化け猫の起源
化け猫は古くから語り継がれている日本の妖怪の代表格とも言えますが、一体いつ頃から存在しているのでしょうか。
全国各地での言い伝えは様々ありますが、書物としてきちんと残っているものとしては江戸時代の中期~後期にかけて存在した旗本・根岸鎮衛が30年以上に渡って書いた「耳袋」という随筆。ここに出てくる物の怪が化け猫の起源だと考えられています。
化け猫の由来その1「変幻自在な姿」
猫は暗闇の中で目が光り、時刻や周囲の光の加減で瞳(虹彩)の形が変わる。足音は実に忍びやかで人間に懐き甘えるかと思えば、突然野生的な面を見せることもある。その身は非常に軽く敏捷で、鋭い爪と牙を持つ...そんな変幻自在で怪しげにも見える姿が、次第に怪しげで不思議な力を持つ妖怪として見られたのではないかといわれています。
他にも妖怪視された動物としてはキツネやタヌキ、ヘビなどが挙げられますが、そんな野生動物たちの中よりもはるかに人間に近い位置で存在し、かつ野性味や神秘性を秘めた猫が人々に注目され、次第に妖怪・化け猫としてのイメージが作られていったのかもしれませんね。
化け猫の由来その2「行灯の油を舐める」
古来日本では夜間の灯りとして、行灯が広く使用されていました。この行灯には鰯油などの安価な魚油が用いられていたため、猫が好んでこの行灯の油を舐めたそうです。想像するにこの行灯、猫の目線からすれば少々高い位置にあることが多かったため、油を舐めるには二本足で立ち上がることが多かったのでしょう。この二本足で立ち上がって油を舐める姿が妖怪として見られた、という説もあります。
化け猫の由来その3「人間と会話する」
先述の「耳袋」にも猫と人間が会話を交わす一幕があるように、猫は歳を重ねると人間と会話するといわれていました。これは猫が時折発するくぐもったような鳴き声が、人間の言葉のように聞こえたことからそのように言われるようになったのではないかと言われています。
昨今でも、猫がもごもごと喋っているような様子が可愛いということで大変話題になった動画がありますが、時代が変われば人間側の感じ方も変わるということなのかもしれませんね。
化け猫の由来その4「仏教と共に伝来」
古くは縄文時代より日本人と生活を共にしてきた犬と違い、猫は仏教と共に中国から伝来したといわれています。中国から日本へと大切な仏教の経典を運ぶ際、その経典をネズミから守るために同乗を許されたのが猫でした。そのためか猫には摩訶不思議なイメージが定着したのでしょうか、当時の浮世絵や遊女たちの名前、歌舞伎の演目などに猫が用いられることが多かったそうです。
まとめ
いかがでしたでしょうか。由来を紐解いてみると化け猫=ただ怖いというだけではなく、身近で可愛らしくも不思議な雰囲気を放つ、猫ならではのエピソードかもしれませんね。こうして様々な捉え方がされるのも、時代は違えど猫が人間に愛されているからこそ。古くから存在する摩訶不思議な「化け猫」の世界観、ぜひこれからも永く語り継がれていってほしいものです。