ペットロスの仕組みとは?愛猫を喪い悲しんでいる人への接し方

ペットロスの仕組みとは?愛猫を喪い悲しんでいる人への接し方

ペットの飼育数は年々増えていき、それに伴いペットロスも社会問題になりつつあります。しかし正しく認知されていないのが現状です。ペットロスには段階があり、その仕組みについて知っていますか?愛猫を喪って、悲しんでいる人への接し方をお教えします。

ペットの喪失―悲嘆とは?

眠る猫

家族同然のペットが旅立った時、飼い主は身を引き裂かれるような悲しみを感じます。人によって症状は様々ですが、落ち込んで何もする気になれなかったり、「もっとああしてあげていたら」「もっとこうしてあげられていたら」と、取り返しのつかないことで、いつまでも葛藤したり、ストレスにより体調不良になったりする人もいます。これをペットロス症候群と言います。

ペットに限らず、死別によって生じる深い悲しみのことを悲嘆(グリーフ)と言いますが、実はグリーフはペットの生前から始まっているのです。

例えば、愛猫が完治の見込みのない病気を患っているとします。このように死を避けられない病態で過ごしている時間をターミナル期と言います。

当然、このターミナル期から飼い主にもグリーフの症状が表れます。いつか寿命が来ることは分かっているのに、心がそれを拒否するのです。

「愛猫がいなくなった後の生活が想像出来ない」「他に治療法があるのではないか、と期待する」「治らない状況下で、この先の治療法が分からず困惑する」など。

これをみても分かるように、まだ愛猫が生きている場合のグリーフと、既に死んでしまった場合のグリーフでは対応が違って来ますが、ここでは愛猫が死んだあとのグリーフケアについて考えてみたいと思います。その前にグリーフケアについて、少しお話しましょう。

ペットロスにおけるグリーフケアとは?

手を取り合う人

グリーフには多くの場合、幾つかの段階があります。
主に「衝撃期」→「悲痛期」→「回復期」→「再生期」の心理過程を辿るとされていますが。

精神科医のキューブラー・ロスは「悲しみの5段階」とし、「否認」→「怒り」→「取引」→「抑うつ」→「受容」と表現しました。

また哲学者のデーケンは「悲嘆のプロセス」として、「衝撃」→「否認」→「パニック」→「怒りと不当惑」→「敵意と憎しみ」→「罪意識」→「空想形成」→「孤独感と抑うつ」→「精神的混乱とアパシー」→「諦めからの受容」→「新しい希望」→「立ち直り」の12段階からなると述べています。

しかし、どの心理過程の場合も1段階から順番に進むわけではなく、人それぞれで、重複したり、順番を飛ばしたり、多くの場合は一進一退を繰り返しながら、自然に立ち直ると考えられています。

これらが正常に行われないと、時に慢性悲嘆や、悲嘆が長期に渡って継続したり、遅れて悲嘆反応が生じる遅発悲嘆、うつ病やパニック障害などを引き起こす拡張された悲嘆、悲嘆が抑圧され、身体症状や問題行動となって現れる仮面悲嘆などの病的悲嘆を伴い、長期化することがあります。
以上のように、愛猫を喪った人の心は、様々なことが起こり、とても混乱しています。

もしも身近にいる人が愛猫を喪って、あなたが何かをしてあげたい、と感じたのなら、一体何が出来るかを考えてみましょう。

愛猫を喪い悲しんでいる人への接し方

悲しむ人

死後のグリーフケアで大事なのは、愛猫を喪って悲しんでいる飼い主と共感目線で話を聴くことです。「聞く」のではなく「聴く」。「傾聴」です。

傾聴とはカウンセリングにおけるコミュニケーション技能の1つです。辞書でみると「傾聴の目的は相手を理解することにある。それにより、 話し手が自分自身に対する理解を深め、建設的な行動がとれるようになるようサポートする」とあります。

要するに「話を聴いてあげればいいんでしょ?」と思った方もいるかもしれませんが、話を聴くと言うのはなかなか難しいことです。

でもいくつかのことに注意して傾聴を行えば、愛猫を喪った飼い主(以下、飼い主)の心は、あなたのお陰で救われるかもしれません。話をしているうちに、次第に飼い主の心も整理されていくはずです。

「たかが猫」ではなく「されど猫」

うつむく猫

まずは「たかが猫」と飼い主のグリーフを軽んじるのをやめましょう。大事なことはグリーフの理解者としての共感を表すことです。

第一声で飼い主の言葉を否定するのは、一番してはいけないことです。例えば「こんなに苦しむなら、安楽死させてあげれば良かったよね」などの答えのない問いに対して「そんなことない。あなたは正しかったよ」と言ったりすること。

強者としての安易な励ましもNGです。例えば「まだ落ち込んでるの?」「早く元気になって」「寿命だから仕方ないよ」「あまり悲しんでいると○○(愛猫)も成仏出来ないよ」など。
もしこのようなことを言われてしまうと、飼い主は温度差を感じて、益々ペットロスの状態に陥る可能性が高いと思います。

また正論を述べたり、自分の死生観を無理に押し付けるのもやめた方が良いでしょう。解決を急がないことも大事なことです。
それから、話を聴く側は、とにかく感情移入し過ぎないように注意しましょう。「自分がこう感じるのだから、飼い主もこう感じるに違いない」などの誤った認識は、とても危険です。

あなたと飼い主は違う人間なのです。家族間でも同じことが言えます。同じ愛猫を想っていても、グリーフの表れ方はそれぞれ違うのは自然なことなのです。

以上のことを心に留めて、ペットロスに苦しんでいる方と悲しみを共有して下さい。

まとめ

窓際の猫

ペット大国日本において、ペットロスは深刻な社会問題になりつつあります。
最近は動物病院などで、獣医師、動物医療従事者などが治療とは別に、飼い主に寄り添ったグリーフケアを実践しているところもありますが、まだまだ普及していないのが現状です。

それとは別にペットロスカウンセラー、ペットロス療法士など職業も珍しくなくなって来たので、深刻なケースの場合はプロに相談してみるのが良いと思います。

私もプロではありませんが、ペットロスカウンセラーの資格を持っているので、時折相談に乗ることがあるのですが、私の場合は愛猫を喪った飼い主に「○○に出会えて本当に良かった」「○○のお陰で幸せだった」と心から感じてもらうことがゴールだと思っています。

そしてまた、いつか死んでいった愛猫を幸せにしたように、また新しい別の命(猫)を幸せにしてくれたら、これほど嬉しいことはありません。

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