ボルトを抑えてぶっちぎりの優勝
陸上の100m世界記録は、2009年の世界陸上ベルリン大会でウサイン・ボルトが達成した9秒58です。時速換算では、約37㎞。自転車を全力で漕いでも追いつけない速さなので、いかにすごいかがよくわかります。
では、同じように、猫ちゃんが100mを走ったら何秒になるのか?みなさんも一度は考えたことがあるかもしれません。
結論から言うと、7秒台です。ただし、走り切れる体力があって、途中で毛づくろいしたり、匂いを嗅ぎ回ったりせず、なおかつ、気まぐれにどこかに行ってしまわない、という条件付きの話になります。
猫ちゃんの走行時の最高速度は約50㎞で、軽くボルト超え。オリンピックに出場したら、ニャンメダル獲得といったところでしょうか。
ちなみに、リクガメは100mを22分で歩きます。
1.スプリントに強い「白筋」が発達している
最高速度約50㎞を生み出す秘密のひとつは、身体のつくりにあります。特徴的なのは、後ろ脚の「白筋」(白い筋繊維)が発達していること。「白筋」は速筋とも呼ばれ、ダッシュやジャンプなどの瞬発系の動きに使われる筋肉です。
「白筋」の発達した猫ちゃんは、いわば、一流のスプリンター。狩りする場合、持ち前の瞬発力を活かし、ここぞ、というタイミングで猛然とダッシュします。
ただ、唯一の弱点は、体力が続かないこと。他のネコ科動物も同様で、持久力に欠けるため、狩りに失敗しても深追いしません。マラソンは苦手なのです。
余談ですが、遅筋である「赤筋」(赤い筋繊維)は、疲労に強く、マラソンや自転車のロングライドなど、有酸素運動に向いています。時間をかけて集団で狩りするイヌ科動物は、この「赤筋」が発達しています。
2.バネのような背骨で爆発的なダッシュが可能に
優れた能力を持っていても、使い方を間違えば、真の実力は発揮できません。猫ちゃんの驚異的なスピードは、独特の走り方にも支えられています。
そのベースとなるのが、柔軟性としなやかさを兼ね備えた身体。とりわけ際立つのは、反り返ったり、折り曲げたり、自由自在とも言える背骨の柔らかさです。
たとえば、ネコ科動物の仲間、チーターの走りが良い見本です。柔らかい背骨の上下運動がバネのように推進力を高め、一気に加速。7~8mの歩幅をキープした状態で獲物に迫ります。
相手からすれば、あっという間の出来事でしょう。最高速度約100㎞、地上最速ハンターと言われる理由は、ここにあります。
ふだんはのんびり屋の愛猫ちゃんも、いざとなったらチーターのように走る。そう考えると、思わず「すごいなぁ」と感心してしまうかもしれません。
3.ライフスタイルがスピードに磨きをかけた
単独で狩りをする野生ネコは、本来、ウサギやネズミ、鳥、カエル、昆虫などが主食です。いずれも逃げ足が早く、手強い相手。協力し合うイヌ科動物と違い、走りや敏捷性など、個の能力を高める以外、成功率を上げる方法はありません。
そうやって、日々獲物と向き合う中で、バネのようにしなる背骨、瞬発力の高い後ろ脚に進化していきました。
自慢の脚力の背景にあるのは、単独での狩りに根差したライフスタイルです。おもちゃでいっしょに遊んでいるとき、ふと感じさせてくれる野性味は、イエネコの祖先、リビアヤマネコから続く進化のたまものと言っていいでしょう。
まとめ
なぜ猫ちゃんは足が速いのか、今回は、身体のつくり、ライフスタイルを中心に解説しました。
まったりお昼寝する姿からは想像できませんが、実は、どんな猫ちゃんもすごいアスリート。そう思って眺めると、ますますいとおしさが増してくるかもしれません。