喉を鳴らす動物と鳴らさない動物

喉を鳴らすのは、猫だけだと思っている方が多いかもしれません。実は、猫以外にもウサギ、リス、モルモット、マングース、クマ、アナグマ、キツネ、ハイエナ、ワオキツネザル、ゴリラなど、猫ほどはっきりとしたゴロゴロ音ではないにしろ、ゴロゴロのように聞こえる音で喉を鳴らす動物は案外たくさんいるのです。私たち人の”いびき”の原理も、猫が喉を鳴らすのと同じような原理だという説もあります。
ところで、猫(イエネコ)が属しているネコ科の動物ならみな喉を鳴らせるかというと、これがそうではありません。ネコ科には、イエネコ系統をはじめ8つの系統がありますが、ヒョウ系統に属している大半の動物(ヒョウ、ライオン、トラ、ジャガー)は、喉をゴロゴロと鳴らせず、代わりに低く太い声で吠える(咆哮する)ことができます。
この違いは、咽頭にある舌骨に原因があると考えられています。猫のように舌骨が完全に骨化していると喉を鳴らせますが、骨化が不完全で柔らかい舌骨だと、喉を鳴らせずに咆哮できるようになるのです。
このように、猫が喉を鳴らす仕組みについては少しずつ解明が進んできていますが、猫が喉を鳴らす理由については、いまだに議論が続いています。次章では、猫が喉を鳴らす理由として有力だとされている4つの説をご紹介します。
猫が喉をゴロゴロ鳴らしているときの理由

1.甘えている
元々喉を鳴らすのは、母子間におけるコミュニケーションの手段でした。飼い猫は野生で暮らす動物とは異なり、成長しても飼い主という母猫に相当する存在がいるため、いつまでも子猫気分が抜けきれていない面があります。
そのため子猫時代はもちろん、成長した後も飼い主さんに甘えたり、うとうととしたり、満腹で気持ちよくくつろいでいるときなど、安心してリラックスしているときに、喉を鳴らすことが多いです。このように機嫌が良い時のゴロゴロは、周波数が25Hz前後の低音です。
2.ご飯を要求している
猫は、「お腹すいたよ」とご飯を要求するために喉を鳴らすこともあります。甘えている時よりも高い、120Hz前後の高周波成分が含まれることがあるとされています。そのため、聞いた人に切羽詰まった印象を与えると言われています。
特に、以前喉を鳴らしたら飼い主さんからご飯をもらえたという経験をしたことのある猫は、その後もご飯の要求サインとして、喉を繰り返し鳴らすようになると考えられます。
3.不安な気持ちを紛らわそうとしている
中には、大嫌いな動物病院の診察台の上で喉を鳴らす猫もいるようです。自分の不安感を紛らわせ、落ち着かせるために喉を鳴らすのだろうと考えられています。
一般的に、猫や犬はストレスを感じている時に、ストレッサーとなる相手や自分自身を落ち着かせるために、カーミングシグナルと呼ばれるサインを発します。猫が喉を鳴らすのも、カーミングシグナルの一種だと考えられているのです。
なお、ストレスを感じているときのゴロゴロは、40Hz前後の周波数が多いと言われています。
4.体の痛みを和らげようとしている
猫がケガや病気で体に痛みを抱えている時に、痛みを和らげようとして喉を鳴らす場合もあると言われています。この場合のゴロゴロは、猫がリラックスしているときのゴロゴロと同じ25Hz前後の周波数です。
人は、神経痛や筋肉痛の緩和や疲労回復を目的に、低周波治療を行うことがあります。この治療に用いられるのが、25Hz前後の低周波なのです。猫は、自ら低周波を発生させて治療しているのかもしれません。
そのため、低いゴロゴロ音で喉を鳴らしている時に、「リラックスしているのだな」と決めつけず、体調不良の兆候が見られないかを確認し、必要に応じて診察を受けましょう。
成長したら喉を鳴らすことが減ったけど大丈夫?

「子猫の時にはよく喉をゴロゴロ鳴らしていたのに、成長したらあまりしなくなった」と心配している飼い主さんがいるかもしれません。「一緒にいてもリラックスできなくなったのか」とか、「もう愛されていないのかも」などと、寂しくなるかもしれません。
しかし多くの場合、ゴロゴロと喉を鳴らさなくなるのは、猫が成長した証だと考えられています。もちろん、高齢になっても子猫のように喉を鳴らす猫もいますが、成長して自立心が芽生え、昔ほど甘えなくなる猫も多いのは事実です。
また、単に音が小さくなっただけというケースもあります。いずれにしろ、特に元気がない、様子がおかしいなどの、病気を疑わせるような症状がなければ、特に心配する必要はないでしょう。
まとめ

同じ哺乳動物の猫と人は、体の構造や生体の仕組みで似ている点も多いですが、異なる部分もあります。猫と直接会話ができれば、「どうして喉を鳴らしているの?」と聞くこともできますが、それができない以上、私たち飼い主が愛猫の気持ちに寄り添う努力をする必要があります。
よく喉をゴロゴロ鳴らしてくれる場合も、あまり鳴らしてくれない場合も、お互いの愛情を信じて、楽しく仲良く暮らしていきましょう。