1.遺伝的要因

ラグドールは温和でおだやか、シャムは感情表現が豊か、アビシニアンは活発など、猫種別の性格の傾向は遺伝の違いも示しています。これらは親の血統を選択して繁殖されることにより、特定の気質が固定されてきた結果です。
親猫から遺伝されるのは気質そのものではなく、脳の働き方を決めるタンパク質の設計図です。これによって物事にどう反応するかが決まるので、結果として気質としてみられるようになるのです。
遺伝の影響は、環境を受けにくい子育てに関与しない父猫と子猫の気質の関係を調べた研究でも示されています。ただし、まったく父猫のコピーにはならず、親の気質が子猫の行動の違いに関係しているという結論になります。
2.生活環境の影響

成猫になってからの飼育環境の豊かさ(遊び場・隠れ場所・人との関わり)は性格の安定度に影響します。静かで暖かく安全で自由がある環境は、優しい猫をつくりますが、ストレスが慢性化するような環境では、攻撃性や引きこもり傾向が強まることがあります。
野良猫の多くが人間を見ると逃げ出すように、飼い猫であっても生活の中で飼い主とのふれあいがなく、単に食事だけが用意されているような環境では、遺伝的に人懐こい素質があっても、人への親和行動は弱くなりやすいことがあります。
一方、そのような猫であっても、穏やかな家庭で人とふれあいながら飼われていると、次第に心を開き、優しくゆったりとした猫になることは多くの人が知っています。環境は性格の形成に大きく影響するのです。
3.幼少期の経験

生活環境の中でも、特に猫の生後2〜7週齢は「社会化期」と呼ばれる極めて重要な時期です。この短い期間で得た経験は、その後の行動パターンを大きく左右します。
子猫の脳は、外部からの刺激に対してとても敏感です。この時期に人と頻繁に触れ合って、安心できる空間で育った猫は、人に対して友好的で穏やかな性格になりやすく、逆に孤立した環境や、騒音・恐怖を伴う体験が重なると、警戒心が強く臆病な性格が作られます。
社会化期を過ぎると、神経回路の柔軟性は急速に低下して、脳の回路をつなぎ変えることが難しくなります。つまり、その後の経験では性格の修正がしにくくなるのです。初期の経験は、猫の一生の気質の土台となるのです。
4.恐怖や衝撃によるトラウマ

猫は経験を通して安全か危険かを学習するため、ときに、過去に受けた強い恐怖や衝撃によるトラウマが性格に影響することがあります。怖い思いをした体験は長く記憶に残り、行動や反応の傾向として出てくるからです。
たとえば、落雷や近隣での花火など、予期せぬ大きな音に驚いた経験がある猫は物音に敏感になったり、人に乱暴に扱われたりした経験がある猫が、ほかの人に対して強い警戒心を持つことがあります。
これらは自分を守るための学習ですが、結果として、あらゆることに臆病になる、特定の状況で攻撃的になるなど、その猫の性格として残る場合もあります。
ただし、トラウマは時間の経過やその後の安心できる環境で少しずつ和らぐこともあり、必ずしも永久的なものとはいえません。
5.健康状態の影響

慢性的な痛みや不調を抱える猫は、体を守るために怒りっぽくなったり、逆に極端におとなしくなりすぎたりすることがあります。原因としては、痛みによるものですが、一部は性格として定着してしまうことがあります。
また、子猫の頃に母猫の母乳不足など栄養不足になると、脳や神経系の発達に影響するケースがあります。
脳の発達のためには多くのエネルギーや栄養素が必要なので、適切な時期に栄養不足になると神経回路の発達にも影響し、結果的に興奮しやすい、驚きやすい、落ち着きにくいといった行動傾向が見られる場合があります。
健康状態は性格形成にも関係しているので、急に性格が変わった場合には、身体的要因も考えられるのです。
まとめ

人間の心理学における「性格」とは、思考と感情、行動の一貫したパターンのことで、人間に共通して見られる一方で、完全に固定されたものではなく、経験や環境によって変化するとされています。
この概念は猫にも当てはまります。近年では、臆病・社交的・攻撃的といった個体差が科学的に確認されており、それらは遺伝や生育環境などの影響を受けることがわかっています。
ただし、猫の性格は飼い主が直接行動を見て、主観的に判断することがほとんどです。攻撃性が強かったり、必要以上におびえたりする場合には、獣医師に相談することをおすすめします。
冷静な第三者として専門的な視点から診てもらうことで、それが単なる性格なのか、治療やケアが必要な問題なのかを見極めることができるでしょう。