猫の性別による人へのなつき度に関する諸説
巷では、猫がなつきやすい、なつきにくい人に関して、性別を絡めて考える人が多いようです。いくつか、よく耳にする説をご紹介しましょう。
1.猫は男性よりも女性になつきやすい
猫を専門に診察される男性獣医師の方が「女性獣医師を希望する猫が多く、男性獣医師としては寂しい思いをすることが多い」とあるサイトに書かれていたくらいよく耳にする説です。
2.飼い猫は女の人や小さな子供になつく
一般的なご家庭では、お母さんは忙しくて猫を構う暇がなく、子供は気まぐれですぐ新しい遊びに夢中になるため、大人の女性や小さな子供は猫と接する機会が少なくなり、必然的に自由を好む猫は彼らになつくという説です。
3.猫は子供を嫌う事が多い
これは性別に関係した説ではありませんが、2.の説の対比として挙げておきます。
4.メス猫は男性に、オス猫は女性になつきやすい
猫は人間のフェロモンを感じ取ることができ、結果としてメス猫は男性に、オス猫は女性になつくという説です。
猫に直接真意を聞くことはできませんが、これらの諸説に関して、猫の習性をベースにその真偽について考えてみたいと思います。
猫の習性からみた猫が好む人の特徴
猫にもそれぞれの個性がありますので、必ず猫が好む人の特徴はこうだと決めつけることはできません。
しかし、一般的に猫の行動や習性から考えて、下記の条件に当てはまる人のことを好む傾向が高いと考えられます。
- 食べ物をくれる
- 体が小さい方である
- 声が高い
- 声が大きくない
- 落ち着いて穏やかに行動する
- 痛いことをしない
- 束縛せずに自由にさせてくれる
猫の習性から見た猫が苦手とする人の特徴
猫が好む人の特徴と同じように、下記の条件に当てはまる人のことを苦手とする傾向が高いと考えられます。
- 体が大きい
- 声が低い
- 声が大きい
- 突発的な動きが多い
- 力の加減が不適切な接触をする
- 猫の状況にお構いなく自分勝手に絡んでくる
結局猫の好き嫌いに性別は関係するのか
猫は「鋤鼻器」というフェロモンを感知するための器官をもっており、フェロモンのニオイを嗅ぐ時には、フレーメンという口を少し開いて上唇を引きつったような独特な表情をします。そのため、猫は人間のフェロモンも嗅ぎ分けることができると考えておられる方が多いようです。
ヒトも鋤鼻器をもって生まれますが、胎児の間に退化してしまい、生後まもなく消えてしまい、ヒトではフェロモンが機能していないという考え方が一般的です。
もちろん、ヒトがフェロモンを分泌する可能性が完全に否定された訳ではなく、赤ん坊の匂いが両親に養育意欲を促進させるフェロモンではないかという観点で研究が進められているようです。
しかし、残念ながらヒトに関する性フェロモンの存在については今の所肯定的な研究はなさそうであり、猫が人間の性別を認識するための強力な手がかりはないと言えるでしょう。
猫と一緒に暮らしている人の多くが猫のなつきやすさに性別が関係していると感じていることから、たしかに女性になつきやすい、男性になつきにくいという傾向があるのかもしれません。
しかしその理由は、たまたま「好む人の特徴」に当てはまる人に女性が多く、「苦手とする人」の特徴に当てはまる人に男性が多かったということなのではないでしょうか。
たとえば、家事は主に女性の仕事とされる風習の日本では、毎回食事を与えてくれる人は女性が多いとか、ガサツで力加減を考えずに接するのは男性が多いということではないでしょうか。
また、静かでゆっくりと穏やかに行動する老人にはなつきやすく、突然何をしだすかわからない小さな子供は苦手であるということもあるかもしれません。しかしこれらは、その人の身体的特徴や性格から猫が導き出した結果だと考えるのが妥当でしょう。
まとめ
「男だから、子供だから、猫には好かれない」と決めつけてがっかりする必要はありません。もし本当に猫に好かれたいのであれば、猫の立場になって猫が嫌がることをせず、好まれる行動をすればよいのです。
声が低いのであればできるだけ高めのトーンで話しかける、体が大きいのであればできるだけ猫の目線に近づけるように腹ばいになって近づく等、工夫できるはずです。
まぁ、好奇心旺盛でやんちゃなお子様に、大声を出さずに落ち着いて穏やかな行動をしろというのはちょっと難しいかもしれませんが。