猫が「自分は相手より弱い」と感じた時のサイン
完全室内飼いが一般的になってきた昨今でも、猫の多頭飼いをしているご家庭では、しばしば猫同士の争いが見られることがあります。
よほどのことがない限りその争いには決着がつきますが、その場合、「自分が相手より弱い」と感じてしまったときには猫はどのようなサインを見せているのでしょうか。
1.自分の体を小さく見せる
自分の負けを認めた猫は、威嚇する時の反対で、自分の身体をできるだけ小さく見せようとします。
身体を縮めてうずくまり、耳を後ろにぺたんとつけ、しっぽを股の間に丸め込んで挟むことで、できるだけ自分の身体を小さくするのです。
2.目をそらす、鳴くのをやめる、お尻を嗅がせる
自分の負けを認めた猫は、自分は敵意を持っていないことを相手に知らせます。
具体的には、「相手の視線から目を逸らせる」「威嚇のために鳴くのをやめる」「相手に自分のお尻を向けてニオイを嗅がせる」というような行動です。
3.体を小さく見せた後、逃走
取っ組み合いの喧嘩をしていて「負けた!」と思った猫は、反撃することをやめて完全降伏を示します。
前述の通り自分の身体をできるだけ小さくし、敵意がないことを相手に伝えます。そして、相手の態度をよく観察しながら、タイミングを見計らって逃げ出します。
4.道を譲る
過去に相手の猫と戦って負けたことのある猫は、たまたまその猫と出会ってしまった場合に、相手に道を譲り、最初から戦う気がないことを示します。
離れた場所で相手の存在に気が付いた場合は、離れた場所に留まり、まるで相手の存在に気づいていないように振る舞うこともあります。
猫が負けを認めるのはこんなとき!
では、猫が相手に対して負けを認めるのはどのようなときなのでしょうか。
相手の方が自分より大きいとき
猫は、体格で強さを図ります。そのため、相手を威嚇する時の猫は、できるだけ体を大きく見せようとします。
毛を逆立てて全身を膨らませ、腰を高く上げ、耳を横に広げ、しっぽも上側に弧を描くようにして大きく見せるのです。
その姿を見て敵わないと感じた猫は、負けを認めて降参します。
相手に対して恐怖を感じたとき
猫は、気迫でも強さを図ります。にらみ合い、大きな声で唸り合うことで、自分の気迫を相手に伝えます。その気迫に押された猫は、負けを認めて降参します。
力で敵わないとき
実際の喧嘩に突入して取っ組み合いに発展した場合は、やはり力の強さで判断することになります。
鋭い爪で引っ掻いたり相手に咬み付いたりと必死に反撃を返しますが、これ以上は無理だと感じると負けを認め、降参します。
以前喧嘩をした際の記憶
顔を合わせただけで負けを認める場合もあります。それは、過去に喧嘩をして負けたという経験からくる判断です。
以前喧嘩をして負けた相手だと気付くと、すぐに「こいつには敵わない」と負けを認め、敵意がないことを表明します。
無駄な争いをしないのが猫流の生き方
鋭い牙を剥き出して威嚇し、俊敏に引っ掻いたり咬み付いたりする猫を、怖いと思っている人は少なくありません。
しかし、猫社会には一定のルールがあり、無駄な争いは回避できるようになっています。無駄な労力を使わず、無駄なケガも避ける。それが猫たちの生きる知恵なのです。
外で暮らしている猫たちは、同じ縄張り内に住んでいる猫とはできるだけ顔を合わせないように行動します。お互いに時間をずらして行動することで、遭遇するのを避けているのです。室内で多頭飼いされている場合は、高さをうまく利用して直接的な接触を避けることもあります。
それでも縄張り争いやメスの争奪戦など、実際の喧嘩に発展しそうになることもあります。その場合も、にらみ合いや威嚇の段階で弱い方の猫が自分の負けを認めることがほとんどです。
そこで争いは止み、無駄な攻撃をしたり無駄に深手を負うような事態は、極力回避しようとするのが、猫流の生き方なのです。
まとめ
名ハンターで、ネズミを捕まえる腕を買われて人に迎え入れられた猫たちは、とても好戦的な動物のように考えている方もいるようです。しかし、猫社会のルールを知ると、私たち人間よりも平和主義者かもしれないと感じたのではないでしょうか。
よく、お腹を上に向けて仰向けに寝そべっているポーズは、降伏を意味していると言われます。しかしそれは、犬の場合の話です。
猫の場合、完全にリラックして無防備に寝ているか、もしくは負けのサインに気付かずに攻撃を続ける相手に対して応戦するための体勢です。つまり、仰向けの姿勢は、猫にとって猫パンチや猫キックで応戦しやすいポーズなのです。
愛猫の降伏のサインに気付かずに追い詰めてしまい、うっかり応戦体勢になっている猫に手を出して反撃されないよう、くれぐれも用心してください。