせてもらうと良いでしょう。善良なブリーダーであれば応じてくれるはずです。

繰り返しになりますが、遺伝病は忌み嫌うべき存在ではありません。"正しい情報を得て備えること"が大切です。

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