猫が見せる不思議な行動
薄暗い部屋の中で、猫がじっと壁の一点を見つめる。今まで飼い主さんと一緒に遊んでいた猫が、急に飼い主さんに背を向けてドアの向こうをじっと凝視する。こんな光景を見て不思議に思った経験のある飼い主さんは、少なくないはずです。
第二次世界大戦中、ドイツの物理学者シュターデン博士がナチスの極秘研究施設で超常現象に関する研究を行ない、上記のような仕草を見せる猫の目線の先には幽霊がいると発表しました。愛猫の名前フェレンゲルから、この現象をフェレンゲルシュターデン現象と名付けました。
実はこの話は全くの嘘だったのですが、まことしやかにこの話が広まったのは、やはりどこかに猫にそう思わせる要素があるからかもしれません。
猫には幽霊が見えると思わせている理由
なぜ猫が「幽霊が見えている」と思われるような行動をするのか、その理由について考えてみましょう。
1.微かな光でも見える視力
実際に人には見えないものが見えていると考えられるケースです。よく、暗闇の中で猫が何かを見つめていることがあります。暗闇では、私たち人間はあまり物をよく見ることができません。
猫の視力は、人の0.1〜0.2程しかありません。しかし猫には、光を増幅するタペタムという反射板があることと、明暗を感知する杆体細胞が多いことにより、暗闇の中でもわずかな光があれば視覚の感度が上がるのです。
そのため、人間には何もないように見えていても、猫には壁に止まっている小さな虫などが見えている可能性が十分に考えられます。
2.人には聞こえない音も聞こえる聴力
猫の聴覚はとても可聴範囲が広く、犬よりもさらに高い音まで聞き取ることができます。また、20m先にいるネズミの足音や声も感知できると言われています。
人間には何も聞こえていなくても、壁の中の排水管を流れる水の音、屋根裏にいる小動物や虫の声、隣の家の話し声、外にいる野良猫の声などが聞こえ、もっとよく聞き分けようと、音のした方を注視したり威嚇したりしたと考えられます。
何かを捕まえようとするのではなく、じっと一点に集中しているという様子は、目に見えるものよりも音に反応していると考える方が、より辻褄が合います。
3.人の思い込み
ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン(NEJM)で、養護・リハビリセンターのセラピーキャット『オスカー』が、死を直前にした患者さんの匂いを嗅ぎ分けて知らせてくれるということが報道され、一躍有名になりました。
こういった人間と比べてより高い猫の認知能力が知られ、さらにかつて猫に持たれていた「魔女の使い」「猫又」といった怪異譚のイメージから、猫がただボーッとしているのを見た人が、思い込みで「やっぱり」と思っている可能性も否定できません。
まとめ
私たちが「何が見えるのだろう」と不思議に思うような行動をしている猫に対して、「何が見えているの?」と質問することができない以上、本当に猫に幽霊が見えているのかいないのか、それを確認することはできません。
ましてや、幽霊が本当に存在するのかどうかも定かではありません。しかし、人間と比べるとはるかに鋭敏な感覚を持ち合わせている猫には感知できて、私たち人間には感知できないことがあってもおかしくはありません。
猫と一緒に暮らすときに、こういった猫の鋭敏な感覚についても配慮できるようになると、猫にとってよりストレスフリーな住環境を提供できるようになるのではないでしょうか。