『ストレス』が引き金になる猫の異変5選 メンタルケアで解決するには?

『ストレス』が引き金になる猫の異変5選 メンタルケアで解決するには?

猫の異変の裏には、ストレスが隠れていることがあります。ストレスは猫の健康にも悪影響があるため、病院の治療や自宅でのケアが大切になってきます。そこで今回は、ストレスだと考えられる猫の変化や飼い主さんが自宅でできるケアについて解説します。

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記事の監修

日本獣医生命科学大学卒業。北海道の大学病院で獣医師として勤務。一般診療をメインに行いながら、大学にて麻酔の研究も並行して行う。「動物と飼い主さんに寄り添った治療」を目標に掲げ、日々診療に励んでいます。

ストレスによる猫の異変5選

飼い主に噛みつく猫

猫はどちらかというとガマンしがちな動物で、ストレスもため込みやすい気質があります。しかし、上手に発散できなかったストレスは、さまざまな形であらわれます。

1.活動量の急な変化

猫のストレスは、活動量の変化として出てくることがあります。

無気力になった場合、これまで好きだった遊びや探索行動に興味がなくなり、長時間同じ場所でジッと過ごすようになります。人でいう「うつ状態」と似ています。

一方、異常に興奮しやすくなるケースでは、ウロウロと落ち着きなく動き回り、夜鳴きや暴れ出したりすることもあります。ストレスによる緊張状態が続いているため、ちょっとしたことでも興奮しやすくなるのです。

もちろん、年齢的に活発な年齢や、季節的な要因で無気力や興奮しやすい時期も考えられるので、ストレスかどうかは見極めが大切です。

このような症状が見られた場合病気が隠れている可能性もありますので気になるようでしたらすぐに病院に相談しましょう。

2.過食や拒食などの食欲の変化

ストレスは猫の食欲に影響を与え、食べても食べても欲しがる過食に陥る、あるいはおやつさえ無視するほどの食欲不振を引き起こします。

ストレスを感じると、体は「戦うか、逃げるか」の選択を迫られます。交感神経が活発になり、ストレスホルモンが分泌されると、すぐに動けるようにするために血圧や血糖値が上がり、消化器系の動きを抑制する場合があります。

一方、猫が不安を紛らわすために、やたらと食べたがる過食傾向になるケースもあります。ストレスホルモンが脳の報酬系に働きかけ、食べることで一時的に快感を得ようとするためで一種の逃走の形として症状があらわれるのです。

3.過剰なグルーミング

猫は頻繁(ひんぱん)に毛づくろいをするものです。しかし、過剰な毛づくろいはストレスによる転位行動かもしれません。ストレスを受けると、毛づくろいの頻度が極端に多くなることがあります。

猫は不安や緊張を感じると、気持ちを落ち着かせようと同じ場所をやたらと舐め続けることがあります。この行動が続くと、毛が薄くなったり、脱毛したり、皮膚に舐め傷を作ったりする可能性があります。

猫はグルーミングをしているとき、脳内から幸せホルモンが分泌されるといわれています。ストレス下の環境内で少しでもリラックスしたいという思いが強くなり、反動で過剰グルーミングとなってしまうのです。

4.攻撃性の増加や隠れる行動の増加

ストレスによっては、穏やかな性格の猫が一転して攻撃的になったり、過剰に警戒心を見せたりすることもあります。

たとえば、触ろうとしたときに唸ったり引っ掻いたりする、家族に対して突然威嚇したり噛みつくこともあります。

また、いつも過ごしていたお気に入りの場所を避けるように、ベッドの下や押し入れなど、狭くて暗い場所に隠れて過ごすようになってしまうこともあります。

このような猫が自分を守るための本能的な反応は、言葉でなだめても止められないかもしれません。猫が自分で安心できると納得しない限りは、ずっと続く可能性があります。

5.排泄の問題

一度トイレを覚えた猫は、基本的にトイレ以外での排泄をしようとしません。しかし、ストレスは猫の排泄行動に大きな影響を与え、トイレの失敗を引き起こす要因の一つとなります。猫の心理状態が直接生理機能にも反映されてしまうためです。

たとえば、トイレ以外の場所での排泄、頻尿、排尿時の鳴き声、血尿などがあげられます。また、ストレスで自律神経が乱れると、腸の動きにも影響して下痢や便秘を引き起こすこともあります。

これらは、泌尿器系・消化器系の病気の可能性もあるため、すぐにでも動物病院での治療が必要です。そして、原因の中でストレスの可能性を示唆された場合には、自宅でのメンタルケアも大切になります。

考えられる原因は?

キャリーバッグの中にいる猫

ストレスによる猫の異変の原因は多岐に渡るため、特定するのはなかなか容易ではありません。しかし、継続的な環境の変化や飼い主との関係性は、大きな影響力があります。

猫のストレスとして考えられる主な原因として次のようなものがあります。

  • 日常のルーティンの変更
  • 飼い主の長期不在
  • 同居猫との関係性
  • 騒音やニオイ
  • 新しい家族
  • 引っ越し
  • 健康問題など

これらは、変化を嫌う猫を不安にさせる要因となるため、継続的にさらされるとストレスを蓄積しやすくなります。

なかでも新しい家族や引っ越しによる環境の変化などは、飼い主でも従来の状態には戻せないことが多いので、実行前に愛猫の変化には十分に留意する必要があります。

高齢猫ほど、変化へ順応するのがむずかしくなるため、特に気を付けてあげるようにしましょう。

飼い主にできる猫のメンタルケア

おもちゃで遊ぶ猫

愛猫の異変が、排泄問題や完全な食欲廃絶などであれば、命にかかわる可能性もあるため、すぐに病院へ行きましょう。

もちろん一過性のものも多いですが、素人判断をせず動物病院に相談しましょう。

家庭内でストレスを感じている猫には、欲求を満たせる環境整備と適切な接し方が不可欠です。最低限、次の項目をチェックしてみてください。

  • 猫のニオイがする隠れ場所を用意
  • 従来通りの規則正しい生活を送る
  • ふれあう時間と放っておく時間を調節する
  • ストレス源を遮断する
  • 食事の工夫をする

まず猫が安心して「休める場所」を作りましょう。猫はニオイが重要なので、これまで使っていた毛布なども与えてください。猫がセンシティブなときには、自分のニオイが一番安心できるからです。

家庭内で変化があったときも、できるだけ従来通りの生活を心がけます。心配して過剰にかまってしまうのも、猫にとってストレスとなることがあります。

ただし、ルーティンとして遊びの時間を設けることはストレス解消につながります。猫の好みに合わせて適度に遊んでから食事にしましょう。消化器系の異常があるときの食事は、獣医師の指示にしたがってください。

これらのケアは、けっして特別なものではありませんが、猫にとってはストレスを軽減して健康的な生活を送ることができる大切なポイントです。

まとめ

頭を撫でられる猫

猫もストレスがたまると、それが引き金となり、通常とは違う行動の変化が見られることがあります。

食欲や活動量の変化、過剰グルーミング、攻撃性の増加、排泄問題などです。これらの異変はストレスがきっかけとなることもあれば、ストレス以外の要因も考えられます。あまり長引かせず、適切なときに獣医師に相談するようにしましょう。

そして、家庭では愛猫のメンタルケアも積極的に取り入れ、安心できる環境を整えてあげるよう心がけましょう。日頃から、愛猫のストレスになりそうな原因を意識しておくと、猫に異変があったときにも気づきやすくなるかもしれません。

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