猫にとって噛むのは自然な行動
猫と犬は、同じ祖先から進化してきた肉食動物で、いずれも人間と一緒に暮らすようになりました。その中で犬は雑食性になっていきましたが、猫は今でも純粋な肉食性を保っています。その証拠に、犬は食べ物を噛み砕くための臼歯がしっかりと残っているのに対し、猫は臼歯が退化して犬歯がとても発達しています。
完全肉食性の猫にとって、狩猟に対する能力や本能は、今も現役のままです。猫の狩猟スタイルは、じっと待ち伏せし、近づいてきた獲物に襲いかかって前足でしっかりと抑え込み、犬歯で喉元を一撃して仕留めるというものです。
つまり、猫にとって「噛み付く」という行為は、狩猟本能から出てくる自然な行動の一つなのです。
猫が飼い主の足を噛んでくる理由
では、猫が飼い主さんの足に噛み付くのは、飼い主さんを獲物だと思っているからなのでしょうか。考えられる理由と愛猫の噛み癖を直す方法をご紹介します。
1.人の手足をおもちゃだと思っている
子猫の頃に、おもちゃを使わずに直接飼い主さんの手や足を使って遊んではいませんでしたか。当時は力も弱く甘噛み程度だったので、そのまま遊ばせてしまう方が多いのです。
しかしこれは、「人の手足はおもちゃとして遊んでも良いものだ」と子猫に学習させてしまう行為なのです。
人の手足をおもちゃと同様に認識して育った猫は、おとなになって力も強くなってくると、楽しくて興奮したあまりつい本気噛みしてしまうことも。
危険な状態になる前に、「人の手足はおもちゃではない」ということを愛猫にきちんと教えておきましょう。
2.要求手段
ご存じの通り、猫は人間の言葉を話せません。そのため尻尾や耳、ひげ、瞳など全身を使って人とコミュニケーションをとろうとしますが、残念ながら人間には、なかなか通じないことも。
そこで猫は人間の気を引くために、たまたま噛み付いたときに人間のリアクションが大きかったことを覚えていて、コミュニケーションの効果的な方法を見つけたと認識してしまうのです。
つまり、何か要求がある時に足に噛み付くことが多いのであれば、愛猫は飼い主さんに要求を伝えるための手段として、最も効果的な方法が足に噛み付くことだと学習してしまったのかもしれません。
3.怒り
猫は、怒りの表現手段として咄嗟に噛み付くこともあります。
例えば、足元にいた猫に気付かずに尻尾を踏んでしまった場合や、足元に来た猫をつい足で撫でてしまい、力加減が強すぎてしまった場合などです。
4.動きと匂いに惹かれる
人と一緒に暮らしている猫にとって、日常生活で実際に狩猟をすることはありません。しかし、今でも狩猟能力や本能が残っている猫にとって、ネズミのような大きさのものが素早く動く姿を見つけると、思わず捕まえたくなってしまいます。
また、猫にとって人の足の匂いはとても魅力的なようです。そのため、目の前で飼い主さんが忙しそうにバタバタと歩いていると、ネズミのような大きさの足首あたりに注目し、惹きつけられて思わず飛びつき、噛んでしまうようです。
噛み癖を直す方法
では、猫の噛み癖を直す方法には、どのような手段があるのでしょうか。もし愛猫が何度も足を噛んできてしまうようなら、一度検討すべきかもしれません。
無視する
飼い主さんの手足をおもちゃだと思っている、遊んでほしい、ご飯が欲しい等の遊びや要求が目的の場合は、一喝したり振り払ったりするよりも無視する方が効果的です。怒って引き離すために大声を出したり抱き上げたりすると、「構ってもらえた!」「遊んでもらえた!」と勘違いし、余計に足を噛むようになるからです。
声も手も出さず、冷静にその場を離れてしばらく別の部屋に行ってしまうような「無視」をすることで、猫は徐々に「足を噛んでも願いは叶わない」と学習し、やがて噛まなくなるでしょう。
狩猟欲求を満たす
飼い主さんの足を獲物に見立てて遊びたがる場合、普段から他の方法で狩猟欲求を満たしてあげることも有効な対策になるでしょう。もちろん、本当にネズミなどを捕まえさせる必要はありません。
毎日15分程度でも良いので、夕飯の前などに猫じゃらし等のおもちゃを使って狩りごっこをしましょう。これで愛猫の狩猟欲求は満たされますので、むやみに飼い主さんの足を狙わなくなるでしょう。
寝室にいれない
一緒の布団で眠っている場合、猫によってはいつも飼い主さんの足元に丸まって眠るという猫もいます。そして朝起きると、朝食の催促として飼い主さんの足を噛むということもよくある話です。
その場合、猫を寝室にいれず、一緒の布団では寝ないようにするというのが最も確実な対策です。ただし飼い主さんがどうしても一緒に寝たいのであれば、愛猫が起きて空腹を訴えるよりも前に起きるようにするしかないでしょう。
常に足元に注意する
猫は普段、爪を隠しているために足音をたてずに歩きます。そのため、足元に来ても気付かないことが多いです。
その場合、気付かずに蹴っ飛ばしたりしっぽを踏んづけたりすることのないように、常に足元には気を配るよう習慣づけましょう。
裸足で歩かない
歩いている飼い主さんの足を見て獲物を連想してしまうのをやめさせるのは、難しいかもしれません。あまりバタバタと歩かずにゆっくりとした動作を心がけると良いのですが、現実的にはそうもいかないでしょう。
室内でも素足にはならずに靴下を履くなどの対策で、猫に足を噛まれる被害を少しは減らせるかもしれません。
まとめ
猫は飼い主さんのことをきちんと認識していることが、科学的にも証明されています。そのため、いくら猫が飼い主さんのことを噛んでも、それは決して獲物と勘違いしているわけではありません。
飼い主さんの足の動きを見て本能的に飛びついてしまっていたり、そもそも飼い主さんの手足はおもちゃと同じだと認識していたり、要求を伝える最適な手段だと思っていたりするのです。
愛猫は、飼い主さんとの日々のコミュニケーションの中でいろいろなことを学習します。愛猫に思わぬ誤解を与えないように、何気ない行動にも十分な注意が必要だということを、常に頭の隅に入れておきましょう。