しっぽは猫の急所
猫にとってしっぽは、お腹と同じように急所です。命に関わる大切な場所なので、むやみに触られると激怒します。
たとえば、信頼関係を十分に築けていないのに、迎え入れたばかりの子のしっぽを触ろうとしたら、パニックに陥るだけです。「多くの猫はしっぽを触られたくない」。そのことを踏まえたうえで、愛猫と接するようにしてください。
猫のしっぽの主な構造は、尾椎(約1㎝。平均的に18~23個連なる)という骨と複数の筋肉、尾骨神経の3つです。しっぽ全体をコントロールする尾骨神経は、付け根部分で他の神経(骨盤、下腹、陰部)などにもつながっています。
ここに何らかの外圧が加わると、排尿や排便が困難になったり、後ろ足が麻痺したり、歩けなくなったりする恐れもあります。まさに「急所」と呼ばれるゆえんです。
猫のしっぽにはどんな役割があるのか、改めて知っておくと、触られたくない理由も納得できるはずです。以下、重要なものを3つ紹介しましょう。
1.バランサーとしての役目
しっぽは、バランス面で猫の驚異的な運動能力を支えています。塀の上などの高所、極端に狭い場所などを淀みなく歩けるのは、しっぽがバランサーとして機能しているからです。イメージで言うと、人間が両手を広げてバランスを保つのと同じかもしれません。
もしケガなどでしっぽを満足に動かせなくなったら、持ち前のバランス感覚を失うことになります。本来自由であるはずの行動に制限がかかるわけで、猫からすればかなりの大打撃です。
2.大事なコミュニケーションツール
猫のしっぽは、とても雄弁です。ピーンと立てたり、不機嫌そうに左右に激しく振ったり、身体にくるっと巻きつけたり、その様子だけでも猫の気持ちを一定レベル推測できます。
もちろん、飼い主さんだけでなく、猫同士にとっても、しっぽは大事なコミュニケーションツールです。しっぽの動きによって、相手の状況を把握し、自分の心理状態をも伝えます。
たとえば、「しっぽ引っ張り外傷(誤ってしっぽを踏むなどが原因)」の影響で、しっぽを動かせなくなると、おしっこやうんちが難しくなる他、感情表現の手段が奪われてしまいます。
人間で言えば、急に話せなくなるのといっしょかもしれません。猫にとってはつらい状況です。飼い主さんもきっと見ていられないでしょう。
3.マーキングに欠かせない
猫は縄張り意識が強く、マーキングするためにしっぽを使います。しっぽの付け根にある「臭腺」をこすりつけて、家具や飼い主さんなど、あちこちに匂いづけ。猫にとっては、日々のルーティンのようなものです。
もちろん、顔のまわりなどにも臭線はありますが、仮にしっぽに不具合が起こると、マーキングの選択肢がひとつ減ってしまいます。本能に基づいた行動だけに、猫の心理的負担は想像以上です。
ちなみに、お尻をやさしくトントンされて喜ぶのは、しっぽの付け根にフェロモンの分泌線があるからです。特に雌猫の場合、刺激されると交尾時のような感覚にとらわれます。
ただし、すべての子が歓迎するとは限りません。好きな子がいたとしても、しつこくやっていると急に不機嫌になるケースもあるので、ほどほどにしておきましょう。
まとめ
かわいらしいしっぽは、いわば、猫の象徴です。同時に、バランス感覚、感情表現、マーキング、という機能的な役割も担っています。
もししっぽに異常があると、これらの定番行動が不可能になり、愛猫に多大なストレスをもたらすはずです。
つい触りたくなるのはわかりますが、「しっぽは猫の急所」と理解し、むやみに触るのは控えておきましょう。