リアル猫の恩返し!動物看護士が病院で出会った猫と飼い主の絆のお話

リアル猫の恩返し!動物看護士が病院で出会った猫と飼い主の絆のお話

猫には不思議な力があると言われています。偶然と言われてしまえばそれまでですが、私が出会った猫ちゃんと飼い主さんのお話です。

半身不随の猫と飼い主さんのお話

猫と女性

猫を飼っていると、犬のように甘えてくる事もなくちょっとツンと澄ました姿に惹かれ何故かその姿に癒されますよね。

人の話を聞くこともなく我が道を行く!気が向いたら甘える。ワガママなイメージのある猫ですが、ちゃんと飼い主さんを想い私達の事を守ってくれている。私が動物病院で出会った猫と飼い主さんのお話です。

交通事故の子猫

手術室にいる白い猫

寒い冬の朝、診察に訪れたのは傷だらけで衰弱した子猫でした。
すぐに緊急の処置を行い入院させましたが、後ろ足の感覚が全くありません。

事故に遭い脊髄を損傷し後肢の麻痺がみられました。出来る限りの治療を行いましたが、やはり下半身の麻痺は避けられませんでした。

また自力の排尿も難しく、飼い主さんがしぼってあげないとおしっこが出せない為今後介護が必要です。先生からその話を聞いた飼い主さんは少し考え、それでもその子を飼うと言ってくれました。

子猫の介護が始まる

抱っこされる子猫

私達には不安がありました。簡単に飼うといっても、普通の元気な子とは違い毎日の排便排尿。動物の扱いに慣れた私達でも難しく、力の加減や押さえる場所など普通の飼い主さんには難しい事です。

今まで何頭か猫を飼ったことがあるとはいえ、こんな事をしないといけないのは初めてなので最初飼い主さんは毎日病院にやって来ては先生に教えてもらい、毎日頑張って介護されました。

最初はおそるおそるやっていた飼い主さんも回数を重ねるごとに上手くなり、最初は嫌がっていた猫もおしっこを出してもらうと気持ちいい事が分かったのか大人しくゴロゴロと喉を鳴らし飼い主さんに体を預けていました。

元気いっぱいの子猫

おもちゃと眠る子猫

後脚が動かない事以外は何の問題もなかった子猫は、毎日元気いっぱいでよく遊びよく寝て飼い主さんを笑わせてくれると診察に来た飼い主さんはよく話してくれました。

「この子を見つけた時は、どうするか本当に悩みました。このまま楽にしてあげた方がこの子にとってよかったんじゃないかと思ったけど、今この子と暮らしていて本当に良かった。この子は私にとって神様からの贈り物。」

嬉しそうに話す飼い主さんを見ていると私達まで幸せな気持ちになれました。

突然入院になった子猫

動物病院のケージと猫

子猫との暮らしが3年ほど経ったある日、飼い主さんのご家族から電話があり猫を少し預かって欲しいと連絡がありました。いつも面倒をみていた飼い主さんが突然入院する事になったとの事でした。

ご家族の話だと「入院が長引くかもしれず、いつお迎えに来れるかわからない。お母さんの猫、申し訳ありませんが宜しくお願いします。」と言われました。

お預かりした猫も慣れない病院での生活に元気がなく寂しそうに飼い主さんを探しずっと鳴いていました。最初の1週間は食事も少ししか食べず元気がありませんでしたが、少しずつ慣れてくれたのか私達が来ると嬉しそうに甘えてくれました。

でもやはり大好きな飼い主さんを探し、寂しそうにしていました。入院生活も1ヶ月が過ぎた頃、ご家族から連絡がありもう少しで退院出来そうなのでもうすぐ迎えに行きますと連絡がありました。

大好きな飼い主さんと再会

獣医と猫

数日後、猫を迎えにご家族と一緒に入院していた飼い主さんもやってきました。本当は数日入院の必要がありましたが、猫が心配だからと無理を言って退院させてもらったんだと言っていました。

元々持病がありそれが悪化してしまい今回入院することになったそうです。まだ体調は万全ではありませんが、猫と会えたお母さんは満面の笑みで猫を抱きしめ猫も大好きなお母さんに抱きしめられ嬉しそうです。

大好きな飼い主さんに抱きしめられたままお家に帰って行きました。それが私が最後にみた姿でした。

子猫との突然の別れ

女性に抱かれる子猫

病院を退院して数週間後、飼い主さんから震える声で電話がありました。

「今朝起きたら猫が息をしていない。昨日の夜もいつも通り元気に遊んでいたしご飯も食べていたし、おしっこもうんちもしっかり出してあげたのに…。」と泣きながらお話してくれました。

私達もあんなに元気だった子が亡くなるなんて想像もしていませんでした。障害があるとはいえまだ3歳。病気になるには早すぎます。

結局原因は解りませんでしたが、急な別れにスタッフみんな悲しい気持ちに包まれました。数日後、お礼に飼い主さんがやってこられました。

「あの時は長い間お世話になりました。あの子がいない毎日は寂しくて辛いですが、あの子が残してくれた思い出は一生忘れません。」そう話してくれました。

元気そうな飼い主さんの姿を見て私達も安心しました。

不思議な出来事

天使の猫

実はこの話には後日談があり、半年後また子猫を拾ったとあの飼い主さんがやってきました。久しぶりにお会いした飼い主さんはとても顔色がよくとても元気そうです。

お元気そうで安心したと話すと、「実はあの子が亡くなってから持病が嘘みたいに良くなったのよ。」と話してくれました。

入院した時は本当に危なくいつ亡くなってもおかしくないぐらい数値が高くなっていたそうです。無理して退院した時もお医者さんに止められ病院からは責任は持たないとまで言われたそうです。

それでも猫を心配して退院した姿をみて猫は何かを感じたのかもしれません。

「もしかしたら、あの子が身代わりになって私を守ってくれたのかな。そんな事しなくても良いのにね。そんな事せずにもっと一緒にいてくれたら良かったのにね…。」と寂しそうに笑っていました。

最後に

撫でられながら眠る猫

偶然と言われればそうかもしれません。ただ私達は飼い主さんと猫の絆の強さをみてきました。あの時、事故の子猫は命を救われました。

また大変な介護をして命を繋げてもらいました。何かを感じ恩返しがしたいと思っていたのかは解りませんが、私はそう思っていたと信じてます。

嘘のような本当の話。でも実際私が動物病院で体験した出来事です。

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