猫の多頭飼いのメリット
猫の個性の発見
多頭飼いをすることにより、これまで猫一匹では全く見えなかった猫の個性が見えてきます。一匹の時点では発揮されなかった、その猫独自のキャラクターが他の猫との関わりから分かります。
また、血のつながりだけでなく、育成環境が全く同じ条件にある兄弟猫が、何故、猫の個別性をハッキリと生き始めるのか。その違いを楽しむことができます。
猫同士の可愛い仕草
一匹では、もちろん自分の毛繕いしかしませんが、多頭飼いでは猫が互いを労わるかのように毛繕いする場面を見ることができます。愛猫同士が仲間の猫を舐め続ける姿には、驚きとともに最大に癒されます。
また猫同士、背中合わせになり、日だまりの中で寝息をたてながら眠ったり、突然、思い出したように遊び始めたりする様子は、本当に可愛らしいです。一度、このような猫たちの仕草を見てしまったら、多頭飼いをなかなか止めることはできないかもしれません。
猫の社会性の発達
多頭飼いにおいては、必ずしも、猫対人という一対一の関係には成り得ません。猫は絶えず、飼い主が他の猫と話している状況や関わりを観察しています。
「興味ない」「関係ない」という顔をしながら遠くにいても、しっかり会話の流れを聞き、これを黙認したり、またある時は自己主張したり、状況的な場面を判断する力を身につけます。
猫の寂しさの軽減
猫をひとりで留守番させるのは、飼い主として心が痛くなる場面のひとつです。多頭飼いの良い点は、猫が複数いるという安心感を飼い主が持てることでしょう。
猫が退屈していないか、寂しくないか、何か我慢しているのではないか等々の想いは、多頭飼いにより軽減し、自然消滅します。
いつでも、にぎやか
多頭飼いの家は非常に、にぎやかです。それは特に猫たちのゴハンの時間に実感することになります。多頭飼いにおいては、飼い主は人気者の保育士のような気分を味わうことになります。
猫の多頭飼いのデメリット
猫同士の相性が悪い場合、誰もが逆にストレス
通常、先住猫と新しい猫を丁寧に対面させていくことにより、徐々に、猫同士の距離が縮まると思われていますが、100パーセント成功するとは言えません。
最初から、多頭飼いに不向きな猫もいます。飼い主の愛情が分散することが、ひたすら猫にとってストレスとなり脱毛や食欲不振につながることもあります。
テリトリー争い
良い意味で、猫は互いの行動を観察し合いながら、個別性を生き、社会性を身につけていくと言えます。しかし、自己主張しなければならないこともあるのでしょう。それは時によってはマーキングという行動に表われます。
当然、飼い主は、対応に追われることになります。効果的な消臭剤の購入よりも、本来ならば、猫と猫の関係の修復に力を注ぐべきですが、なかなか現実問題として、日々、時間をつくり猫同士の関係を正していくのは難しいことかもしれません。
病気なのは誰か
多頭飼いの最も難点だと思われるのが、猫たちの不調をいち早く発見できない、という点です。複数個のトイレは当然ですが、どの猫が今日、下痢をしたのか。誰が血尿をしたのか。そういった把握ができません。
猫の体調の変化を知るのが常に遅くなり、気がついた時には、かなり病状が進んでいるという場合もあります。
猫の高齢化
多頭飼いする場合、猫の社会性の習得を踏まえ、月齢の低いうちに多頭飼いを始めた方が楽だと言われています。ところが、年齢的に近い猫たちを多頭飼いした場合、将来的には猫の高齢化という問題に行き着くことになります。
猫も高齢化にともなって、様々な病気を抱えることになります。その対応と出費。さらには猫の認知症的な行動として、無駄鳴き、徘徊、トイレの粗相などあります。1匹での対応も大変なことですが、頭数分、飼い主は対応していかなければなりません。
多頭飼いを始める前の判断ポイント
費用の見積もり
- ①猫のフード代、トイレの砂代
- ②ワクチン諸経費、避妊去勢費
- ③動物病院での治療、通院費
- ④キャリーバッグ代
猫のフードはまとめ買いをすることによって、それほど高額にはならないという意見もあるとは思いますが、実際、多頭飼いで一匹でも病気になってしまったならば、費用を軽減することは難しいでしょう。
療養食を与え、さらには食餌の管理(計量、タイミング等)も同時にしなければなりません。費用も、手間もかかるようになります。また、年齢に応じたフードを与えることになれば、よりいっそう手間がかかります。
また、キャリーバッグは頭数分なければ、災害時に対応できません。災害時という観点から言えば、当然、猫のフードもトイレの砂も常に備蓄しておかなければなりません。
住宅環境
多頭飼いを思い立っても、猫に相応しい環境やスペースがないと飼うことは難しいでしょう。トイレの置き場所や個数もそうですが、猫の運動量を見越したスペースも必要となります。
猫は横のスペースより、上下にスペースがあれば十分、狭い所でも飼育できるという考え方もあるようですが、必ずしもそうではありません。ましてや多頭飼いは猫同士の相性こそ生活全体を左右します。時には、「別室に…」という猫同士を分離させる手段を取らざるを得ないこともあるでしょう。
まとめ
多頭飼いに「絶対的なコツ」という正解はありません。飼い主が常に持つべきは「備えあれば憂いなし」という情報であり、方法、視点、費用です。具体的には、飼い主が猫に多く関わることによって、愛情不足等のデメリットと思われる事柄の多くは解決することでしょう。
わたし自身も多頭飼いをしていますが、体調不良の愛猫を動物病院に連れて行くたびに「猫は本来、群れを作らない動物。多頭飼いは、猫がストレスをためやすい」と指摘されるので、いたたまれない気持ちになります。
ただし、多頭飼いとはいえ、飼い始めから兄弟猫であれば違和感もストレスもそれほど生じないという説もあります。多頭飼いは非常に魅力的ですが、やはり猫に対する責任など多角的に判断していくことになります。
その多角的な視点こそが、将来の猫たちの幸せに結びつくことでしょう。