ペットの騒音トラブルの真実
マンションやアパートなどの集合住宅でも「ペット可」を謳っている物件が増え、在宅時間も増えてきている今、猫と一緒に暮らしたいと考え始める人が増えているようです。
中には、犬と比べて猫は体が小さく散歩の必要がない上に、鳴き声もうるさくないというイメージがあり、「猫なら近所に迷惑をかけないだろう」と考える方もおられるようです。
環境省などを始めとしたさまざまな資料でも、猫より犬の鳴き声問題の方が発生件数が多く、犬の鳴き声(正面5mで90〜100db)よりも猫の鳴き声(75db)の方が小さいことなどが記載されています。
環境省が定めている騒音に係る環境基準値は、地域の類型により異なります。最も基準の緩い「主として住宅の用に供される地域のうち2車線以上の車線を有する道路に面する地域」でも、昼間は65db以下、夜間は60db以下と定められています。つまり、猫の鳴き声も十分騒音問題の対象となる大きさなのです。
猫なら騒音問題とは無縁だろうと考えていた方も、騒音トラブルへの認識を改め、ご自宅の環境や対策について考えてみてください。
猫の意外な騒音トラブルとは
ではここからは、猫の意外な騒音トラブルについて具体的に解説していきましょう。これから猫と一緒に暮らそうと検討している方はぜひ参考になさってください。
1.鳴き声
普段からうるさいほど鳴いている猫は、そう多くはないでしょう。しかし特定の条件によっては、うるさいほど鳴くことがあります。
1つ目は、発情期や喧嘩の声です。発情したメスは、人間の赤ん坊の泣き声によく似た大きな声で鳴き続けます。その声に反応したオス猫達は、メスを巡って大声を張り上げながら闘争を繰り広げます。
2つ目は、要求鳴きです。お腹が空いた、かまって欲しい、トイレを掃除して欲しいなど、何か要求がある場合に大きな声で鳴き、望みが叶うまで鳴き止みません。
3つ目は、高齢猫の認知症です。昼間はひたすら眠り続け、夜になると目をランランと輝かせながら徘徊し、一晩中大きな声で鳴き続けるといった行動を見せる猫も多いようです。
2.足音
足元の愛猫に気付かず尻尾を踏んでしまったことのある方は、少なくないはずです。それほど平常時の猫は静かに歩くので、足音が騒音だなどとは思いも寄らないでしょう。
猫は普段は爪を隠し、肉球もあるため足音がしません。しかし、猫達が本気で走り回り、夢中になって飛び跳ねている時は、振動も伴うため階下に響いているのです。特に多頭飼いの場合は、全力追いかけっこなど足音が騒音となることが多くなるでしょう。
3.着地時の振動音
猫は、高い場所から室内を見下ろすことが好きです。椅子やテーブルなどを踏み台にして、冷蔵庫やレンジフード、食器棚などの上で寛いでいます。また家具に上がらせたくない方は、代わりにキャットタワーなどで猫専用の高い場所を提供していることでしょう。
そういった高い場所から床に飛び降りた時の着地音にも対策が必要です。肉球や背骨が音を吸収するとはいえ、平均3〜5kgの体重が天井近くの高さから飛び降りるのですから、当然振動も伴って階下に影響を与えるのは当然だといえるでしょう。
4.騒音が発生する時間帯
私達人間は、昼行性のため明るい昼間に活動をし、暗い夜間には睡眠をとります。しかし猫達は、薄明薄暮性といって夕方や明け方などの薄暗い時間帯になると、活発に活動を行います。それは、獲物である小動物の活動時間に合わせているからです。
「猫の運動会」という言葉があります。猫は、夕方や明け方の薄暗い時間帯になると、突然部屋中を全速力で走り回ったり、家具に飛び上がったり飛び降りたりするのです。多頭飼いの場合は、皆が一斉に始めるため大騒ぎになります。
夜明けの時間帯というと深夜の3〜5時頃なので、ご家族も含めて近所の方々はたいてい寝静まっているでしょう。明け方の猫の運動会は、特に騒音トラブルの原因になると考えられます。
猫の騒音トラブル対策
では、上記で書いたような猫の騒音トラブルに対して、どのような対策が効果的なのか解説します。
床への対策
階下への騒音対策には、防音や遮音効果のある敷物を利用しましょう。家の構造にもよりますので、防音マット1枚で効果を発揮する場合もありますが、素材の異なるマットを複数枚重ねて利用される方も多いようです。
猫の全行動範囲に敷くのは費用がかかりすぎるという場合は、猫の遊び場やお気に入りの高所の足元に限定して敷くというのも良いでしょう。ジョイント型のマットなども市販されています。
製品選びには、猫の爪が引っかからない形状や、毛玉などを嘔吐してもきれいにしやすい素材といった観点も必要でしょう。
壁への対策
隣室への対策には、壁に貼るシートやボードタイプの製品を活用しましょう。
遮音効果のあるシートなどの上に、ウレタンやフェルトなどの吸音(防音)効果がある素材のパネルなどを重ね貼りすると、より高い効果を期待できます。
窓への対策
外に漏れる音が心配な場合は、窓ガラスに貼るタイプの防音シートも市販されています。透明なものを選べば、採光も確保できます。
ただし、窓ガラスの種類によっては使用できません。防音カーテンを利用なども検討しましょう。
深夜の騒音対策
特に若い猫は、よく深夜に運動会を繰り広げます。昼間や夕方などにしっかりと遊ばせることで、疲れて夜にぐっすり眠るよう誘導できます。
認知症の猫にもこの方法は応用できます。激しく遊ばせることはできなくても、昼間さまざまな刺激を与えることで、体内時計を調整できます。
まとめ
猫と騒音トラブルを結びつけて考えていなかった方も、猫の声や足音、着地音などが近隣への騒音トラブル要因となり得ることをご理解いただけたのではないでしょうか。
お住まいの環境や愛猫との生活スタイルなどをよく振り返り、騒音トラブルの原因になりそうな点は、対策を検討しましょう。