猫は飼い主を認識している
愛猫を病院に連れて行った時に、診察室で愛猫が自分にしっかりとしがみついてきて「頼りにされている」と実感した経験をお持ちの方も多いのではないでしょうか。
実際、受診中の猫を見て、猫は飼い主を認識していると実感している獣医師は多いようです。
こういった経験的に認められていることも踏まえつつ、動物行動学の研究でわかってきていることを紹介し、猫がどのように飼い主のことを認識しているのかについて整理します。
視覚による認識
1998年に亡くなったパウル・ライハウゼン博士は、ネコ博士として世界的に著名な研究者で、博士の行ったネコ科動物の行動分析は、現在でも色あせない内容です。
博士は「ネコが、自分がよく知っている人間をその身ぶりや声だけでなく、顔からも見分けるのはたしかである」と記していますが、最近の研究でも、猫は飼い主の声を聞くと、飼い主の顔を思い浮かべるということが明らかになりました。
猫の視力は人の近眼のようなレベルなので、詳細に把握するのは難しいでしょうが、フォルムや外見の特徴で認識していると考えられます。筆者も以前、白いマスクをしたまま帰宅したところ、愛猫からシャーッと威嚇され、すぐに「なんだ、お前か!」というように足元に近寄ってきたという経験をしました。
嗅覚による認識
猫同士がお互いを認識する大きな手段の1つが「嗅覚」です。出会った猫は、まずお互いに鼻を近づけて互いのにおいを嗅ぎ合い、徐々に体の後部へとにおいを嗅ぐ場所を移していきます。
猫が自分の縄張りを主張するために「マーキング」と言って、縄張り内の主要な場所に自分のにおいをつけて回ることは有名ですが、飼い主のにおいがする場所も猫にとって落ち着ける場所であることからも、飼い主の認識手段として嗅覚を使っていることは間違いありません。
聴覚による認識
猫が飼い主を認識するために使っている聴覚の研究はまだないようですが、飼い主が帰宅した音(マイカーのエンジン音や玄関前で鍵束を出す音、玄関に近付く足音等)を耳にして、来訪者が飼い主だと認識していることは、ほぼ周知の事実と言っても良いでしょう。
また前述の通り、猫が飼い主の声を聞き分けていることは研究で明白になりました。見知らぬ人が自分の名前を呼んだ場合と飼い主が自分の名前を呼んだ場合では、猫の反応に明らかな有意差が認められています。
猫は相手のどこを見ているのか
前述のライハウゼン博士によると、相手が生きているマウスや剥製のネコ、熊のぬいぐるみなどであっても、実際の猫と出会ったときのように自分の鼻を相手の鼻に近づけてクンクンとにおいを嗅ぎ、次第に体の後ろの方へと嗅いでいくそうです。
相手が自分からまっすぐに遠ざかると追跡し、捕獲しようとします。逃げない場合、経験のない猫は相手を同種の仲間とみなすのだそうです。
人が顔を近付けた場合も、猫は人の鼻に自分の鼻を近づけてクンクンとにおいを嗅ぎます。
博士によると、猫は2つの目に挟まれた突出物を目印にしているそうです。確かに、猫にゆっくりと顔を近づけながら自分の顔の前に指を1本突き出すと、猫は鼻ではなく指先の匂いを嗅ぎますので試してみてください。
まとめ
今日のねこちゃんより:ここちゃん♀ / 3歳 / 雑種(ミックス) / 3.4kg
犬とは異なり、猫はあまり人と絆を結ぶ動物ではないと思われている方が多いかもしれません。しかし最近の研究では、猫も犬に負けないくらい人と絆を結ぶ動物だということが分かってきています。
愛猫は飼い主のことを「におい・声や普段の行動が発する音・外見」で認識しています。もしかすると、無意識のうちにやっている癖やルーティーンが、愛猫にとっては大切な要素になっているかもしれません。