1.驚異的なダッシュ力を生む「白筋」
猫の足の速さは驚異的です。最高速度は約50kmで、人類最速のスプリンターであっても遠く及ばないとされています。オリンピックの100m走に出場したら、ぶっちぎりの金メダルです。
一流のアスリートを軽々と凌駕(りょうが)する脚力は、猫ならではの身体の構造に要因があります。
特に注目したいのは、後ろ足にある「白筋」の発達ぶりです。「白筋」とは、白い筋繊維のことで、速筋と呼ばれることもあります。わかりやすく言うと、ダッシュやジャンプ時に使われる筋肉です。
この「白筋」と柔らかくバネのようにしなる「背骨を含む関節」を巧みに使って、驚きのダッシュ力が生み出されます。狙われた獲物の立場からすると、あっという間の接近です。一瞬で生死が決まります。
逆に、持久力の要となる「赤筋」(遅筋)の発達はいまいちで、長期戦は苦手な傾向があります。狩りがうまくいかない場合は、深追いせずに、次のチャンスのために体力を温存します。
2.一撃必殺の犬歯
持ち前のダッシュ力で獲物に近づいたら、今度はいかに確実に仕留めるかが問題です。そのとき駆使するのが犬歯で、上と下で2本ずつあります。鋭いクサビのような形状が特徴です。
後方から獲物の首筋を狙って、鋭利な刃物のごとく、犬歯を突き刺します。すると、脊髄を切断された相手はたちまち絶命。
実は、猫の犬歯の根元には鋭敏な神経が集まっていて、センサーのような役割を果たしています。一瞬のうちに相手の急所を探り当てるのも、狩りに特化したこの感覚が備わっているからこそです。
ちなみに、猫の犬歯には縦方向に微かな溝が入っています。「血溝(bleeding groove)」と呼ばれ、獲物の血が歯にこびりつかないようにするための仕組みです。
この点からも、筋肉だけでなく歯の構造もまた、根っからのハンター仕様である、と言えます。
3.待ち伏せ
猫の狩りは短期決戦のように見えますが、獲物が現れるまで、木陰や岩場などで辛抱強く待っていることがほとんどです。
たとえうまく獲物と巡り合わせたとしても、成功するかどうかはわかりません。もし失敗したら、再度、獲物の接近をじっと待つだけです。
この習性は、おうちで暮らすイエネコになっても、根強く残っています。たとえば、多頭飼いの場合、こんな日常シーンがあるはずです。
物陰で待ち伏せした猫が、のんびりくつろぐ同居猫に向かって急に飛びかかる。もちろん、じゃれ合いの一面はありますが、猫なりの狩りのエクササイズと言っていいでしょう。
待つことは、ハンターとしての必須条件です。猫は気長に獲物を待ちます。
まとめ
猫の魅力は、かわいらしさと野性味が矛盾なく同居している点です。狩猟本能は、イエネコになった現在も変わらず受け継がれています。
室内で飼育されている猫たちですが、ネズミや昆虫、鳥類などを見かけるとその本能が発揮されることも。
今回は、ハンター気質としての特徴を3つ挙げました。普段はおっとりタイプの愛猫も、起源をたどれば名ハンターです。
日頃から1回で10分程度、いっしょに遊ぶ時間をつくると、運動不足やストレスの解消につながります。飼い主さん自身も楽しみながら、愛猫の狩猟本能を上手に引き出してみてください。