1.甘えたいから…

まず、猫の甘噛みで考えられるのは、飼い主さんに甘えたいから、という理由です。猫にはもともと、子猫時代から甘噛みする習慣があります。甘噛みは、親猫や兄弟猫に対する親しみの表現であり、大切なコミュニケーション手段です。
たとえば、母猫のように慕う飼い主さんからやさしく撫でられると、あまりにも心地良くなって、愛猫は思わず甘噛みしてしまいます。おそらく、子猫時代の戯れの延長のように感じているのでしょう。うっとりした表情が何よりの証拠です。
甘噛みそのものは攻撃的な行為でありながら、その裏側に、実は、飼い主さんへの並々ならぬ好意が隠されている―一見、矛盾するこの行動もまた、猫という不思議で素敵な動物の特性をよく表しているかもしれません。
ちなみに、猫の甘噛みには、甘えたいという気持ち以外にも、「かまって欲しい」「遊んで欲しい」などの要求が込められているケースもあります。
2.狩猟本能に火がついて…

飼い主さんとの楽しいおもちゃ遊びがきっかけで、猫はつい甘噛みしてしまう場合もあります。
猫のおもちゃ遊びと言えば、疑似的な狩りです。いったん狩猟本能に火がつくと、猫は必死になって、獲物(おもちゃ)を追いかけ回します。見た目でもすぐにわかるほど、非常に興奮した状態です。
愛猫がハンターモードに切り替わったら、たとえ飼い主さんの手であれ、獲物に見えます。素早く動くものに反応するのは、猫としての習わしです。おもちゃを操る飼い主さんの手が視界に入った瞬間、「捕まえた!」と言わんばかりに、愛猫は甘噛みします。
飼い主さんの手=おもちゃ(獲物)と認識すると、今後も愛猫の攻撃ターゲットになってしまいかねません。興奮レベルによっては、甘噛みではおさまらず、本気噛みされることもあります。
思わぬケガを避けるためにも、愛猫が強めに甘噛みしてきた時点で、「痛い!」などの声を上げたり、静かにその場を離れたり、飼い主さんは何らかのメッセージを愛猫に伝えてみてください。
もし甘噛みの原因が運動不足だったら、一日に10分程度、数回に分けて、愛猫と遊んであげましょう。ストレスも適度に解消され、愛猫の甘噛み衝動も少しはおさまるかもしれません。
3.いい加減にして…!

最後の3つ目の理由は、愛猫なりの拒否・拒絶の意思表示としての甘噛みです。
いちばんわかりやすいのは、スキンシップの場面です。ときに猫は、撫でられてリラックスしているはずなのに、天気が急変したみたいに、いきなり不機嫌になって、飼い主さんの腕を噛むことがあります。
愛猫が態度を一変させ、何の予告もなしに甘噛みするのは、飼い主さんに触られた場所や撫で方(長さも含む)などが気に入らなかったからです。そのときの愛猫の気持ちは、ズバリ、「いい加減にして!」。スキンシップの継続を断固として拒否しています。
もちろん、スキンシップ中だけでなく、爪切りや耳掃除、シャンプー、抱っこの強要など、苦手な「イベント」を迫られると、言葉の代わりに、猫は甘噛みを通じて「No!」を表明します。
猫の甘噛みは通常、軽く歯を当てる程度で、ケガすることはめったにありません。ただ、本気噛みになると、声が出てしまうほどの痛みと出血は必至です。なかには、あまりの衝撃にショックを受けてしまう飼い主さんもいるかもしれません。
本気噛みのリスクを回避すべく、普段から愛猫をしっかり観察することで、「No!」サインにいち早く気づきましょう。
まとめ

結論から言うと、愛猫の「甘噛み」には、「甘えたい」「狩猟欲に火がついた」「もうやめてよ!」という3つの気持ちが隠されています。
「甘噛み」程度で済めば問題ありませんが、本気噛みになってしまうと、ケガすることもあるので、飼い主さんは見極めが肝心です。「甘噛み」に込められた愛猫の心理を探りながら、そのつど適切な対処を心がけてみてください。