1.猫は指先だけで体を支えて歩く

猫は体重を指先の肉球だけで支える「指行性(しこうせい)」の動物です。猫の「指先」とは、肉球がついている指の先端部分のことをさします。
指行性の歩き方は静かで正確な移動を可能にし、野生の猫科動物が狩りや危険回避で必要としてきた進化的な工夫でもあります。そんな構造のおかげで、猫は体を軽やかに動かすことができ、ジャンプや方向転換もスムーズに行えるのです。
しかも、猫は必要に応じて爪を出して踏ん張ることができます。たとえば高い場所に飛び乗るときや、床で急に止まるときなど、指先だけで支える体重をしっかり地面に伝えるために爪を出すのです。
普段は爪を引っ込めて静かに歩き、必要なときだけ爪を使うといった巧みな切り替えも、指行性ならではの特徴でしょう。
2.肉球が支える静かな歩行

猫の肉球は、歩行時のクッションの役割を果たすとてもやわらかい組織です。肉球は厚い皮膚とやわらかい脂肪、結合組織で構成されており、地面の凹凸に合わせて沈みながら衝撃を分散します。それにより、着地の衝撃を吸収し、指先にかかる体重を支えることで、猫は軽やかに歩くことができるのです。
肉球の微妙な動き方を肉眼で観察するのは難しいですが、スロー動画で歩く様子を撮影すると、着地の瞬間にクッションの働きをしていることがよくわかります。
3.足跡は一直線に並ぶ(狐歩き)

猫は、後ろ足が前足の足跡を踏むようにそっと歩きます。この歩き方は「狐歩き」と呼ばれ、体のバランスを崩さず、静かで正確に移動できる方法です。
足跡が一直線に並ぶことで、接地面が少なくなり、ほとんど音を立てずに歩けるのも特徴です。さらに地面への接触が最小限になることで、痕跡やニオイも極力残さず移動できるとも考えられています。
この「狐歩き」は、野生本能の名残ですが、現代のイエネコにも自然に残っている動きです。狭い場所や障害物の多い場所でも、猫がスムーズに歩けるのは、この優雅な動きに秘密があるともいわれています。
4.状況に応じて歩き方を変える

猫は状況に応じて歩き方を変えています。静かに忍び足のように歩くのがデフォルトですが、遊んでいるときや走るとき、警戒しているときには、体全体を使った歩き方になり、動物学ではそれぞれの歩き方に名前がついています。
ウォーク(walk/狐歩き)
後ろ足を前足の足跡の上にそっと置くような歩き方。猫の基本の歩行です。
側対歩
ウォークがやや速くなったときにこう呼ばれます。左右の足を同じ側ずつ動かす歩き方です。
トロット(速歩)
中速でリズムよく歩く歩き方。軽い足取りで軽やかに歩く様子から「楽しそうにしてる」「るんるん♪」などと表現されることがあります。遊びや探検時にも見られます。
ペイシング(側対速歩)
左右の足を同時に動かす歩き方。狩りや遊びのときに、獲物やおもちゃに気づかれないように忍び寄る動作のことです。
ステルス歩行
忍び足のように静かに近づくときの歩き方。じゃれる前や獲物に接近するときに使います。
ギャロップ
全力で走るときの跳ねるような歩き方です。
なお、特に子猫に多くみられる「やんのかステップ」は、ステルス歩行やペイシングの警戒・威嚇版と考えられるでしょう。
まとめ

猫の歩き方にはバリエーションがあり、これらは体のしくみと野生の本能が巧みに組み合わさった結果とされています。
猫はこのように豊富な歩き方の中から、その場に応じた歩き方を自然に選び、使いこなしているのです。イエネコでも、遊びや段差の多い場所、同居猫を遊びに誘うときなど、日常の中であらゆる歩き方を駆使していることがわかります。猫の歩き方を見ていると、愛猫が今何をしようとしているのか、気持ちのヒントとなりますので、観察してみてくださいね。