長寿化がもたらした猫の老後問題
あるペット関連の社団法人が行った令和2年の調査では、猫全体の平均寿命は15.45歳でした。
ここ数年、猫の平均寿命は長寿化の傾向を示しています。
それは、室内飼いの一般化、獣医療の発展、安全で質の高いキャットフードの普及などが原因だと考えられています。
人間にもいえることですが、長寿化が進むということは、猫の高齢化も進むということです。
高齢の猫が増えると、猫にも人間と同じように老後の問題が発生します。
年老いた飼い主と年老いた飼い猫だけで「老老介護」をしながら暮らすご家庭も少なくないでしょう。
今回は、猫の老後に発生する問題とその対策について、考えていきます。
猫の老化のサイン
もちろん個体差がありますが、一般的に、愛猫が9歳を過ぎたあたりから、少しずつ愛猫に対して「老い」を感じるようになるかもしれません。
愛猫に、下記のような様子が見られ始めたら、老化のサインと考え、徐々に介助や介護の準備を始めましょう。
- セルフグルーミングが減り毛艶が悪くなる
- 歩く時によく障害物にぶつかるようになる
- 動かずにじっとしている時間が長くなる
- 今まで上れていたところに上れなくなる
- 今まで下りられていたところから下りられなくなる
- 粗相の回数が増える
- 食事の際の前傾姿勢がつらそうになる
- 段差がつらそうになる
- 食が細くなる
- 飲水量が減ってくる
- 痩せてくる
1.栄養管理
老化のサインにもあるように、猫も加齢と共に運動量が減っていきます。
運動量が減れば、食欲が低下するのは当たり前です。
それでも、愛猫に必要な栄養は、しっかりと摂らせなければなりません。
また、必要な栄養バランスも若い頃とは変わってきます。
シニア期に入ったら、老猫用の栄養バランスが取れた、良質なフードに切り替えましょう。
また、ドライフードはぬるま湯でふやかす、ウェットフードの比率を増やすなど、愛猫が食べやすくなる工夫を施しましょう。
また、前傾姿勢が辛くなってきますので、食器を台の上に乗せるといったような工夫や、お水をしっかり飲ませるための工夫も大切です。
お水も大切な栄養素の一つだということを、忘れないようにしましょう。
2.安全管理
加齢と共に、猫も足腰が衰え、視覚・聴覚・嗅覚といった五感の感覚が衰えていきます。
そのせいで、障害物にぶつかったり、ちょっとした段差につまずいたりするようになります。
障害となる物を愛猫の行動範囲に置かない、スロープ等を利用して室内の段差を解消するといった対策を行いましょう。
また、愛猫が独りで留守番をしなければならないような場合は、ケージに入れる、柵で囲って行動範囲を限定するなどにより、安全対策を行います。
普段から衣食住が接近できるように、愛猫の行動範囲をコンパクトにまとめ、安全を確保します。
その際、トイレは移動させるのではなく、数を増やすことをおすすめします。形状も、なるべく低くて入りやすいトイレに変えると良いでしょう。
愛猫が過ごす時間が長くなる寝床は、クッション性が高くて居心地が良い、そして安全で衛生的な場所にしてください。
3.適度な刺激のある生活
たとえ激しい遊びができなくなったとしても、愛猫の体力に合わせた遊びや刺激は必要です。
少しでも反応すれば良いので、猫じゃらしを目の前で動かす、声を掛けたり身体を撫でる、ブラッシングをするなど、積極的に愛猫に刺激を与えましょう。
爪切りや歯磨きといったお手入れも、刺激を兼ねてしっかりと継続してください。
ベランダの手摺に止まっている鳥が見えるようにするなど、いろいろな工夫をしてあげてください。
4.健康管理
前述のブラッシング、爪切り、歯磨きなどのお手入れは、刺激を与えるだけではなく、愛猫の健康を維持するためにも必要です。
お手入れをしながら、愛猫の全身をしっかりとチェックし、皮膚トラブルや病気の早期発見・早期治療も忘れてはいけません。
セルフグルーミングを行えなくなってきますので、顔やお尻なども絞った濡れタオルやウェットシートなどできれいに拭いてあげましょう。
また、体重や飲食量、排泄量のチェックは、愛猫の状態を把握するための大切な指標になります。
さらに1年に2回以上は、動物病院で画像検査も加えた総合的な健康診断を受けることをおすすめします。検査項目は、かかりつけの獣医師と相談して決めましょう。
いよいよ寝たきりとなった場合は、飼い主さんが寝返りをさせることで床ずれを予防したり、こまめなおむつ交換をしたりといったことも必要になります。
まとめ
毎日の介護や看護は、時に辛く感じることもあるでしょう。
しかし、心を穏やかにして、愛猫とコミュニケーションを図りながら行ってください。
黙々と行うのではなく、愛猫に声を掛けながら行うことでまた、飼い主さんの心も穏やかになっていくと思います。
飼い主さんの心身の健康管理も大切です。
全てをお一人で抱え込んでしまわずに、ご家族や周囲の人々の協力を受けながら、介護生活を乗り切ってください。
動物病院、老猫ホーム、ペットシッターなどの専門家も、上手に頼りましょう。