江戸時代の猫食器『アワビの殻の猫用皿』で、いつものごはんも風情満点?

江戸時代の猫食器『アワビの殻の猫用皿』で、いつものごはんも風情満点?

江戸時代の猫はアワビの殻をお皿にしてごはんを食べていたようです。アワビの殻で、ごはんを食べる愛猫を想像すると、気分はお江戸日本橋。ぜひ試してみたくなりましたが、食器にするにはギザギザのヘリや、底の穴が気になるところ。そこで、少し手を加えて、現代風の猫用皿に仕立ててみました。

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江戸時代、アワビの殻は猫の皿だったと知って思い立ったアイテム

アワビ、おいしいですよね。コリコリとした食感と芳醇な旨味、肝醤油を作って生で食べるのも良し、蒸しても焼いてもご飯に炊きこんでも美味しいという、海の味覚の王様クラス。

アワビ

身を外した後の貝殻内側、真珠層の美しさも魅力のひとつです。かの食の偉人、北大路魯山人も「貝そのものを鉢代わりに使って食する風情は老いも若きも楽しめる」と推奨するほど。そんなアワビの貝殻は江戸時代、スタンダードな猫用のお皿として使用されていました。

アワビにカリカリ

ためしに盛りつけてみたところ、なんということでしょう、いつものカリカリがワンランク上の風格を放つではありませんか。

この感動をそのままに愛猫へお届けしたいところですが、いつも食べ終わった皿を転がす勢いで執拗に嘗め回す我が家の猫のこと。ギザギザのヘリで舌を傷つけてしまったらどうしよう、と不安が頭をよぎります。そこで、安全に楽しめて、汁気のあるものも入れられるように、カスタマイズしてみようと思い立ちました。

目指すのは、アワビの貝殻を使った、日本古来のトラディショナルな猫用食器です。

『アワビの殻の猫用皿』の材料とご予算

材料一覧

材料

  • アワビの殻
  • オーブン粘土

あると便利な道具

  • ねんどべら
  • 紙やすり
  • のし棒
  • ビニール袋とゴムハンマー(粘土が硬かった場合に使用)
  • アルミホイル(焼成時の真珠層保護用)

必須アイテム

  • オーブン

※トースターでも試してみましたが、粘土が燃えてしまいました。危険なので、必ず温度調節のできるオーブンをお使いください。

今回のご予算目安

  • アワビ…時価/500~1000円
  • オーブン粘土…500円

今回、使用したオーブン粘土は、耐水性もあり、食器も作れることから樹脂系の「FIMO」(フィモソフト)を選びました。使用量はアワビの大きさや作りたいデザインにもよりますが、長辺の直径が10cmほどのアワビを包むにあたり、ちょうど「FIMO」1パッケージ(57g)全量を使用しました。

『アワビの殻の猫用皿』の作り方

1. アワビの殻のヘリをざっくりとやすりがけします。このあと粘土で包みやすいよう、大きな凹凸を無くす程度のイメージでOKです。

アワビの殻やすりがけ

2. 粘土をよくこねて柔らかくします。オーブン粘土は、保管状況によっては粘土とは思えないほどに硬くなってしまう時があります。そんな時は、ビニール袋に入れ、ゴムハンマーで根気よく叩いていくと粘りが出てきます。

のばした粘土

ある程度、まとまりが出てきたら、手を使ってひも練りを繰り返して下さい。いつかは必ず柔らかくなるので、諦めずに頑張りましょう。(別売りの軟化剤「ミックスクイック」を使うのも一つの方法です)

3. 柔らかくなった粘土を、のし棒で3~5mm程度の厚みに広げ、アワビの殻を包みます。ヘリの方はハサミを使って切り落とすと均一な幅が取りやすいです。

粘土をハサミで切る

貝殻のギザギザのヘリと水管孔をカバーできていれば、あとはお好みで造形して下さい。

4. 真珠層を下側にして、120℃に予熱したオーブンで30分程度焼きます。取り出して、表面を爪で弾いてみた時に「カチカチ」とした感触がなければ、10分ぐらいずつ様子を見ながら追加で焼きます。

