【獣医師が解説】春から秋はSFTS(重症熱性血小板減少症候群)に注意!

【獣医師が解説】春から秋はSFTS(重症熱性血小板減少症候群)に注意!

暖かくなると、マダニが活動的になってきます。マダニはウイルスなどを持っていることがあり、噛まれると重篤な状態になる場合もあります。今回は、近年とくに問題となっているSFTSについてお話します。

SFTSについて

:

2017年7月に、50代の女性が猫に噛まれておよそ10日後に亡くなるという痛ましい出来事が起こりました。

女性は弱った外猫を保護して動物病院へつれていくところでした。

猫に噛まれるまで健康で持病もなく、その後の検査で女性の死因は、猫からのSFTS感染によるものだとわかりました。

SFTS(重症熱性血小板減少症候群)とは

SFTSはSFTSウイルスによる感染症です。

人や動物は主に、SFTSウイルスを持っているマダニに噛まれることによって感染します。

ただ、SFTSがやっかいなのはマダ二に直接噛まれなくとも、SFTSに感染した動物から人へも感染してしまうことです。

そのため、SFTSはズーノーシス(人獣共通感染症)に分類されています。

感染の広がり

SFTSは2011年に中国で初めて確認され、日本では2013年に初の患者報告がありました。

その後は各地で確認されるようになり、主に西日本での報告が多かったのですが、徐々に関東にも広がってきています。

発生状況

2023年10月31日現在で、930名の患者が報告されています。

他のダニ媒介性感染症との違い

ダニによって感染する感染症のことを「ダニ媒介性感染症」といいますが、ダニ媒介性感染症は古くから日本にありました。

日本紅斑熱、ツツガムシ病はその代表例です。

これら2つの感染症は、直接ダニに噛まれることによってのみ発症します。

どちらの感染症もダニに噛まれた数日後から、発熱、発疹がみられ、ダニの刺し口が赤く大きく腫れ上がってきます。

これらの疾患は治療法が確立されているので、致死率は高くありません。

しかしSFTSの場合、有効な治療法がまだないため、対症療法に頼らなくてはならず、致死率は30%に達することもあります。

しかもSFTSの場合にはSFTSに感染した動物に噛まれたり、触れたりしても感染することがあるので、ペットを飼っている人はそうでない人より注意が必要となるのです。

診察中に感染した獣医師や、入院中のペットから感染した動物看護師もいます。

感染しやすい時期

SFTSの患者数は、5月から8月に多くみられるようです。

これは、マダニだけでなく人間の活動も一年のうちで一番活発になるからだと思います。

暖かくなってくると、半袖や短パンなど肌を露出した格好でアウトドアレジャーなどを楽しむ人も増えてきます。

そういった人の活動はダニに噛まれる機会を増やすことになります。

どんなペットが感染しやすい?

ペットでは猫が感染しやすいことが知られています。

犬もSFTSに感染しますが、猫よりは抵抗性があるようです。

猫は致死率が高く、重篤化しやすいという特徴があり、人に感染させるリスクも猫のはうが高くなります。

どんな症状を示す?

人がSFTSに感染すると、一週間ほどの潜伏期間を経て、発熱、全身倦怠感、嘔吐、下痢 下血などの消化器症状を呈することが多いです。

猫の場合も症状は人に似ています。

猫で特徴的なのは、感染して具合が悪くなると多くの場合、黄疸症状(目や口の中が黄色くなる)を示すことです。

SFTSを発症した猫の致死率は60%にも達します。

SFTSに感染しないためには

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まず、飼い猫からの感染を考える前に、飼い主さんが直接マダニに噛まれないようにすることが大切です。

SFTSはマダニに噛まれることによって感染することがほとんどだからです。

動物から人への感染はいまのところまれなケースなので、草むらに入るときには肌を露出した服装はさけて、長袖長ズボンを着用しましょう。

サンダル履きはやめたほうがいいです。

自宅に帰ったら家に入る前に、上着やズボンをよくはらうことです。

血を吸う前のマダニはとても小さくて見つけづらいため、室内に持ち込まないようにすることが重要です。

飼い主さんが持ち込んだマダニが猫に噛みつくことも考えられるので、アウトドアレジャーを楽しんだ後はダニのチェックをしたほうがいいと思います。

マダ二を持ち込んでしまったことも考え、猫には定期的にダニ駆除剤を投与しておくことも予防の助けになります。

ただし、外に出てしまう猫の場合はダニ駆除剤を投与していたとしても、猫同士の接触による感染が起きる可能性があります。

実際、ダニ駆除剤を定期的に投与していた猫からのSFTS感染例もあるため、完全にふせぐことはできないのが現状です。

そのため、飼い猫は完全室内飼育にしたほうが安心だといえます。

室内飼育の猫を公園などで、リードをつけて散歩している方を見かけることがあります。

室内飼いの猫をときどき、外の土や草に触れさせることは、猫の精神安定にとてもいいことだと私は思います。

しかし、春から秋はマダ二のシーズンということも頭に入れておいてください。

自宅に戻ったら、猫の体をブラッシングするなどしてから家に入ったほうがいいでしょう。

まとめ

マダニは自然豊かな場所だけでなく、都会の公園の草むらなどにもひそんでいます。

噛まれても、すぐに気づかないことが多く、血を吸ったダニはそのまま落ちてしまうため、感染して症状がでてもそれがマダニによるものだとわからないことも多いようです。

そのため、医師の診断が遅れてしまうこともあります。

今後はマダ二の存在には十分注意を払ったうえで野外活動を楽しまれたほうがいいと思います。

人の場合50代以降の方は重篤化しやすいとの報告がありますので注意が必要です。

野良猫などでぐったりしている猫を保護して、動物病院に連れてくる方がみえますが、猫を素手で触ったりしないようにしてください。

かなり具合が悪そうにみえても、突然噛んでくることもありますし、SFTSは体液からも感染します。

猫の尿や唾液から人に伝染るので、素手で触ることは避けてください。

動物病院内で感染が広がることも考えられますので、そのような猫を保護した場合はまずは電話で状態を伝えてから行くようにしましょう。

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