猫を苦しめる『パンドラ症候群』とは?原因や、この病気を疑うべき症状などを解説

猫を苦しめる『パンドラ症候群』とは?原因や、この病気を疑うべき症状などを解説

愛猫が何度もトイレに行ったり、血尿が出たりすると心配になりますよね。検査で異常が見つからないのに症状が続くと「どうして?」と不安になる方も多いでしょう。その裏に隠れているかもしれないのが、ストレスが引き金となる「パンドラ症候群」です。心と体が深く関わるこの病気について、原因や見逃したくないサインをわかりやすく解説します。

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記事の監修

2009年麻布大学獣医学部獣医学科を卒業。
2015年から横浜市内で妻と動物病院を営み、犬、猫、エキゾチックアニマルの診療を行なっています。
2024年現在、犬10頭、猫3頭、多数の爬虫類と暮らしています。
愛犬家、愛猫家として飼い主様に寄り添った診療を心がけています。
内科(循環器、内分泌など)、歯科、産科に力を入れています。

パンドラ症候群とはどんな病気?

トイレに入る白黒猫

猫の飼い主さんのあいだで少しずつ知られるようになってきたのが「パンドラ症候群」という病気です。

これは膀胱炎や尿路疾患などの排尿トラブルが、単に細菌や結石などの物理的な原因だけではなく、強いストレスや生活環境によって引き起こされることを指します。つまり「心の不安」が「体の病気」として現れてしまうのが特徴なのです。

「パンドラの箱」という神話にちなんで名づけられた理由は、一つのきっかけで多くの症状があふれ出すように見えるからです。

たとえば、病院で検査をしても明らかな病原菌や結石が見つからないのに、猫が何度もトイレに行く、血尿が出る、といった状態が続くことがあります。これは飼い主さんにとってとても不思議で心配事の一つとして軽視できないものです。

パンドラ症候群の原因と考えられる要素

腕組みをして考えるトラ猫

最大の要因は「ストレス」とされています。猫は環境の変化に敏感で、ちょっとしたことでも心が不安定になりやすい動物です。

引っ越し、新しい家族の登場、大きな音のする工事、飼い主の生活リズムの変化など、私たち人間にとっては些細に思えることでも猫にとっては大きな負担になり得ます。

猫の体そのものに直接的な異常がなくても、ストレスが長引くと自律神経が乱れ、膀胱の働きや血流に影響してしまうのです。

また、運動不足が続くことや刺激のない退屈さも隠れたリスクになります。完全室内飼いで遊ぶ機会が少ない猫は、ストレスをため込みやすい傾向があります。

症状と早期に気づくためのポイント

キャットタワーの中の猫

パンドラ症候群を疑うサインはいくつかあります。代表的なのは頻繁な排尿、血尿、トイレで長くしゃがみ込む姿、排尿時に鳴き声をあげるなどが挙げられます。中には何度もトイレに行くのにほとんど尿が出ないケースもあるようです。

これらは単なる膀胱炎や尿路結石と同じように見えるため、素人判断では区別が難しいものです。

大切なのは「繰り返す」「原因がはっきりしない」という特徴に気づくこと。病院で検査しても異常が見つからないのに症状が続く場合、パンドラ症候群の可能性を考える必要があります。

飼い主さんができることは、まず早めに動物病院を受診することにつきます。そして再発を防ぐために環境を整えることです。

静かで落ち着ける寝床や隠れ家を用意する、上下運動できるキャットタワーを置く、一緒に遊ぶ時間を増してあげましょう。猫の「安心」と「楽しみ」を満たしてあげることが一番の治療になります。

まとめ

イカ耳で機嫌の悪いハチワレ猫

猫のパンドラ症候群は、検査で原因が見つからないのに排尿トラブルを繰り返す、不思議でやっかいな病気です。

その正体は、実はストレスによる心と体のつながりから起こるもの。だからこそ治療は薬だけでなく、安心できる環境づくりや遊びの時間が大切になります。

猫がのびのび暮らせることは病気の予防にもつながりますし、飼い主さんとの絆も深めてくれます。

ちょっとした変化に早めに気づき、穏やかな毎日を守ってあげることが、何よりのサポートになるでしょう。

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