オーブンの中の様子

今回は、裏面を40分焼いた後、表にして真珠層にアルミホイルをかけ、更に15分焼きました。大変熱くなるため、やけどにはくれぐれもご注意下さいね。

5. 焼成後、オーブンから取り出し、冷めたら完成です。念のため、猫に使用する前には、よく洗ってください。

完成したところ

猫が舐めそうにない部分にワンポイントを入れるのも可愛いですね。今回は、金継に使うウルシで肉球を描いてみました。

実際に愛猫に使ってみました!

猫も一緒にアワビを楽しめれば良いのですが、「猫にアワビを与えると耳が落ちる」というのは、それこそ、江戸時代から猫の飼育書に書かれているほど、よく知られたタブーです。アワビの餌に含まれる葉緑素を分解してできる酵素が日光と反応して、皮膚の薄い猫の耳の部分で炎症を起こしてしまいます。

専用フードなど無く、人間も魚類以外の動物性たんぱくに馴染みのなかった時代、飼い猫は、どんなごはんを貰っていたのでしょうか。浮世絵などを見回してみても、猫のごはん皿には、炊いたご飯のようなものしか見受けられません。動物性たんぱく質は自力で狩りをして補っていたのでしょうか。

アワビ皿に豆腐あんかけ

江戸の猫に思いを馳せつつ、当時も一般流通していたと思われる「豆腐・カツオ・葛」で猫用あんかけ豆腐を作りました。

猫が食べている様子

大変よく食べています。猫の視界には、おそらく、あんかけ豆腐しか映っていません。お皿は完全にアウトオブ眼中。しかし、「アワビの猫用皿でごはんを食べてもらう」という飼い主の当初の目的は達成されたので、別にいいのです。

ちなみにその後、実験的にいつものドライフードを5粒ずつ、①いつものお皿 ②アワビの猫用皿 に入れ、同時に並べて出してみましたが、いつものお皿が先に選ばれました。ちょっぴり悔しいので、アワビ皿は今後、スペシャルおやつ専用にします。

アワビの殻の猫用皿にまつわるエピソード

底も深く、安定感のあるアワビの殻は、古くは縄文時代から人間用の食器として使われてきました。江戸時代に入ると、庶民にも広く陶製の食器が使われるようになりましたが、それでも気軽に買い換えはできない貴重品。そのため、猫の食器には引き続き、アワビの殻が重宝されました。

安政6年に描かれた月岡芳年の「猫鼠合戦」図の中には、猫が居眠りした隙に、猫の食べ物を盗む鼠たちの様子が描かれていますが、この時のお皿もアワビの殻。

天保から嘉永にかけて書かれた猫の擬人化小説「朧月猫の草子」では、挿絵を担当した歌川国芳によって、着物を着て人間のようにふるまう猫たちの姿が描かれていますが、食器だけはアワビの殻を踏襲して、しっかり猫風に演出されています。

“アワビと猫”のモチーフは、他にも根付など身近なアイテムで散見され、江戸の人々になじみの深いものでした。有名なところでは、夏目漱石の名作「吾輩は猫である」にも、“吾輩”がアワビの殻からご飯を食べる描写があり、アワビの殻は、明治期に入っても根強く、マストな猫の皿だったことがうかがえます。

まとめ

今回は樹脂系のオーブン粘土を使いましたが、オーブン陶土で、もっと和風に寄せてみるのも似合いそうですね。他にも、アワビの殻の表をツヤツヤに磨く「アワビ磨き」なる手法もあるそうで、天然そのままの殻を磨いてお皿に仕立てるのも素敵かもしれません。

貝の身のおいしさだけではなく、殻も丸ごと楽しめるアワビ。今度アワビが食卓に登場した時は、愛猫と江戸時代に思いを馳せて、ちょっとクラフトしてみませんか。

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