動物の知能の評価基準
従来、動物の知能の指標としては、「脳化指数」が使われてきました。体重に比べて脳が重ければ重いほど知能レベルが高いという考え方で、猫の脳化指数を1.0とすると、犬は1.2、ヒトは7.4となります。
しかし、脳の大きさと大脳皮質に存在するニューロン数が比例しないということが分かり、脳化指数が必ずしも知能の高さを示すわけではないことが分かりました。
「知能」とは、周囲の情報を元に目の前の問題を解決する能力です。それぞれの動物の生き方にあった形で情報を処理する能力なので、生態や習性が異なる動物の知能を横並びに比較するのは難しいと言えるでしょう。
人間の基準による犬や猫の知能評価
犬も猫も、その知能レベルは人間の2〜3歳児に相当すると言われています。根拠はピアジェの発達段階論です。
ピアジェは、子供の発達を0〜2歳の感覚運動期、2〜7歳の前操作期、7〜11歳の具体的操作期、11歳頃に始まる形式的操作期の4つに分類しました。
実験の結果、犬や猫は感覚運動期に相当すると結論づけられました。この段階では、同じことを繰り返す循環反応、何かに隠れて見えなくなってもまだそこにあることを理解できる対象の永続性、相手の動き等を真似する模倣行動などが見られます。
猫の知能の特徴
猫の研究はあまり進んでいない
猫は自分の判断のみで行動するため、訓練をするのが犬に比べて難しい動物です。そのため猫は実験に馴染みづらく、猫に関する研究は犬と比べてあまり行われてきませんでした。
最近は猫の研究も増えてきていますので、猫の知能について見てみましょう。
高い空間認識能力
猫は1度通った場所ならば、上の様子が見えない高い所にも安全に着地したり、最短のコースを選択したりできます。
段差や交差で複雑な迷路のような場所でも迷いません。猫はとても高い空間認識能力を備えています。
狩りにおける頭脳的な戦術
猫の狩りはとても頭脳的です。獲物をただ追いかけるだけではなく、状況に応じて待ち伏せをしたり、気付かれないようにわざと遠回りをすることもあります。
音から獲物の存在を予見する能力も高く、狩りに必要な高い知能を備えています。
高い判断力と強い警戒力
単独生活者の猫はすべての行動を自分の判断で決定するため、素早い判断力と行動力を備えています。
特に警戒心が強く、薬を飲ませるのに苦労するのはこの能力に依る部分が大きいです。
抜群の短期記憶
最近、猫の短期記憶は犬や人間よりもかなり高いことが分かりました。人の場合短期記憶の保持時間は30秒程度ですが、猫は10分以上記憶できたのです。
ただし、猫が興味を惹かれる対象の場合に限定されます。
長期記憶も「悪い」ことなら忘れない
猫は嫌な思いをしたことは死ぬまで忘れません。一度食べて具合の悪くなったものは二度と口にせず、嫌な思いをした場所には行こうとしません。
自発的な学習能力
猫は人間の行動を模倣してドアを開けられるようになったり、成功体験から飼い主さんを起こしたり効果的におやつをねだったりなど、自発的な学習能力を有しています。
因果関係はちょっと苦手
犬がクリアでき、猫はクリアできなかった実験があります。道具を使った因果関係を把握するテストで、紐の先におやつを結びつけ、引っ張るとおやつにありつけるというものです。
紐が一本の場合は理解できましたが、複雑な条件になると猫は理解できませんでした。人と一緒に道具を使って作業できる犬の方に、より適した能力だったのかもしれません。
まとめ
今日のねこちゃんより:むぎ♀ / ロシアンブルー / 3kg
あくまでも人間の基準で考えると、猫の知能は2〜3歳児のレベルに相当しますが、猫が猫らしく生きていくために必要な空間認識能力、判断力、警戒力、狩の戦術、記憶力などは、とても高いことが分かりました。
また犬と比較すると、他者からの指示に従うとか、道具による因果関係の認識は苦手であることも分かりました。
こういった猫の知能や習性を理解した上でコミュニケーションを取れば、愛猫との間により深い絆を結べることでしょう。