猫の能力
一般的に、猫の知能は人の2〜3歳児程度だと言われています。3歳児だと、まだ保護者の世話がなければ生きていけませんが、意外と理解度の深さに驚くことも増えてくる時期ではないでしょうか。
これから猫と一緒に暮らそうと考えている方には、猫がどういう動物でどの程度の認知能力を持っているのかを知った上で、猫にも人にも快適な共同生活を過ごしていただきたいと思います。
そのためには、最新の研究によって解明されてきている情報も知っておくことが大切です。そこで今回は、今までの研究で分かってきている猫の「認知能力」を紹介します。
1.学習能力
猫は「これをすると良いことがある」という経験を繰り返すことで、自分から積極的にそれをするようになり、「これをすると嫌なことがある」という経験を繰り返すことで、積極的にそれをしないようになります。
猫のしつけも、この能力を応用して行うのが一般的です。
2.対象の永続性
「対象の永続性」という言葉をご存知でしょうか。今まで見えていた物が見えない状態になっても、その物自体はそこにあり続けると認識できる能力のことです。
人の場合は2歳頃までの間に段階的に発達し、目の前にその物が見えなくても頭の中で追跡できるようになります。
たとえば、捕まえようとしていたネズミが穴に逃げ込んだ場合、対象の永続性がなければそのネズミを捕まえることはできません。
猫にとっても重要な能力のように思えますが、猫には「対象の永続性」という認知能力があるのでしょうか。
実験の結果は、「猫にも対象の永続性が認められる」というものでした。人に対する実験と同じ方式のテストでは、猫の対象の永続性は初期段階でした。
しかし、狩りのシーンに似た状況での実験では、対象物が隠れる様子を見ていなくても、対象物を見つけ出すことができたのです。
離れた場所のネズミに猫がそっと近寄っていく途中、一瞬藪などで視界が遮られ、その瞬間にネズミが近くの物陰に隠れても、藪を通り過ぎた猫は先程ネズミがいた場所の近くの物陰に隠れているネズミを見つけることができるのです。
3.社会的認知能力
猫の祖先のリビアヤマネコは、単独で生活する動物でした。そのため、イエネコも社会的認知能力に関してはあまり高くないと考えられていました。しかし最近の研究で、かなり高いことが分かってきました。
「特定の人に愛着を持つ」「知っている人と知らない人を区別する」「飼い主の声を聞くと飼い主の顔を思い浮かべる」「人が見ているか否かで行動が変わる」「目の前に訳の分からない物があると飼い主の顔を見て表情を窺う」「指差しだけで餌の場所を探し出せる」「人の言葉を識別・理解できる」等は、犬と猫に共通した社会的認知能力です。
ただし「犬は餌が取れなくて困ると人に目線で助けを求めるが、猫は自力で解決しようとする」「犬は教えるという行動をしないが猫は子猫に狩りの仕方を教える」といったようなことも分かってきています。
なお教えるという行動が観察されている動物は、人以外ではミーアキャットと猫だけです。
このように、猫は人と共存する中で徐々に集団生活ができるようになり、劣位の猫が優位の猫に挨拶をするというようなコミュニケーションが生まれ、母猫とその娘はグループを作って共同保育を行います。猫の社会性は、約1万年という人との歴史の中でかなり進化してきているようです。
まとめ
今日のねこちゃんより:ここちゃん♀ / 3歳 / 雑種(ミックス) / 3.4kg
最近は猫の去勢・避妊と室内飼いが一般的になり、繁殖も徐々に人為淘汰されるようになってきたため、今後も猫の行動や能力はさらに社会性に関して進化が進み、犬のようになっていくと予想する声も聞かれます。猫の分離不安症も、以前では考えられなかった現象です。
猫好きとしては、犬は犬、猫は猫のままでいて欲しいと願ってしまいます。ともあれ、猫のウェルフェアを考える上でも、猫の行動特性や認知能力に関する研究がさらに進むことを期待したいと思います。