1.毛づくろい

猫がビックリしたとき、最も表れやすいのが毛づくろいです。
毛づくろいには本来、「清潔感の維持」、「体温調節」、「仲間猫とのコミュニケーション」といった役割がありますが、クサクサした気分を和らげる「リラックス効果」も含まれています。
たとえば、キャットタワーから誤って落下し、バランスを崩して着地すると、「おっかねぇ~!」といった感じで、猫は唐突に脇腹の辺りや後ろ脚を毛づくろいし始めます。いつもの毛づくろいと違うのは、気休め程度にほんの一瞬で終わる点です。
上記の猫の行動は、専門用語で「転位行動」と呼ばれ、驚いたり、失敗したりしたとき、乱れた気持ちを鎮めるための反応です。猫だけでなく、犬や馬、人間などの哺乳類全般に見られる行動と言われています(人間の場合、頭を掻く、鼻を触る、爪を噛むなど)。
2.爪研ぎ

毛づくろいに次いでよくあるのは、爪研ぎです。
爪研ぎもまた、毛づくろいのように猫のルーティンのひとつで、「狩りのツールとしてのお手入れ」、「ナワバリを誇示するマーキング」といった特徴を持っています。
実は、驚きや何かのミスで動揺した際にも、猫は気分転換やストレス解消のため、爪研ぎすることがあります。
一例を挙げると、突然、ご近所から車のクラクションが聞こえてきたときです。予期せぬ物音に驚いた愛猫は、ちょうど目の前にあるソファーをバリバリッ。爪研ぎ禁止のソファーですが、とっさの「転位行動」なので、飼い主さんも文句は言えません。
転位行動時の爪研ぎは、毛づくろいと同様に、気が済んだらすぐに終わります。怒ってしまうと、転位行動がさらに発展しかねません。飼い主さんは、罪なき愛猫のことは大目に見てあげましょう。
3.あくび

最後の3つ目は、あくびです。
人間にとってあくびは眠たいときのサインですが、猫の場合は、想定外の出来事が起こったときのセルフケアの要素も持ち合わせています。
典型的なのは、愛猫が寝ている場面です。
あまりのカワイイ寝姿に、飼い主さんがつい触ってしまうと、パッと目の覚めた愛猫が、ひとしきり「くわぁ~」と大あくびします。
一見すると、ただ眠たいだけ、と思うかもしれません。ところが、このあくびには、愛猫なりの違和感が潜んでいる可能性もあります。そのときの気持ちを表現すれば、「心地よく寝てたのにいきなり起こされてちょっとイヤな感じ…」です。
睡眠中のトラを起こしたら、間違いなく悲惨なことになりますが、愛猫は根っからの飼い主さん想いなので、噛みつかずに、生あくびで小さなストレスをうっちゃります。
フランスには「寝ている猫を起こすな」という古いことわざがあります。愛猫の安眠妨害は、古今東西で罪深き行為です。
もし愛猫が驚いたり、失敗したりして、毛づくろいや爪研ぎ、あくびなどを始めたら、「あっ、例のやつだな…」と判断し、落ち着きを取り戻すまでやさしく見守ってあげてください。
まとめ

ちょっとしたストレスを感じたとき、猫は気持ちをなだめるため、「転位行動」を始めます。
今回は、日常的によく見られる転位行動として、「毛づくろい」、「爪研ぎ」、「あくび」を挙げました。
転位行動の特徴は、短時間で終わり、さっさと次の行動に移ることです。猫特有の切り替えの早さは、クヨクヨと落ち込みがちな私たち人間にはとてもマネできません。
転位行動中の愛猫は、もっぱら自分のことに集中しています。むやみに手を出すと、攻撃の対象になりかねないので、飼い主さんはそっとしておいてあげましょう。