猫の『お腹がたるんでいる』意外な理由3つ 担っている役割や肥満との違いを解説

猫の『お腹がたるんでいる』意外な理由3つ 担っている役割や肥満との違いを解説

愛猫のプヨプヨしたお腹を見ると「太りすぎかな?」とすこし心配になることもありますが、実は、猫のお腹のたるみは必ずしも心配するものとは限りません。猫のお腹がたるむ理由は複数あり、猫の下腹部にある「皮膚のだぶつき(たるみ)」は、身体機能としても重要な役割があるのです。今回は、そのお腹のたるみについて解説します。「肥満とは違うの?」の疑問にもお答えします。

SupervisorImage

記事の監修

2009年麻布大学獣医学部獣医学科を卒業。
2015年から横浜市内で妻と動物病院を営み、犬、猫、エキゾチックアニマルの診療を行なっています。
2024年現在、犬10頭、猫3頭、多数の爬虫類と暮らしています。
愛犬家、愛猫家として飼い主様に寄り添った診療を心がけています。
内科(循環器、内分泌など)、歯科、産科に力を入れています。

猫のお腹がたるんでいる理由3つ

お腹のたるんだ猫

猫のお腹のたるみは、ひとつの理由だけで起こるものではありません。生まれ持った身体構造によるものから、成長過程や生活習慣の影響まで、いくつかの要因が関係しています。

ここでは、猫のお腹がたるんで見える主な原因を3つに分けて解説します。

1.生まれつきの身体構造

猫のお腹がたるんで見える最も一般的な理由は、生まれつきの身体構造である「プライモーディアル・ポーチ」、別名ルーズスキンです。これは特に太ってもいない猫でも見られる特徴です。

これはお腹の皮膚と脂肪がすこし余裕をもって垂れ下がる構造で、内臓を守るクッションとしての役割や、運動時に体を伸び縮みさせる動きを助ける機能があります。

ほかの捕食動物でも、おなかの内臓を守る必要性や運動時の身体伸縮はあります。しかし、猫は特に身体全体が柔軟で前後の伸縮に加えて「ひねる動き」ができることや、木の上に駆け登れる俊敏性もあることから、プライモーディアル・ポーチは、イエネコをはじめライオンやトラなどの猫科動物に顕著に見られるのです。

2.避妊・去勢手術後の体重変動

避妊や去勢の手術をした後はホルモンバランスが変化して、基礎代謝が低下しやすくなります。しかし、以前と同じ食事量を与えていると体重が増えやすく、もともとあるプライモーディアル・ポーチの部分にも脂肪が溜まっていきます。

特に避妊・去勢は生後半年くらいに行われることが多いため、子猫を飼っている家庭では、食べ盛りの時期に手術をすることも多いでしょう。食欲が落ち着く前に基礎代謝だけ低下することで、太りやすい状態になってしまうため、食事管理がとても大切です。

また、一度太った経験のある猫が短期間で痩せると、皮膚が余ってしまい、お腹のたるみが目立つこともあります。

3.加齢による皮膚弾力や筋力の低下

猫も加齢によって皮膚の中にあるコラーゲンが少なくなり、皮膚の弾力が弱くなっていきます。コラーゲンは皮膚を引き締める役割を持つタンパク質で、これが減少すると皮膚が伸びやすくなります。

あわせて筋肉量も減少するため、内臓を支える力が弱くなります。人間も年を取ると下腹部が出やすくなるように、四つ足の猫は、重力によってお腹が下がってくるのです。

ただし、猫にはプライモーディアル・ポーチがあることから、見た目の変化には個体差が大きい傾向にあります。もともとの体の構造でお腹がたるんで見えていた個体は、年齢を重ねても目立ってたるんだようには見えないこともあります。

お腹のたるみが担っている役割とは?

ケンカする猫

猫のお腹のたるみである「プライモーディアル・ポーチ」の役割についてもう少し詳しく見てみましょう。

猫の身体は柔らかく、ほかの動物と比べても自在に動かすことができます。走る、ジャンプする、思い切り体を大きく伸ばすといった動きでは、皮膚に余裕があることで体の可動域が広がり、動作が制限されにくくなります。

特に猫は狩りやケンカをするときは、これらの動き以外にも、自分の急所であるお腹をさらす体勢になることがあるため、お腹のたるみは内臓を守るクッションとして働きます。

ただし、このたるみの正確な役割については、まだはっきりとはわかっていないため、将来また新たな仮説が出る可能性もありそうです。

正常なたるみと肥満の違い

お腹を触られる猫

正常なたるみと肥満を見分けるポイントは、「たるみの場所」と「触ったときの感触」です。

正常なたるみは、後ろ足の付け根周辺に限定されていて、歩いたり走ったりすると左右に揺れます。このたるみは皮膚だけなので、触るとふにゃふにゃと柔らかく、中身の充満感はありません。

標準体型であれば、上から見ると腰にくびれがあり、横から見るとお腹は引き締まっています。また、薄い皮膚越しに肋骨を触って確認することができます。

一方、肥満の場合は、胸から下腹部にかけて全体が丸く膨らんでいます。たるみを触ると脂肪が詰まっていてやや硬く感じ、上から見たときには腰のくびれがなく、首からしっぽの付け根までが曲線を描いています。さらに脂肪に覆われているため、触れても肋骨まで届かず、首周りや足の付け根にも脂肪がついているのが特徴です。

肥満の方が柔らかいイメージがありますが、プライモーディアル・ポーチの場合は、正常なたるみの方が皮だけなので柔らかい触り心地になります。

まとめ

お腹のたるみがある痩せた猫

最近のキャットフードや猫用おやつは、とてもおいしく食いつきよく作られているため、食事をしっかり食べている猫の飼い主さんは、肥満の心配をしているかもしれませんね。しかし、猫のお腹のたるみは、「プライモーディアル・ポーチ」というネコ科特有の身体構造からきているのです。

いわば、身体の柔軟性や内臓保護などに必要な「たるみ」で、健康的な猫でもお腹がたるんでいることは珍しくありません。

ただし、たるみの範囲が広すぎる場合や、触ったときに脂肪の厚みを強く感じる場合は、肥満の可能性も考えられます。たるみの範囲や触ったときの感触、全体的な体型などをあわせて確認しましょう。

スポンサーリンク