小さな命を守る為、決死の覚悟を決めた母猫のお話

小さな命を守る為、決死の覚悟を決めた母猫のお話

無責任な飼い主に捨てられたお腹の大きな野良猫がいました。母猫は子供を守る為に大きな決断をしました。私が動物病院で勤めていて体験した出来事です。

お腹の大きな野良猫

お腹の大きな猫

私が新人だった頃、お腹の大きなの野良の母猫が保護されました。これ以上可哀想な猫を増やさない為、避妊手術と同時に生まれてくる子猫も処分する事になりました。

とても残酷な事ですが、産まれてしまう前に処分する事は私が働いていた田舎の動物病院ではよくある事でした。その頃の私はこの手術が入ると気が重くなりました。

それは私だけではありません。先生も他の先輩看護師もみんな同じ気持ちです。その気持ちは保護した人も同じでした。

保護主さんの苦悩

海岸と猫

その人の家は海の近くにあり、旦那さんは漁師さんです。

海の近くは猫が集まります。ただでさえ猫が多いのに、飼えなくなった猫を海岸に捨てる人も多く、避妊や去勢をしないまま捨て妊娠を繰り返し、いつまでも野良猫が増え続けます。

このままでは状況は悪化するばかりです。それを止める為に自腹で猫を保護して避妊去勢手術をし、元気になればまた野良に戻したり、里親を探したりと、これ以上不幸な猫が増えないよう活動されていました。

全ての子が妊娠する前に保護する事は難しく、時々妊娠した状態で避妊手術を行う事はよくありました。まだ生まれてないとはいえ生まれるはずだった命。

その命を奪う事は許されるのか。私達と同じよう悩みながらも、活動を続けられていました。

母猫の覚悟

母猫と子猫

お腹の大きな猫を保護

その母猫も同じようにお腹が大きな状態でした。3日前から海岸に現れ、誰かに飼われていたのかすぐに甘えて寄ってきたのですぐに捕まえる事が出来たと言っていました。

飼っていた猫が妊娠したから捨てた。きっとそんな無責任な理由からこの母猫は捨てらたんだろうなと思いました。

保護されたのが夜の診察終わりで時間もなかったので、明日のお昼に手術することになり、その日はゲージでお預かりし私達はそのまま帰宅しました。

次の日、子猫を出産

次の日の朝、いつものように出勤したら小さな声が聞こえてきました。小さな子猫の…。
「まさか…。まさかね…。」
母猫のゲージを覗きました。小さな命が4つ、お母さんのおっぱいを飲んでいます。

まだ出産まで時間ありそうだったのに、何か胸騒ぎがしたのか母猫は小さなゲージの中で、お母さんになりました。

「とても不安だっただろうな…。」と思い、親子をみていると私の顔をじっとみていたお母さん猫は「私の子かわいいでしょ?殺さないで…。」
そう言ってるような顔で私の顔を見ていました。

産まれた子猫は処分されないという事になった

すぐに院長に報告し、保護した人に連絡しました。保護された方も悩みましたが、母猫のおっぱいを飲む子猫を見てこの命を消そうと思う人はほとんどいません。

母猫と子猫はこのまま育ててくれることに

このまま母猫と子猫と引き取り育ててくれることになりました。
心の底から良かったと思いました。生まれてきた命は助かりました。嬉しくてお母さんのいるゲージをそっと覗くと、おっぱいを飲んでいる子猫を優しく毛づくろをする母猫。

どうすればこの子達を守れるか。そう考えたかは猫に聞いてみないとわかりませんが、あの落ち着かない狭いゲージの中で誰もいない夜に出産し育てようと思ったお母さん猫の覚悟はすごいと思いました。

母猫・子猫は幸せに暮らしている

ダンボールに入った猫

母猫の強さに私達人間が勝てるはずがありません。もちろんその後母猫と子猫達は今でも家族仲良く元気に暮らしています。みんな避妊去勢手術をして、幸せに暖かいお家で家族でのんびり暮らしています。

最後に

子猫

猫は交尾排卵といって、交尾する際に排卵するのでほぼ確実に妊娠する事が出来ます。効率よく沢山子孫を残す為に猫の体はそうなっています。

家の中のみで飼われているならそれでいいかもしれません。ただ外を自由に行き来する猫ちゃんの場合、避妊していないと確実に妊娠を繰り返します。

全ての猫に飼い主さんがいればいいですが、それが出来ないからいつまでも野良猫は増え続けています。無責任に妊娠を繰り返し、生まれた子猫を捨て時には妊娠した猫も捨てる。こんな事が許されていいとは思いません。

一部の無責任な飼い主さんのせいで不幸な猫はいつまでも増え続け、増えた猫は不幸な最後を迎える事になります。一度飼うと決めたら最後まで責任を持つ。それが当たり前になれば不幸な猫は減ると思います。

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