猫も人も命を落としかねない『重症熱性血小板減少症候群(SFTS)』原因や症状、予防法を解説

猫も人も命を落としかねない『重症熱性血小板減少症候群(SFTS)』原因や症状、予防法を解説

今回は、「重症熱性血小板減少症候群(SFTS)」の脅威について、原因、症状、予防策、3つのパートに分けて解説します。愛猫ならびに飼い主さん自身の命を守るために、ひとつの参考として読んでみてください。

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記事の監修

2009年麻布大学獣医学部獣医学科を卒業。
2015年から横浜市内で妻と動物病院を営み、犬、猫、エキゾチックアニマルの診療を行なっています。
2024年現在、犬10頭、猫3頭、多数の爬虫類と暮らしています。
愛犬家、愛猫家として飼い主様に寄り添った診療を心がけています。
内科(循環器、内分泌など)、歯科、産科に力を入れています。

原因はマダニ

草の先端にいるマダニ

「重症熱性血小板減少症候群(SFTS/以下SFTS)」は、人獣共通感染症のひとつで、「SFTSウイルス」を持ったマダニに咬まれることで発症する病気です。

マダニに咬まれるだけでなく、感染した人間や動物の体液や血液の接触で感染する可能性もあります。

実際に、2017年には、「SFTSウイルス」に感染したとされる野外猫に噛まれた女性が、のちにSFTSを発症し、死亡した例が報告されています。さらに、2024年3月、患者から医療従事者(ヒトからヒト)への感染も確認されています。

マダニは主に春から秋にかけて活動的になり、草むらをはじめ、山林や公園、河川敷、自宅の庭、畑など、身近な場所に生息しています。キャンプやハイキング、草刈り、畑仕事になじみのある人にとっては、非常に危険な存在です。

「SFTSウイルス」を媒介するマダニとしては、フタトゲチマダニ、ヒゲナガマダニ、オオトゲチマダニ、キチマダニ、タカサゴキララマダニなどの種類があります。

マダニは、「日本紅斑熱」や「ライム病」、「回帰熱」などの感染症も媒介するので、活発化するシーズンは特に、十分な警戒が必要です。

気になる症状とは?

元気のない猫

SFTSに感染すると、6日~2週間の潜伏期間を経て、以下のような症状があらわれます。

  • 発熱
  • 食欲不振
  • 吐き気
  • リンパ節の腫れ
  • 白血球の減少

SFTSの致死率は高く、猫が感染した場合、重症化した末に、約6割が命を落としてしまいます。特に多い症状は、黄疸です。

一方、人間の致死率は6~30%程度で、上記で挙げた以外にも、頭痛や筋肉痛、意識障害、皮下出血などの症状を伴う場合があります。

いずれにせよ、SFTSは、猫だけでなく、人間の命をも脅かす危険な感染症と言えます。

効果的な予防法とは?

スポットタイプの駆除薬と猫

結論を言うと、残念ながらSFTSの決定的な治療法はいまだに存在しないのが現状です。メインは静脈点滴などの対症療法。愛猫と飼い主さんの命を守るためにも、入念な感染予防対策が欠かせません。

完全室内飼育でも、飼い主さんが外から持ち帰ったマダニによって、愛猫が感染してしまう危険性もあります。

効果的な予防策は、定期的なマダニ駆除薬の投与です。マダニの駆除薬には、錠剤やスプレー、スポットタイプ(背中などに滴下)などがあります。

さらに、万全を期すためにも、飼い主さんは、草むらや河川敷など、マダニが生息するエリアにむやみに立ち入らないことが大切です。何らかの事情で立ち入る際は、長袖や長ズボンの着用を心がけてください。

万が一、マダニに咬まれたところを発見した場合は、つぶしたり、無理に引きはがそうとする行為は禁物です。マダニの体液が皮膚内を逆流し、化膿する原因になる恐れがあります。速やかに病院で診てもらうようにしましょう。

まとめ

マダニと猫

SFTSは、人獣共通感染症であり、マダニを媒介とした「SFTSウイルス」が原因です。

マダニは、3月から11月にかけて活性化し、主に草むらなど、緑豊かな場所に生息しています。私たちにとっても身近な脅威と言っていいでしょう。

現段階では、この感染症に対する効果的な治療法は確立されていません。愛猫への駆除薬の投与はもちろん、草むらなどの危険な場所にあえて近づかないことも大切です。

日頃から予防対策に努めて、愛猫のみならず、飼い主さん自身の命も守ってください。

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