猫の行動は感情や思考から理解できる
脳画像化といった技術による研究の結果、猫にも人と同じような感情を生み出すための精神的機構の存在が解明されています。そして、猫は決定を下すことのできる意識を持っていることも分かっています。
つまり、猫は自分が受け取った情報や記憶と、その情報に対する自分の感情に基づいて決定を下し、行動するのです。これは、猫の思考プロセスや感情が人と異なっていることをきちんと認識しておけば、猫の行動についてある程度理解できるということです。
犬と猫の違い
猫の飼い主で「私は猫の執事なので」と言う方が少なくありません。しかし、犬の飼い主からは、あまり聞かれない言葉です。
よくなれた犬は常に飼い主とアイコンタクトをとり、飼い主の指示によく従います。しかし、猫に「待て」などを教え込むのはハードルが高く、猫に言うことを聞かせるのは難しいです。
この違いは、犬は集団生活をし猫は単独生活をするという習性の違いから生まれたものです。犬は人と協力して仕事をしたり、人から褒められたりすることに喜びを感じますが、単独生活をする猫にとって、大切なのは「協力」ではなく「競争」だからです。
ほぼすべての行動は学習の賜
猫の学習法
猫の行動、つまり猫と人との関係は、主に二つの学習によって構築されます。古典的条件付けと、オペラント条件付けです。この二つの学習法は、犬や猫のしつけに多く応用されています。
古典的条件付けとは、非常に短い時間間隔で続けて起きる二つの出来事を結びつけて覚えるというものです。オペラント条件付けとは、ある行動が引き起こす結果が良いことをもたらすか悪いことをもたらすかによりその行動が正または負に強化されるという学習法です。
たとえば、毎回食事に缶詰のフードが出される猫は、缶が開く音を聞くと食事だということを理解し、飼い主さんの足元まで飛んでくるでしょう。これは、古典的条件付けにより学習した行動です。
また、ドアの前に座り飼い主の方に顔を向けながらニャーニャー鳴いたら飼い主さんがドアを開けてくれたということを数回経験すると、猫はドアを開けて欲しい時にその行動を取るようになります。これが、オペラント条件付けにより学習した行動です。
前述の、猫が飼い主を自分の執事のようにするのは、そのほとんどがこのオペラント条件付けによる成果だと言われています。猫は飼い主の注意を引くためにニャーと鳴きます。そして次に何をすれば自分の思い通りになるのかを猫は知っているのです。
猫を叱るときの注意
猫に「やってはいけない」ことを教える場合には、オペラント条件付けにより負の強化を行います。ただし、猫がいけないことをしたと同時に、または最低でも1〜2秒以内に叱るなどの嫌なことを経験させなければ、猫はこの二つを関連付けることができません。気をつけないと、しつけているつもりがただいじめているだけになってしまいますので、注意しましょう。
まとめ
今日のねこちゃんより:味噌汁♂ / ノルウェージャンフォレストキャット
犬には、お座り、伏せなど、ある程度共通の命令を覚えさせることができますが、猫には難しいです。それは、猫の知能の問題ではなく、思考プロセスや感情が犬や人とは異なるからです。
その代わり、猫と飼い主さんの間には、その関係性の中だけで育まれたオリジナルな行動が生まれます。猫の行動は飼い主さんにしか理解できません。すべての猫とその飼い主さんが、お互いを理解しあってストレスのない幸せな暮らしを送れることを願っています。