猫はなぜ『猫背』なの?考えられる3つの理由 実は重要な役割を秘めていた?

猫はなぜ『猫背』なの?考えられる3つの理由 実は重要な役割を秘めていた?

「猫背」と言えば、誰もが思い浮かべる猫の身体的特徴です。ところが、なぜそんな不思議な身体つきになっているのか、意外に知らない飼い主さんも多いかもしれません。今回は、猫が「猫背」である理由を3つの視点から読み解いていきます。猫をより深く知るためのきっかけにしてみてください。

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記事の監修

日本獣医生命科学大学卒業。北海道の大学病院で獣医師として勤務。一般診療をメインに行いながら、大学にて麻酔の研究も並行して行う。「動物と飼い主さんに寄り添った治療」を目標に掲げ、日々診療に励んでいます。

1.そもそも骨格が「猫背」仕様

茶トラ猫の後ろ姿

2本足で歩く人間の場合は、スマホやPC習慣、運動不足などで、胸郭が下がり、背中が丸くなると、いわゆる「猫背」と呼ばれます。一方4つ足で歩く猫は、骨格上生まれつきの「猫背」仕様です。その点は人間とは大きく違います。

実は人間と猫の間では、骨の数に明確な差があります。胸椎も、肋骨も、人間が12本に対し、猫は13本です。腰椎に関しても人間よりも2本多く、7本もあります。

骨の数で言えば、人間は約200本、猫は約244本です。全体的に比べても、猫のほうが約40本も多くなっています。骨の数が多いとその分、関節も多くなり骨同士のつながりもスムーズです。猫がデフォルトで「猫背」モードなのは、ここに秘密がありそうです。

さらに人間との違いで際立つのは、肩甲骨と鎖骨の関連性です。人間の鎖骨と肩甲骨は関節で連結していますが、猫の鎖骨は退化していてほとんど機能していません。

しかも関節でつながっていないため、肩まわりを柔軟、かつ、自由に動かせます。猫が狭いところを平気で歩けるのも、鎖骨の「なさ」によるものです。

骨格の構造面で言うと、猫の「猫背」の背景には、骨の数の多さと骨同士の滑らかな連動性、さらに退化した鎖骨が大きく関係しています。

2.「猫背」は狩りに欠かせないシステム

ハンティング中の猫

野生時代完全肉食動物である猫にとって、命をつなぐために日々の狩りは欠かせません。猫の「猫背」は見た目だけでなく、実用性(ハンティング時)の面でも非常に役に立っています。

猫の狩りは主に待ち伏せスタイルで、獲物が接近するや否や、低い姿勢から一気に襲いかかります。最も大事なのはいかに速く獲物に追いつけるかどうか、です。モタモタしているとあっけなく逃げられてしまいます。

そこで大きな鍵を握るのが、「猫背」です。柔らかくてしなやかな身体を丸めて、バネ仕掛けのようにしならせると、驚異的なダッシュ力が生み出されます(時速約50km)。敏捷な動物でも簡単には逃げられないスピードです。

猫は進化の過程で聴覚や嗅覚などを研ぎ澄まし、狩りに最適な「猫背」仕様になりました。かわいらしい「猫背」に、サバイバル・ツールとしての機能性が備わっているのも、猫ならではの魅力・面白さかもしれません。

3.着地の衝撃力を和らげる

ジャンプ中の茶トラ猫

猫はもともと木のうえで暮らす樹上性の動物です。野生時代には木に登ったり、降りたりを繰り返していました。安全の確保、獲物の動向を見極める意味でも、高いところは非常に重要な場所です。みなさんの愛猫がキャットタワーを好むのも、その名残りと言えます。

高所から飛び降りたとき、衝撃を和らげてくれるのが「猫背」のもうひとつの役割です。身体を丸めたうえで着地すれば、フラットな状態で降り立つよりも、身体にかかる負担をはるかに軽減できます。いわば「猫背」は、天然の緩衝材のようなものです。

滑らかに着地できれば、次の行動にも素早く移れます。敵に囲まれていた野生時代には、とりわけ重宝していた能力のはずです。ハンティング時と同じように「猫背」もまた、厳しい環境を生き抜くための理想的な「設計」と考えていいでしょう。

まとめ

窓際で佇む猫たち

本文でも解説したように猫の「猫背」は、厳しい野生生活を生き抜くうえで進化した結果です。独特のダッシュ力あるいは見事な着地力はすべて「猫背」があればこそ。

人が猫に憧れるあまり重度の「猫背」になってしまうと、生活に支障をきたす場合もあります。飼い主のみなさんは、なるべく良い姿勢を保ちつつ、日々灯台のごとく、愛猫を見守ってあげてください。

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