猫がひと口食べるのもNGな『危険な食材』3選 即受診したほうがいい症状も紹介

猫がひと口食べるのもNGな『危険な食材』3選 即受診したほうがいい症状も紹介

猫を飼っている人なら、人の食べものを与えてはいけないことを知っているでしょう。しかし、あえて与えなくても、何かの拍子に猫が口にしてしまう危険は、どこの家庭でも考えられます。そして、危険な食材は猫がたったひと口食べてしまうことで、取り返しのつかない事態を招くことも。特に注意すべき危険な食材と見逃せない症状について解説します。

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記事の監修

2009年麻布大学獣医学部獣医学科を卒業。
2015年から横浜市内で妻と動物病院を営み、犬、猫、エキゾチックアニマルの診療を行なっています。
2024年現在、犬10頭、猫3頭、多数の爬虫類と暮らしています。
愛犬家、愛猫家として飼い主様に寄り添った診療を心がけています。
内科(循環器、内分泌など)、歯科、産科に力を入れています。

たったひと口でも危険な食材リスト3選

チョコレートケーキを狙う猫

猫にとって危険な食材は、ごく少量でも重大な健康被害を引き起こす可能性があります。

人と猫では身体の仕組みが違うことを理解し、猫にとっては危険な食材の取り扱いには、細心の注意を払う必要があります。

1.ネギ類

猫には、ネギ類を与えてはいけないと聞いたことがある人も多いでしょう。ネギ類とは、玉ねぎや長ネギ、わけぎ、ニラ、にんにくなどのことです。香りの強い薬味などですね。

ネギ類に含まれる有機硫黄化合物は、「溶解性貧血」を引き起こします。

溶解性貧血とは、赤血球が破壊され、運ばれるはずの酸素が足りずに体全体が低酸素症に陥る状態です。

有害成分はネギ類を加熱した後も残っているため、調理済みの食材であっても決して安全ではありません。

気を付けたいのは、自ら調理した食事よりもオニオンパウダーやガーリックパウダーを使用した食品です。

特にプレッツェルやポテトスナックなどには、これらの調味料が含まれているケースが多いので猫が口にしてしまうととても危険です。

症状は摂取後1日から数日であらわれます。嘔吐や下痢などの消化器症状、元気消失や食欲不振、さらには呼吸困難などの重篤な状態へと進行する可能性があります。溶解性貧血は重症化すると死に至るケースもあります。

2.カカオ類

カカオによる中毒は、わずか数グラムの摂取でも致命的な状態になる可能性があり、特に注意が必要です。寒い季節においしいココアやチョコレートなどがあげられます。

中毒の原因となる成分は、カカオに含まれる「テオブロミン」と「カフェイン」で、どちらも中枢神経を興奮させる作用があります。

猫の身体はこれらの成分を代謝する能力が低いため、体内に成分が留まることで中毒症状を引き起こします。カカオ含有量の多いダークチョコレートは少量でもかなり危険です。

症状は下痢や嘔吐、多飲多尿のほか、過活動になったり、興奮したりすることもあります。重症化すると興奮状態やけいれんなどの神経症状へと進行します。

心不全や呼吸不全を引き起こして、死亡することもあります。摂取後、早ければ2〜4時間、遅くとも12時間以内に症状が出てくるので突然の変化には注意が必要です。

板チョコやブロックチョコに比べると、生クリームなどを使ったチョコレートスイーツは、猫が口にしてしまう危険が大きくなります。

食後の容器をペロッとなめる危険もあるため細心の注意を払う必要があります。

3.ぶどう類

ぶどうやレーズンは、猫がわずか一粒食べただけでも、深刻な状態に陥る可能性があることがわかっています。

これまでは種子が原因ではないかと考えられていましたが、近年の研究によって、猫の有害な成分は果肉に含まれる水溶性の酒石酸(しゅせきさん)であることが示唆されています。

酒石酸は生の果実だけでなく、加工されたジュースやワインにも含まれています。また、乾燥させているレーズンでは、さらに濃縮された形で毒性が残るため、ぶどう類は全般NGだと考えて良いでしょう。

ぶどう類を口にした猫には、数時間内に嘔吐や食欲不振などの症状があらわれます。

腎臓に深いダメージを与え、急性腎不全による無尿にまで発展する可能性があり、たった一度の摂取でも、取り返しのつかない事態を招く恐れがあります。

なお、ぶどうやレーズンによる猫の中毒の正確なメカニズムは、現在でもまだ研究途上といわれています。安全性が明らかになったわけではありませんので、猫の誤食には十分注意する必要があります。

危険な中毒症状と緊急時の対応

猫診察中

一般的に猫が危険な食材を食べてしまったときの症状は、食後に消化が始まってから起こることが多いため、飼い主さんが誤食に気付かなかった場合には数時間経ってからに発覚することが多いでしょう。

もし、次のような症状があれば、できるだけすみやかな受診が必要です。

  • 激しい嘔吐や下痢
  • 呼吸が荒くなる
  • 心拍数の増加
  • 歩行がふらつく
  • 意識がもうろうとする
  • 急激な元気消失や食欲不振
  • 異常なヨダレ
  • けいれんや発作

このような症状が見られた場合は、落ちついて食べたと思われる食材と量、経過時間を確認し、現在の症状をメモしておきます。

もしあればパッケージ(原材料が書かれているもの)があると診断時の参考になります。そして、動物病院へ直行する前に連絡して状況を説明し、先生からの指示を仰ぎましょう。

応急処置としては、落ち着ける場所で安静にさせることです。猫が隠れてしまうようならケージなどに入れて休ませます。無理に水を飲ませたり、吐かせようとしたりしないでください。

病院へ移動する際は、キャリーケースの中に清潔なタオルやペットシーツを敷き、嘔吐や排泄物で汚れてもすぐ交換できるよう、予備も用意していきましょう。

ふき取り用のウエットティッシュとゴミ袋も一緒に持って行くと移動中でも安心です。

まとめ

お皿のブドウを見る猫

日常のちょっとした油断や、不意に起こる予期せぬ猫の誤食が、愛猫の健康や生命を脅かす可能性があります。気づいたときには、すでに嘔吐が止まらない状態になっていることも考えられます。

危険な食材を避けるためには、知識と意識が不可欠です。「猫には猫の食べ物だけ」を徹底して、食材の保管や調理中や食後の片づけを怠らないようにしましょう。

床に落ちたレーズンや空になったチョコレートケーキの容器なども見落としがちな危険物です。

若い猫は好奇心から、思わぬものまで口にしてしまうことがあります。誤食はいつでも起こり得るため、あらかじめ夜間診療病院も確認しておくとよいでしょう。

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