【獣医師執筆】寒い時期は『尿路結石』に気を付けて! 注意したい兆候は?

【獣医師執筆】寒い時期は『尿路結石』に気を付けて! 注意したい兆候は?

寒い日がまだまだ続いていますね。猫の飼い主の皆さんは、冬にかかりやすい病気をご存知でしょうか? 寒い時期、猫は飲水量が減ってしまうことが多く、泌尿器系の疾患にかかりやすくなります。今回は、泌尿器疾患の中でも膀胱炎の次に頻度が高い「尿路結石」について解説をしていきます。

おしっこに異常がないか、普段から気を付けて!

トイレ中の猫の背後

猫は砂漠に暮らす哺乳類の子孫で、本能的に水分摂取量も排尿回数も少なく、尿の問題を起こしやすい動物です。

また、その他にも室内飼育での運動不足や肥満、与えている食事の品質、そしてストレスは尿路結石のリスクを高めてしまいます。

猫の尿路結石は、どの場所に結石が存在するかによって症状や緊急度が異なります。

尿路結石って?

腎臓から尿管、膀胱、尿道の中に結晶や結石ができる病気を「尿石症」といいます。

尿は、腎臓で作られ尿管を通って膀胱に貯まり、尿意を催すと尿道を通って排泄されます。このように腎臓、尿管、膀胱、尿道で構成される尿の通り道を「尿路」といい、「尿路結石」は、腎臓内か膀胱内に結石ができる疾病です。

猫は、下部尿路(膀胱・尿道)に結石ができる場合が多い、といわれています。

猫の尿路結石でよく見られる成分は、「リン酸アンモニウムマグネシウム(ストルバイト)」と「シュウ酸カルシウム」の2つです。不適切なキャットフードによりおしっこの中にマグネシウム、リン、カルシウム分などのミネラル成分が増えたり、尿のpHバランスが崩れたりすることで結晶や結石ができやすくなります。

オスの猫は特に注意! 命を落とす危険も

黄色いトイレから去る猫

尿路のどの場所に結石が存在するかによって症状は異なり、頻尿や血尿、排尿痛、トイレ以外の場所での排尿などの症状は、「下部尿路結石(膀胱結石・尿道結石)」でよく見られる症状です。

緊急性が高いのは、尿道に結石が詰まってしまうケースです。尿道に結石が詰まると、何度もトイレに行き、排尿姿勢をしても尿が出ない状態になります。完全に閉塞すると「急性尿毒症」となりかなり危険です。特にオスの猫はメスと比較すると尿道が細く長いため、閉塞を起こしやすい傾向があり、注意が必要です。

腎盂(じんう)付近に結石が存在する場合や、結石が多数存在する場合、尿管結石が両側に発生して閉塞を起こした場合には腎機能が低下し、最終的には命を落とすこともあります。

どんな治療をするの? 予防法は?

検査中の猫

では、こちらでは尿路結石の治療や予防法について解説しましょう。

治療方法について

レントゲン検査とエコー検査、尿検査で総合的に診断をおこない、状況に応じて血液検査が必要になる場合もあります。治療方法は、結石を摘出する外科療法や抗生剤・止血剤の投与、療法食の活用などがあります。

オスの猫で何度も尿道閉塞を繰り返す場合には、尿道口を広げ尿道を短くするために、会陰尿道瘻形成術という外科手術をおこなうこともあります。

予防方法について

尿路結石は、体質や遺伝・その他さまざまな要因があるため、完全に予防することは難しいです。しかし、ミネラル成分を多く含む食事を与えないように気をつけることや、飲水量を増やすことである程度予防が可能です。

まとめ

トイレに入ったままこちらを見つめる猫

猫の尿路結石で緊急性があるのは、排尿姿勢をしているのにまったく尿が出ていない場合です。結石の場所によっては症状がわかりにくいこともあるので、定期的な健康診断で早期発見を心がけましょう。

また、猫がしっかり排尿できているかを毎日確認することで、早期発見につながります。寒い時期は特に、トイレの様子を気にかけてあげるようにしてください。

執筆者

藤野獣医師

アニホック動物病院グループ
総獣医師長/株式会社TYL 取締役
藤野 洋(ふじの ひろし)氏

日本大学生物資源科学部(旧 農獣医学部) 獣医学科卒業後、獣医師としてペットの総合商社に入社。主に獣医師として小動物臨床に従事しながら、ペット用品及び生体販売、フランチャイズ展開の知見を深める。2007年3月に株式会社フジフィールド創業。動物病院とトリミングサロンのドミナント多店舗展開を行い、複数店舗の開業/運営を果たす。2017年3月に株式会社フジフィールドをファンドに株式譲渡。動物病院のグループ化とIPOの土台を築くために、譲渡先であるファンド出資の会社にて代表取締役としてM&A推進と既存グループ動物病院及び店舗の運営全般を行う。2021年2月TYLに取締役として参画。

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